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7 魔王様、仕事が滞っています

 魔王の朝は早い。


 家臣が起こしに来たら、眠気眼をこすりながら着替えを済ます。

 簡単な朝食をとったら、さっそく執務に取り掛かる。


 仕事は主に内政のチェック。


 この国には三権分立の政治体制をとっており、議会があり、裁判所もある。

 行政は魔王の選定した家臣たちが執り行っているが、適度に入れ替えている。


 議員は普通選挙で選出される。

 大臣たちも、民衆が選んだ議員の中から選出している。


 ……が。


 最終的な決定権は全て魔王にある。

 独裁国家であることに変わりはない。


 しかしながら、魔王の支持率は高い。

 民衆は彼を敬愛し、不満を漏らす人は少ない。

 言論の自由が保障されているので、非難する声も少なからずある。

 だが、民衆はそう言った声には逆に反発し、魔王を擁護するのである。


 それほどまでに彼の政治手腕は卓越していた。


 魔王は税金のほとんどをインフラ整備につぎ込み、各地に病院と学校を設立。

 貴族制を完全に廃止して中央集権を進め、地方を管理する自治体には専門の教育を施した部下たちを派遣。

 子育て、医療、福祉などのサービスも拡充。

 労働基準も厳格に定め、税金も金利もきちんと管理。


 文句のつけようがないその手腕に、家臣たちも民衆も、魔王を原理主義的に信奉している。


 邪神が遣わした救世主。

 そんな風に言われているくらいだ。


 ちなみに、魔王は交代制だが、彼は8期連続で魔王を務めている。

 4年ごとに交代なので、30年以上トップに君臨し続けている計算だ。


 その間、何人もの勇者と戦って来た。


 人間たちは特別な力を持った少年を勇者として祭り上げ、魔王と戦わせるために送り出す。

 ノコノコとやって来る連中の相手をするのも魔王の務めなのである。




「なぁ……何してんだよ?」


 ルークは入れて来たお茶を、魔王の前に置く。

 彼はいつも通りミニスカートのメイド服に着替えていた。


 プレジデントデスクには大量の書類。

 その一枚、一枚を綿密にチェックしていく。


「記入された項目に誤りがないか精査しているのだ。

 少しでも記入漏れがあったりすると、後で面倒なことになる」

「ここに運ばれてくる前に、お前の部下が何度もチェックしてるだろ。

 んなことして何になるって言うんだよ?」

「部下たちのしたことを無条件で信じることはできん。

 必ず自分の目で確かめなければならんのだ」

「はぁ……お前も大変だな」


 ルークはやれやれと肩をすくめると、執務室に置かれたソファの上に腰かける。


 次に何か申し付けられるまでずっとそこで待機。

 と言っても、お茶くみくらいしか用事は思い浮かばないのだが。


「なぁ……手伝おうか?」

「不要だ。自分でやらねば気が済まん」

「でもよぉ……退屈で……」


 ルークはイライラした様子で貧乏ゆすりする。

 股を大きく開いていた。


「はしたないぞ、股を閉じろ」

「くそっ……こんな格好させるからだろ!

 ズボンをはかせてくれよ!」

「それはいかん」


 魔王はきっぱりと断る。

 彼にズボンをはかせるなんてとんでもない!



「うぜぇ……お前、本当にうぜぇ……」

「今更、気づいたか?

 仕事の邪魔になるから何処かへ行ってろ。

 鬱陶しい」

「っ‼ 分かったよ! クソが!」


 ルークは怒って部屋から出て行ってしまった。


 彼は呪いの文様のせいで、魔王の傍から離れられない。

 好き勝手移動できる範囲は、せいぜい魔王城の中くらい。

 外へ出る時は魔王が付き添う必要がある。


 城内であれば一人で自由に歩かせても問題ないので、放っておくことにした。


 ただ……あの部屋に入られたらまずい。

 まぁ、大丈夫だろう。


 魔王は思い浮かんだ不安を打ち消して、仕事の続きに取り掛かった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 優秀な魔王! あの部屋……気になります。
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