6 魔王様、夜のお供を致します
ついにこの時が来てしまった。
きっとルークは震えているだろう。
寝巻に着替えた魔王は、彼が来るのを待った。
別にえっちぃ恰好をしているわけではない。
普通のパジャマを着ている。
綿百パーセントのやつ。
真っ白なシーツが敷かれたダブルベッドの上で、胡坐をかいて彼が来るのを待つ。
「……入るぞ」
ルークが寝室に入って来た。
彼もパジャマを着ている。
ただし……色は薄いピンク色。
半袖半ズボン。
白い生足がとてもきれい。
「ふむ……なかなか似合っているな」
「ちっ……うるせえよ」
「それより、処理は済ませてきたのか?」
「っ……!」
魔王の言葉にルークは顔を赤らめる。
恥辱にまみれたその表情は興をそそった。
「しっ……したよ。言われたとおりに」
「処理の後、ウォッシュレットでキレイにしたか?」
「ちゃんと風呂に入ったよ!
全身……言われたとおりに……キレイにした。
あそこも……あっちも」
「……うむ。ではこちらへ」
魔王は手招きしてルークを傍へ呼ぶ。
彼はベッドの端にちょこんと腰かけた。
緊張しているのか、それとも怖いのか、足が内向きになっていた。
まるで女の子みたいじゃないか。
二人の間には微妙に間が開いている。
魔王は横にずれて彼の隣に移動した。
「ほっ……本当にするのか?」
「ああ、無論だ」
「なぁ……また今度に」
「ダメだ、今日する」
そう言って魔王はルークの肩を抱く。
手を置いた瞬間、彼の身体がびくっと反応する。
手のひらをそっと身体に添わせると、ルークは俯いたまま顔を赤らめた。
耳まで赤く染まる勢いだ。
「いっ……痛いのは嫌だ……」
「今まで何度も痛い思いをしてきただろう。
今更、これくらいなんだというのだ」
「今までのは……ちがっ……」
「何がどう違うのだ?
痛みの種類が違うと?」
「うんまぁ……そうか……あっ」
魔王はルークをベッドに押し倒した。
「やっ……やだぁ……」
まるで子供のように嫌がるルーク。
瞳一杯に涙を浮かべている。
歴戦の勇者も形無しだな。
「落ち着け、まだ始めない」
「……え?」
「まずは口づけからだ」
ルークの顎に手を添え、上向かせる。
いよいよこれまでかと悟ったのか、彼はゆっくりと目を閉じた。
たまっていた涙がこぼれる。
……ちゅ。
魔王は彼にキスをした。
額に少し押し付ける感じで。
「……え?」
「安心しろ、無理やりにはしない」
「そっ……そうなのか?」
「少し話をしよう。
ベッドの上で横になってな」
魔王はルークにベッドの真ん中に行かせ、隣にドカッと身体を横たえる。
彼の身体は小さい。
魔王が抱きしめると、ぎゅっと拳を握りしめて身体を丸める。
緊張しているのが手に取るように分かる。
「暖かいな……」
「うっ……あっ……」
「余を受け入れるのは嫌か?」
「え? あっ……嫌って言うか……怖い」
「……そうか」
魔王は彼の頭を優しく撫でる。
「いい子だ……」
「…………」
次第に緊張が解け、身体のこわばりがほぐれて行く。
リラックスしたのか、ルークは両手の拳を開いていた。
「ここまで、よくたどり着けたな。
まだ幼いのに勇者としての役割を背負わされ、
さぞ辛い思いをしただろう」
「うっ……ぐす」
涙ぐむルーク。
そんな彼の背中を優しくさする。
「もう、何も怖くない。
余が貴様を守ってやる。
戦う必要などないのだ」
「うぐぅ……ううっ……」
魔王に抱かれながら、胸に顔を埋めて泣きじゃくるルーク。
彼にはもう勇者としての闘争心は残されていない。
すっかりただの少年に戻ってしまった。
しばらくルークをあやしていると、彼は寝息を立ててぐっすりと夢の中へ。
そんな彼の寝顔を眺めていると、なんとも満足した気分になる。
「はぁ……今日は無理のようだな。
大人しく寝るとしよう」
魔王は部屋の明かりを消して就寝することにした。