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心の声が聞こえる俺は隣から聞こえる好きに困っている  作者: ときたま@黒聖女様


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初デート? ②

 ショッピングモール内にある映画館に着くまで俺と伊波さんは結局、大して会話をすることが出来なかった。

 お互い、返事がああとかうんで済むようなことばかりを交わしていた気がする。伊波さんの心音がうるさくてあまり記憶にない。本当だ。緊張しまくって覚えていない訳ではない。


 映画館に到着し、どちらからというのはなく自然と手を離した。


「今日はどんな映画を見るの?」


 一応、知っているとはいえ間をもたせるために問いかけてみる。券売機までの待機列が長いから話題を考えるのにもいっぱいいっぱいだ。


「えっとね……恋愛映画の予定なんだけど大丈夫? 男の子って恋愛映画に興味ない?」

「ううん、そんなことないよ」


 本音はあまり興味がない。というよりは、映画館で映画を見る、ということに興味がないのだ。

 理由は……もう、お分かりいただけるだろう。ネタバレを四方八方から聞かされるからである。


 キャラの結末、物語がどうなるか。

 楽しみにしている要素が全て事前に知っているほどつまらないものはないだろう。今は券売機で買えるからいいけど、昔は販売員さんにすぐにネタバレを言われた。


 おまけに人の多さである。密集の中で大勢の人が映画の放映中、色々なことを考えている。映画とは別のこと、先の展開を予想すること。それが、一斉に届くのだ。うるさいったらありゃしない。


 だから、映画はどんなに公開中に見たくてもテレビ放送を待つかレンタル開始を待つことにしたのだ。それでも、ネタバレはされるが結末まで見る楽しみが少しは残るからな。


 伊波さんと他愛ない話をしながら待っていると意外とスムーズに進み、俺達の順番となった。


「伊波さんって映画館よく来るの?」

「どうして?」

「手付き慣れてるなって」

「うん、実はひと――ま、ママとね!」

「ふーん」


 ――危ない危ない。一人で映画館に来てることをばらしそうになっちゃったよ。鈴木くん以外に友達がいないことを知られてるとはいえ、何だか恥ずかしいもんね。


 別に、一人映画くらい普通だろうに。むしろ、一人の方が集中出来るからいいと思うんだけどな。


「あ、鈴木くんはいいよ」

「え、でも……」


 ポケットから財布を取り出すと首を横に振られる。


「今日は私がお礼したくて誘ったし……出させて?」


 その目から絶対に譲りそうのない強い決意らしきものを感じ取り、後ろに人が控えていることもあり素直に甘えることにした。


「じゃあ、お願い」

「うん」


 二人分のチケットを無事購入し終え、近場の休憩所まで移動してから入場時間を確認するとまだもう少し余裕がある。


 そうだ。ポップコーンとかジュースを買えばチケットのお礼になるじゃないか!


 そう思い立ち、もう一度冷静になる。


 まあ、待て。そうやって、良かれと思った行動が失敗に繋がるかもしれないとよく分かっているだろ。だから、確認するんだ。特に映画は自らのスタイルがあるだろうから。


「伊波さんって映画はどう見るタイプ?」


 何か食べながらとか何か飲みながらとか、と説明を加えると伊波さんは少し考えるようにしてから、


「私は集中して見たいから何もいらないかな」


 あ、あぶねぇ……伊波さんの場合、優しいから気を遣って迷惑だとかは思わないだろうけど。折角の映画だし気分よく見てもらった方がいいはずだから先走らなくて本当に良かった。


「あ、鈴木くんは遠慮なんかしなくていいからね。私、集中出来るから隣で音が出ていても気にならないから」

「ううん、俺も集中して見たい派だから」

「そっか~」


 ――小さなことでも鈴木くんとお揃いってだけで嬉しいな。それに、今日の鈴木くんは特にカッコよく見えるっていうか……館内が薄暗いからかな。


 伊波さんの目にどう俺が写っているのかは分からない。ただ、悪く思われていないのなら嬉しい。さっきのナンパ輩には釣り合ってない、なんて思われたから客観的に見たらそうなんだろうけど。


 それでも、伊波さんが悪い気してないのなら良い。まあ、もう少しファッションについてはこれから知ろうとは思うけど。何を着ればいいのか分からないから取り敢えず父さんの置いていった服を引っ張り出して着てきただけだし。


「鈴木くんは座らないの?」

「えっ、いや~……」


 今、伊波さんの隣に座ったら肩が密着しそうで何となく躊躇しちゃうんだよな。手を繋いでたってこともあるし、確実に意識する。


 普段なら、俺よりも確実に強く意識するであろう伊波さんは、


 ――鈴木くんに映画を楽しんでもらうために少しでも面白く説明して、興味をもってもらいたい!


 と、映画のことしか頭にないようで全然気になっていないらしい。そんなことされたら別のことに興味が沸くっての。


「ほら、隣空いてるから」

「あ、ちょっ……」


 伊波さんに手を引かれ、一つの椅子に二人で座るような形になる。椅子が普段から、学校で座っているようなほど小さくないとはいえ、やはりどうしても肩が触れてしまう。


「あのねあのね。今日、見る映画はね――」


 しかし、伊波さんはそんなことお構いなしにより密着してきて自分のスマホに表示された映画のあらすじ画面を見せてくる。


 や、柔らか……それに、なんかスゲー良い匂いもする。


 以前、失礼ながらもお姫様抱っこをさせてもらった時に、伊波さんの肌が俺とは比べ物にならないほど柔らかいことを知らされている。にも関わらず、俺の心臓はうるさいくらいに激しく脈をうっている。


 伊波さんってたまにとんでもない大胆な行動を無自覚でしてくるから油断ならないし、ちょっと怖いんだよな。どんどん、気持ちを強くさせられそうで。ゆっくりでいいと思ってるのにこんなにも近い距離まで懐に入れられてると思うとどうしても意識してしまう。


「も~聞いてる?」

「聞いてる。聞いてるよ」


 伊波さんとパッと目が合った。


 ――ど、どうしよう……夢中になって、気付いていなかったけど……すっごく近い。こうなるから、さっき鈴木くんは躊躇ってたんだ!


 そうだ。そうだよ。だから、少し離れてくれると助かります。


 ――……で、でも、それって、鈴木くんも少なからず私を意識してくれてるってこと、だよね……? だ、だったら……!


「そ、それでね――」


 結局、伊波さんが離れてくれることはなかった。より密着する、なんてことはなかったけど変わらずの距離で気を紛らわせるかのように映画を説明され続けた。


 薄暗い中でも分かるくらい頬を赤く染めている彼女を見て、俺はただこう思った。可愛いな、と。

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