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心の声が聞こえる俺は隣から聞こえる好きに困っている  作者: ときたま@黒聖女様


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昼食会にて死す 後

「お、お待たせ!」


 一緒にお昼を食べよう、と誘ってみたのはいいものの。教室で席をくっつけて、というのは自滅行為だし、かといって、カップルだらけの中庭でというのも、脳に大好きや愛してる、などの聞きたくもない声を聞くのが嫌だった。

 というわけで、誰も来ないであろう体育館裏で待ち合わせをした。


「もう少しゆっくりでも良かったよ」


 走ってきてくれたのだろう。

 肩で息をする伊波さんの髪は少しだけボサッとしている。


「そ、そんなわけにはいかないよ!」


 ――だって、ちょっとでも長く鈴木くんといたいんだもん。折角のランチデートだし!


 二人して、体育館への入り口となっている三段だけの階段に腰を下ろす。

 伊波さんは弁当を食べる前にスカートのポケットから手鏡を出して、はねた前髪を整えていた。


 ――ちょっとでも、可愛く思われたいもんね。


 こういうのは正直、ズルいと思う。


 それから、二人して手を合わせた。


 コンビニ袋から買ってきたパンを取り出し口へと入れる。

 基本、少食だとしても、あれだけ運動させられると腹が減る。

 何も考えず、二つ目のパンにかぶりついた時、


「鈴木くんって、いっつもパンだよね」


 ――って、これじゃあ、毎日、昼休みあなたのことを見ています。あなたに夢中です、って言ってるようなものなんじゃ!? 失敗したーーー!


「まあ、朝と昼はどうしても。俺、今一人暮らしだから」

「そ、そうなんだ」


 ――よ、よかったぁ……鈴木くん、変に意識してない。よくはないんだけど……鈍感系でよかったよぉぉ……。


「……って、一人暮らし? 一人暮らししてるの!?」

「うん。両親が出張中で冬休みくらいまではとりあえず」


 父さんの出張が夏休み前に決定し、父さん大好き母さんはついていくことに決めた。

 二人がいつも愛し合っていることは知っているし、もう高校生だからと遠慮しなくていいよ、と伝えたのだ。

 二人は少々、心配性で親バカだけど、毎日電話するから、という約束を決めて飛び立ってもらった。


「じゃあ、晩ご飯はどうしてるの?」

「コンビニ弁当か近くに住むおばあちゃん頼りかな。って、言っても、あんまり迷惑かけられないから基本は安く済む方法で済ましてる」


 一人暮らしをするにあたって、特に決められたことはない。毎日、電話すること。それだけだ。

 家を出たわけでもないし、近くにおばあちゃんも住んでいる。

 つまり、一人暮らしといってもあまり高難度なものではない。


「健康面で心配にならない? 栄養が片寄ったりとか」

「まあ、ちょっとは不安だけど死にはしないだろうから。俺、料理苦手だし」

「そ、そうなんだ」


 ――ど、どうしよう……こんなの引かれちゃうかな。で、でも。ちょっとでも、近づきたい。ちょっとでも、意識されたい。


 教室でいる時よりも離れて座っていた伊波さんが近くにまで移動してくる。

 さっきは気にならなかったけど、甘い香りが鼻をくすぐった。


「あの、鈴木くん。よかったら、玉子焼き食べて」

「ありがと」


 申し訳なさそうに差し出された弁当から、ひょいっと指で二つ入っていた内の一つを摘まむ。

 ポカーン、としている伊波さんを横目に甘く味つけられた玉子焼きを味わう。

 その味は実においしく、伊波さんの母親はとても料理上手なんだということが身を通して分かった。


「おいしい」


 素直な感想を述べると伊波さんは弾かれたように頬を赤く染めた。

 別に、伊波さんが手作りしたわけでもないくせに……どうしてだ?


「す、鈴木くん。よかったら、これも食べて……」


 そうやって、箸で挟まれたミートボールが口元に差し出された。


 あーんと間接キスの同時攻撃。


 ――こ、これは、別にそういう意味でじゃないよ。そう、鈴木くんが風邪でもひいて、学校に来れなくて、会えなくなるのが嫌だから。だから、あーんしてあげたいとか間接キスだとかは思っていないから。ましてや、お箸舐めようとか思ってないから!


 伊波さんは自分から差し出したくせに目と口をきゅっと閉じながら、頬を赤くして小さく震えていた。


 その姿は男なら誰でも可愛いと思ってしまうようなもので、例え、俺が口にした箸を舐めようと考えられていても引くより先に同じように赤くなってしまった。


 しかし、幸いなことにその事を彼女に知られることはなかった。


 ――うーうー。うーうー。鈴木くんに気持ち悪いって思われてませんように。思われてませんように!


 怖くて見れないのか目を閉じたままの伊波さん。

 この隙に、と意を決してミートボールを口にした。


 ――っっっっ! す、鈴木くん、食べてくれたぁ~~~しかも、赤くなってくれてる~~~意識してくれたんだぁ~~~。


 タイミング悪く、目を開けられあられもない俺の姿が披露された。

 当の本人はスッゴク嬉しそうで俺はただただ恥ずかしい。


「あ、ありがと……おいしいね」

「ううん。これは、お返しだから」


 お返し……? あー、そういうことか。


 俺は恥ずかしくなって頭をかいた。


「覚えてるか分からないけど……鈴木くんがくれたメロンパンのお返し」


 それ以上は言わなくていいんだけど……恥ずかしいし。


「あの時、私すっごく助かったから……ありがとう」


 ――鈴木くんにとってはなんてことのない事で覚えておくことの程でもないのかもしれない。でも、あの日から私はずっとあなたに惹かれ続けてる……そんなにも嬉しいことだったんだよ。


 ああ、もう。本当にこんな能力なかったらよかったら。そしたら、こんなにもドキドキさせられることなかったのに。


 ――あれ、鈴木くんが真っ赤だ。どうしたんだろう?


 君のせいだよ。君がどこまでも真っ直ぐで……俺を嫌ってくれないから、俺はおかしくなるんだ。


「……どういたしまして」


 ここで、覚えていなかったら嫌われたかもしれない。

 でも、嘘はつけなかった。

 伊波さんの真っ直ぐさには、せめて、向き合うべきだと思ったから。


 ――鈴木くんも覚えててくれたんだ……嬉しいな。優しいな。好きだな。


 っ、それ以上はやめろぉぉぉ……死ぬ……死んじゃうから!

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