表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心の声が聞こえる俺は隣から聞こえる好きに困っている  作者: ときたま@黒聖女様


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/36

デートのお誘い ①

 ――鈴木くんと連絡先を交換したい!


 唐突に思い付いたのか。伊波さんは六限目の授業の終わりにそんなことを意気揚々と叫んだ。もちろん、心の中での話だが。


 ――でも、どうやって連絡先を交換したらいいんだろう?


 普通に聞けばいいんじゃないか?


 ――鈴木くんがスマホを見てる。なんて、ベストタイミング! やっぱり、私と鈴木くんって以心伝心してるんだね!


 まあ、俺がしてやってるんだ。いいから、早く聞いてくるがいい。今なら、連絡先が身内しか入ってない可哀想なスマホの餌食にしてあげるから。


「す、鈴木くん!」

「ん?」


 あくまでも、気付いてないふりをして聞き返す。

 因みに、俺のスマホの画面は真っ暗で自分の演じきった間抜け顔が反射され、なんとも言えない惨めな気分になる。


 ――えーっと。えーっと。


「鈴木くんはスマホにカバーとかしないんだね」


 ……ヘタレか!


 ――失敗しちゃったよ~友達だからっていきなり連絡先を聞くのはハードルが高いよ~うう~。


「急にどうしたの?」

「あ、いや……ほら、私はカバーつけてるからちょっと気になって」


 ――こ、こうなったら鈴木くんに聞いてもらうしかない。ほら、不自然だけどスマホ見せたしお願いします!


 あからさまに自分のスマホを見せてくる伊波さんに仕方ないな、と思いつつ、言われた通りにしようとしてピタリと体を止めた。


 あ、あれ……理由もなしに連絡先交換したいって申し出るの思ってた以上にハードルが高いな。


 ――さあ、鈴木くん。スマホが二台、これは連絡先交換するしかないんだよ!


 うるさい。なら、そっちから聞いてよ。


「あんまり、気にしたことなかったかな」

「へ、へぇ~……そうなんだ」

「うん」

「…………」

「…………」


 ――ど、どうして踏み込んでこないの? 私なら、いつでもいいんだよ? むしろ、踏み込んでほしいんだよ?


 どうして、俺が伊波さんの連絡先をどうしても欲しい男、みたいになっているんだ。別に欲しくなんて……ない。


「あ……じゃあ、私帰るね」

「うん。また、明日」


 ――欲しくないの!? 気にならないの!?


「ほ、ほんとに帰るからね!」

「うん、バイバイ」


 伊波さんに手を振ると、


 ――うわぁぁぁぁん。鈴木くんのバカァァァ!


 逃げるように帰っていった。



 ということが、昨日あった。最後にバカだと言われたことには腹を立てそうになったがそこは冷静の俺。元より、バカだのアホだのダサいだの怖いなどは言われ慣れている。ダメージなんてゼロだ。


 ――昨日は逃げちゃったけど、今日は私から鈴木くんに連絡先を聞いてやるんだ!


 残念だったな。今日は、作戦を立ててきた。だから、昨日望んでいた通りにしてやる。俺は伊波さんよりチョロくてもヘタレではないということを証明してやろう!


「伊波さん」

「鈴木くん」


 おっと、タイミングが重なってしまった。


 ――ど、どうしよう……以心伝心過ぎるよ~。


 この隙にとっとと済ませてしまおう。


「何か用?」

「う、ううん? 鈴木くんは?」

「伊波さんって猫好きなんだよね?」

「そ、そうだけど……どうしたの?」


 ――鈴木くん、私が猫好きなの覚えててくれたんだ~。嬉しいな。でも、急にどうしたんだろう。


「昨日の夜さ、猫の動画眺めてたらすっごく可愛いの見つけたんだ」

「そうなんだ」


 ――なんか、女の子みたいで可愛いな。


 やめてくれ。それは、差別だから。男の人だって普通にアニマルビデオ見て癒されてる時くらいある。……まあ、俺の場合は今までになかったけど。


「それで、伊波さんと感想を言い合いたいと思いまして……」


 や、やっぱり、緊張する。たかが連絡先。交換したからといって、特に何かする訳でもない。連絡先が一件追加されるだけの行為でしかない。


「あ、そうなんだ。じゃあ、動画の名前教えてくれる?」


 どうして、気付かないんだ。折角、いい感じに交換する流れを作っているのに……昨日、バカって言ったのはどの口だよ。


「あ、いや、その……ゆ、URL送りたいからさ……よかったら、連絡先を教えてほしい」


 ――っっっっ! す、鈴木くんから連絡先教えてほしいって言われた!


「ど、どう?」


 ――すっごく、不安そう! 可愛い!


「う、うん。もちろんだよ!」

「じゃあ――」


 俺と伊波さんはスマホを振り合い、お互いの連絡先を送り合った。

 色々と恥ずかしい思いはしたものの、一つのハードルをどうにか飛び越えれたようで一安心だ。


「鈴木くんのアイコン……」

「えっ……あー……」


 自分の連絡用アプリに登録してあるアイコンは何もない。アプリが最初に設定してある初期仕様のままだ。


 身内の連絡先はアプリではなく、ちゃんとアドレス帳に入れてあるから今まで使おうとしたことがないのだ。


 流石に伊波さんと連絡する(予定はないが)ことになって、メールでのやり取りというのは時間がかかるだろうと考えてアプリを選択したんだけど。


「何かまずい?」

「う、ううん。その、珍しいなって」

「今まで使ったことないから」

「じゃあ、私が初めて?」

「うん」


 ――わ、私が鈴木くんの初めてもらっちゃったんだ!


 意味は違うであってほしいと思いながら、明らかに声が弾んだ伊波さんを見る。

 うん、スッゲー喜んでる。


「じゃ、じゃあ、私が沢山メッセージ送ってあげるよ」


 いかにも、優しいでしょアピールをされても俺はときめかないからな。だいたい、メッセージのやり取りや電話は苦手なんだ。


「お手柔らかに」

「ふふ、楽しみにしててね!」


 絶対、メッセージ沢山送られてきそうだなぁ。


「あ、じゃあ、URL送るから」

「お願いします」


 暫く、動画でも見て大人しくしててくれ。色々と疲れたし、疲れそうだから少しでも休ませてほしい。


「じゃあ、見てみるね」

「家でゆっくりでいいけど」

「え、この場で見るよ。感想は直接言った方が楽しいから」


 それが、当たり前だというように伊波さんは猫の動画に夢中になった。子猫がオモチャで遊びながらゴロゴロしている姿を見ているのだろう。


「可愛いね……」


 無意識だったのかもしれない。

 けど、小さく呟いた伊波さんの横顔を見て俺は、


「うん、可愛い……」


 そう、呟いてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ