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2話 放置プレイ

「無理無理無理!絶対に無理!!」


「そうか……困ったなぁ」


「無理ですって俺には! 他をあたっーーーー」


「おっ、そろそろか」


 遠くの方で無数の足音が聴こえてきた。 時折混じる『カチャカチャ』という金属同士が軽くぶつかり合う音からしてどうも鎧を纏った集団がこちらに向かって来ていると予想した。


 というかこんな町外れの路地裏にこの人数……聴こえてくる感じでも2〜3人程度じゃ済まないどころか1ダース分の足音がこちらに迫って来てるはどういうわけだ、と魔王を見ればイタズラが成功したガキみたいな良い笑顔を浮かべていた。


「何しやがってくれたのお前!?」


「あっ気付いた?さっき私が変身するときに固有の魔力を出した。そうするとソレを察知した聖十字教の兵隊がわんさかやって来る」


「ば、馬鹿野郎!!」


「アッハッハッハッ」


(この馬鹿たぶんわざとやっている。何のつもりかサッパリわからないけど俺にとっては好都合、教団にはこのまま保護して貰えば万事解決に……)


「ああ、ちなみに少年。 騙されたと思ってちょっと下腹部見てみるといい、これも大事なことだ」


「はっ? またなんかやられてんの俺!!?」


 急ぎシャツを捲り上げてみてみると、いつのまにか下腹部辺りにハート型の刺青がボンヤリと光を発しながら浮かび上がっていた。


「淫紋だこれ!!」


「残念ながらちょっと違う。 それは私こと色欲の魔王の眷属に贈られる紋章でな、私の魔力と同じ波形を常時発しているんだ」


「……………え?」


「ちなみに教団は私な魔力を正確に検知できる道具を持っていてなぁ」




『おい、水晶に二つの反応が出たぞ!!』


『馬鹿なっ、ヤツは今まで一人の眷属も作っていなかったはずだぞ!!』


『チィ、魔王だけでも厄介だというのに……全員気を引き締めて行くぞ!!』


『『『オォォォォォォォォッ!!!!』』』




「と言った感じだ」


「何てことしやがるんだクソやろぉぉぉ!!?」


「さぁてどうする?」


(なんて嫌な奴だコイツ!!)


 コレがことの顛末、そして冒頭へと繋がる。



⚪︎ ● ⚪︎



「厨二病かてめー」


「落ち着いたようで何よりだが言葉は選べよ」


「いや、だだべべバババァがダァ!?」


 突然腹部に強烈な痛みを感じだだだだだだ!? なんかすっげぇビリビリするぅ!? ナニコレ電気? 淫紋から電気出てる!? エロゲじゃねぇんだぞ!!!


「あば、ばばば………」


「ぬ、ちょっとやり過ぎたかな? おーい、生きてるかー?」


「こ、ころ……す」


「おーおーさらに遠慮がなくなってきたなぁ。やはり勇者の器だったか」


(ま、マジで何を言ってるんだコイツは!?)


 正直もコイツが本物だろうが自称だろうがヤバい人なのだけが判明してる。 そんでなんでか俺がロックオン食らってるわけだけど……いや、なんでそうなる!?


 行いか? 日頃の行いが悪いからこうなったのか? あぁ……ドナドナされるって決まったからヤケになってニーナ()のスープから肉奪ったのがいけなかったのかなぁ。


 いやでもアイツ、通達のことみんなに伝えた時、あの妹『よっしゃ、コレでアタシの天下だ!!』とかほざいてたから自業自と……ん?


「えーと、ここら辺か? あ、いや心臓のちょい上辺りに……お!いけそういけそう」


 何か自称魔王が俺の身体をまさぐってる。何だその電池穴探してるみたいな手つきは?くそぅ、デカめの声で詰問したいのに声が出ねぇ。最後の力振り絞って出したのしっぱいだーーーーー


「あ、入った」


「あっァァァァァァァァァァァァアーーーーーーーーーーー!!!!!!」


 突然胸に鋭い痛みを感じた。 恐る恐る見てみると胸に指が刺さってる。 え、マジ?


「ギャァァァァァァ北斗神拳!?」


「安心しろまだ死んでない」


 魔王はそう言いながら、その太い人差し指を付け根まで俺の胸に押し込んだ。 あまりにも殺意が高い光景に失神しかけたが、ふと不思議なことに気付いた。


 血が出ていないのだ。


 指はしっかりとこの薄っ平いい胸板を貫通しているのに、粗末なシャツには朱が滲んでいないし、あの独特な鉄錆臭さも香ってこない。 ていうか刺さってる部分から何か光が漏れてるような……。


「もしかしなくても何か埋め込んでたりします?」


「おう、これから痛くなるから頑張れよ」


「いやもう十分痛いん………だわばっ!?!!」


破裂


『心臓が手榴弾みたいに弾けて内臓を掻き回している』


 そんな錯覚すら感じるような激しい痛みが身体中を駆け巡って何も言えなくなった。喉は過呼吸で笛ラムネみたいな音を立てるばかりで息を吸えないし、眼球は涙のせいでぼやけているせいで溺れているみたいだ。


 何より最悪なのは痛みが全然消えないことだ。


 いや、それどころかより一層増していくのは何だ? 内臓全部がマグマにでも変わったみたいに、緩慢に、それでいて着実に痛覚が生み出す錯覚の焦げ跡を広げて行く。


(あれ?)


 そう言えばあの野郎、何か埋め込んだとか言ってたような……


「っ!? ーーーーーっーぁーーーーー!!」


 突然、身体の中の感覚が変わった。 痛みとはまた別の激しい『痒み』。 それは次第に大きくなり、体内で何かの『形』を持ち脈動を始めた。


(ああ、クソッタレ!!)


 吐き気がするような恐怖の中、怒りのあまり自称魔王睨みつけようと首を巡らせたのに、諸悪の根源はいつの間にか姿を消していた。


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