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蹴球の皇帝  作者: 86
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第1話 東雲龍也

 久々に2年前の夢を見たな。


 俺は目を擦りながら気持ちのいい朝を迎える。


 今日は高校の入学式だ。


 14歳までサッカーしかして来なかった俺はまともな勉強知識があるはずもなく、中学3年で猛勉強をしてなんとか受験で合格する事ができた。


 俺はあくびをしながら階段を降りてリビングに顔を出す。


 するとそこには妹と弟の寛いでいる姿があった。


「おはよう、龍にぃ」


 弟の瑠衣(るい)がこちらをチラッとだけ見てすぐにスマホの画面に目を落とす。


 なんて言うか瑠衣はあまり他人に興味がないようでまともに人と関わろうとしない。


 今年から中学2年生になるのだが、去年は友達と遊ぶ約束をしているところを見かけなかった。


 そんな瑠衣と比較して妹の天音(あまね)は活発的で中学でも一軍に所属しているらしい。


 それを表すかのように俺が降りた事に気づいた瞬間天音は近づいてきて思いっきり抱きついてくる。


「おはよ!お兄ちゃん!」


 抱きついてくるのはいいが、誰にでもやってないか兄としては心配になってくる。


 流石に俺が動きづらそうにしているのに気づいたのか正面からのハグをやめて俺の腕に自分の腕を絡ませてきて、テーブルへ座る事を促される。


 俺はそんな妹の様子に苦笑をしていると、台所から母が姿を現し、テーブルに朝食を4人分運んでくる。


「おはよう、龍也。今日は入学式ね。高校は頑張るのよ。それにごめんね、行けなくて」


 母は少し申し訳なさそうな顔で俺に謝罪してくる。


 それに対して俺は首を振りながら母と向き合う。


「気にする必要ないよ。店の方が大事だしな」


 そう、実はウチの母は店を経営しているのだ。


 と言うのもこの家の隣にあるお洒落なカフェがそうだ。


 元は父と母の2人で経営していたのだが、父が事故で亡くなってからは母が1人で営んでいる。


 バイトの子を数人雇ってはいるが、母の大変さは測り知れない。


 俺は素早く朝食を食べ終わると、別室にある父の仏壇に向かって手を合わせる。


「行ってきます、父さん」


 俺はそう言葉を吐き出してから新たな高校生活に胸を躍らせながら玄関の扉を開けたのだった。


⭐︎⭐︎⭐︎


 俺がこれから通う高校の名前は白麗(びゃくれい)高等学校。全校生徒約800人くらいの学校である。


 白麗高校は野球の名門校であり、毎年のように全国へと駒を進めているようだ。


 俺は校門から入り、新入生の受付口で自分の名前を告げる。すると、学生証と共に「1年3組です。あちらの下駄箱から案内に従って教室に向かってください」とだけ言われて手で向かう方を示される。


 俺はそれに従い、下駄箱から自分のクラスの自分の名前を探しそこに革靴を入れると、学校指定の手提げの鞄から上履きを取り出して履き替える。


 それから俺は校内に貼ってある張り紙の案内に従い1年3組の教室へと向かう。


 教室に足を踏み入れると、自分の名前が書かれた机を探し出し鞄を床に置いてから腰を下ろす。


 そして周りを見渡すが、おおよそ2種類の人間が存在する事が分かる。


 まず1つが俺みたいな周りを見渡したり、1人で静かにスマホ触ったり寝てたりする人間、そしてもう1つはコミュニケーションが高い人間で入学式前だというのに前後の人間と話してたりする人間の2種類である。


 俺にはそれほどのコミュニケーション能力はないので、前後の人間に話しかけるのは諦め、寝るフリをする事に決めた。


 それから数分が経過しこのクラスの担任と思わしき人間が入ってきた。


「はいはい、みんなこっちにちゅうもーく!」


 そう声を上げたのは比較的若そうな女教師であった。見た目は美人であり、いかにも男子人気が高くなりそうな教師だ。


 俺は顔を上げてその教師の方に注目する。


「えっと、私は今年1年3組の担任になりました、水樹乃愛(みずきのあ)です。まだまだ大学卒業してから2年しか経ってない若輩者ですが、どうかよろしくお願いします!ちなみに自分のクラス持つ事は初めてだからみんな優しくしてね!」


 その瞬間クラスからどっと笑い声が上がる。


 まぁ接しやすそうな先生ではあるし、学校でも人気が高いんだろう事は分かる。


「まだ入学式までは時間あるし、軽く学校説明でもするね」


 そう言って水樹先生はこの学校のおおよその仕組みを話し始めた。


 というのも簡単なもので、全員必ず部活動に入らなければならない事、赤点取った人間は長期休みで補修に参加しなければならない事など比較的どの学校でもありそうなものだった。


 俺は先生に配られた部活動が書いてある薄めの冊子を開きながら考える。


 最初のページには見開きで野球部の説明が書かれている。


 やはり野球の強豪校なだけあってこの学校のアピールポイントなのだろう。


 俺はそれからペラペラとページを捲ってみるが、テニス部や水泳部、吹奏楽部、漫画研究部、美術部などあまり興味が惹かれる部活動はなかった。


 そして最後のページにサッカー部と書かれてあるページを見つけたが、俺はすぐさま冊子を閉じて窓の外に目をやる。


 何分ボーッとしてたかは分からないが、いつの間にか先生の話が終わって入学式の時間がやってきたようだ。


「それじゃあもうそろそろ入学式の時間だから後ろに出席番号順に並んでね〜」


 その言葉を聞き俺は立ち上がると出席番号順で並ぶ事にした。

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