なんとかゲームを途切れさせない程度にはなったな
南木さんと正面衝突し、俺が彼女を押し倒すかたちになるトラブルがあったものの、俺も南木さんも怪我に至るようなことは無くてほっとした。
それぞれが所定の位置について練習を再開だ。
「じゃあ、もう一回いくよー」
東雲さんがボムっとフローターサーブでボールを打ち込んできた・
先程の失敗を繰り返さないように、今度はボールを中心視野で凝視するのではなく、全体を周辺視野で捉え、てボールや自分以外のプレイヤーなどの動きを、大まかに見るようにする。
そうすると、ボールの動きなども却ってよくわかるようになるから不思議だが、人間も目は中心視野では色彩の変化を鋭敏に感じ取れるようになっていて、周辺視野では明暗の変化を鋭敏に感じ取ることができるために物体が動いたかどうかを鋭敏に捉えることができるようになっているらしい。
「おーらい!」
今回は早めに声をかけて、動くことが出来たので南木さんもボールを追いかけて動き出すことはなかった。
俺はボールの落下点に移動してアンダーハンドパスと同様の体勢でレシーブをする。
ボールを腕で打ち返すのではなく膝のクッションを使ってボールの勢いを吸収した後で、膝を伸ばして体を持ち上げ、ボールを下から持ち上げるようにすることで、思った通りの場所へボールを上げることが出来た。
「おっけー!」
俺が上げたボールを中垣内が広瀬君にボールを高くトスアップし、広瀬君が剛力君のブロックの上からスパイクを決めた。
「よっしゃ、上手くいったな」
俺がそういうと東雲さんは反対側のコートからこちらのコートへ移動してきた。
「じゃあ、ローテーションしよっか、あたしは次はレシーバーかな?」
俺はうなづいていう。
「そうだな。
剛力君がサーバー、広瀬君がブロッカーで、中垣内がアタッカー・
俺と東雲さんがレシーバーで行こうか」
「おっけー!
どさくさに紛れて今度はあたしを押し倒さないようにね」
二ヒヒと笑いながら東雲さんが言う。
「おーい、どさくさまぎれって、さっきのはわざとやったわけじゃないし、そういう事をやろうとするならタイミングとか雰囲気とか整えたうえで、相手から合意を得てからやるに決まってるだろ」
俺がそういうと東雲さんが少し引き気味に言う。
「うえ?!
そ、そうかえしてくるかぁ……」
いったいどういう反応をすると思ってたんだか。
「じゃ、じゃあ、行きますよー」
剛力君がボールをトスアップしてフローターサーブを打って来た。
ボールは俺と東雲さんの間位だがやや東雲さんの方に近いか?
「東雲さん、まかせた!」
俺がそう声をかけたが東雲さんは少し迷ってたようだ。
「へ? あたし?!」
そしてボールは地面に落ちてしまった。
「今度は見事にお見合いしちまったなぁ」
バレーボール、或いは野球など複数の守備の選手がいるスポーツではよくある失敗だが、選手の間に落ちて来たボールを選手同士がとるのを譲り合ってしまい、結果として誰もとらずにボールが落ちて失点してしまうというのは中々にもったいない。
「あ、あはは、ごめんねー」
「んー、やっぱレシーバーだけで誰が拾うか判断をするのは難しいのかもな。
ボールがどこに飛ぶかを判断してセッターが誰が拾うか指示だしした方が良いかも」
俺がそういうと東雲さんも頷いた。
「確かにねー」
そして南木さんも頷いた。
「と、すると、私が指示をした方が良いってことですね」
「うん、お願いね」
「じゃ、じゃあ、行きますよー」
そういった後、剛力君がボールをトスアップしてフローターサーブを打つ。
また微妙な位置に飛んできそうだが……・
「秦君!」
南木さんの指示が俺に飛ぶ。
「了解!」
俺はさっとボールの落下点に入ってレシーブを上げ、南木さんのトスの合わせて中垣内がスパイクを打つが、広瀬君がブロックを決めてしまった。
「広瀬君やるなぁ」
俺がそういうと広瀬君はかるく笑って言う。
「まあ、身長の差があるからね」
「それだけじゃなさそうだけどな」
その後もローテーションしていき、すべての場所を一通りやって、チームとしてそれなりに形になったと思う。
まあ、これで明日の本番も何とかなりそうかな?




