オレはBLが好きじゃねぇんだ…… カップリングに対する作者の愛が好きなんだよォォッ!!!
前回のあらすじ:中垣内に少女恋愛小説を書店に行ったら、白檮山さんが腐女子だというのがわかってしまった。
さて、バイト先の先輩である白檮山さんが、一見社交的で明るい女性だと思っていたのに、実は腐女子だという真実を知った時は少し驚いた。
だが、今はBL小説やBLコミックが、普通に書店やお店に堂々と売られている時代であるし、そういったものに需要があるなら、当然それを実際に買う人間がいることもわかっていたから、さほど動揺や嫌悪感はない。
まあ、俺自体が間違ってBLコミックを買ってしまい、しかもそれを読んでみたら意外と面白いじゃないかと思っていたりする人間だったりするのもある。
それに、黒板✕チョークの例えで、それが何を意味しているのかをわかってしまうあたり、俺も手遅れなのかもしれないのだろうが。
「あ、バイトに遅れちゃう。
じゃあ、また明日バイトでね」
白檮山さんがそういうので俺はうなずく。
「ええ、また明日」
そして白檮山さんの制服が、俺の通っている高校の女子ものだと今更ながら気がついた。
パティスリーでは女の子はお店の制服に着替えているからわからなかったんだ。
そして、翌日。
俺はまず中垣内に、昨日買った本はどうだったかを聞いてみた。
「昨日の本を読んでみてどうだった?」
「あ、うん、すごい面白かったよ。
アニメになってるって、いうだけのことはあるね」
「ああ、それならよかったぜ」
なろうぜの方はよくわからないと言われたけど、やっぱり書店で売ってるようなものとは違うんだな。
「まあ、これで国語の点数は上がるんじゃないか?」
「うん、多分大丈夫だと思う」
「なら良かったぜ」
これで中垣内の苦手という国語の方はなんとかなりそうだし、東雲さんと西梅枝さんの数学の方に集中できるな。
まあ勉強を他人に教えるということは、自分でもその内容や勉強方法をちゃんと理解しないといけないから、俺自身のためにもなってるわけだけど。
そんな俺の様子を気に入らないのか、前の席の羽賀は、やっぱり舌打ちしていたりするのだが。
舌打ちするくらいなら、自分も同じようなことをすればいいのにな。
で、金曜日の放課後はパティスリーでのバイト。
で、俺がパティスリーに向かおうとしたら、白檮山さんが校門のところで立っていた。
「やほー秦くん。
一緒にバイト先まで行こうよ」
「いや、俺は別にいいですけど、待ってたんですか?」
「ええ、秦くんのクラスとか聞いてなかったから、ここで待ってれば会えるかなって」
「俺は1-Aですけど……うちのクラスまで来るつもりだったんですか」
「いや、クラスではどんな感じなのか見てみたいしね」
「とりあえず、パティスリーに向かいながら話しましょう」
「ええ、いいよ」
俺たちは話しながら、パティスリーへ向かうことにした。
「俺はそれなりに勉強もやって、クラスメイトとの会話もしますが、基本オープンヲタですよ。
だからって、別にクラスメイトの前で漫画やアニメの話とかは積極的にはしませんが、クラスで浮いたりはしてないと思いますけど」
「そっか、男の子はいいよね。
漫画やアニメの話をおおっぴらにしても、特に周りから何も思われないし」
「まあ、基本的に男のほうがガキっぽいし、男には青年誌もありますからね。
少女漫画の上はTL漫画やレディコミとかだから、人前ではなかなか読みづらいでしょうし」
「そうなのよね。
そもそも少女漫画のターゲット年齢が広すぎる気もするけど。
とはいえ秦くんみたいにBLが好きな男の子は流石に少ないと思うけどね」
「いや、勘違いされてるようですけど、俺はBLが好きなんじゃないんですよ?
ただ作者の思い入れという、キャラクターに対する愛が感じられるカップリングの中にはBLが含まれていてもいいってだけです。
だから逆に陵辱とか寝取りとかは好きになれませんし、ただ女性を絡み合わせてるだけのGLとかも好きじゃないですね」
「なるほど、うん言いたいことはわかるよ。
00ガンダムのグラ刹とかいいよね」
「いや、そこは刹グラでしょう?」
「え?」
「え?」
「どうもカプの好みは合わないみたいね」
「うーん、そうみたいですね。
こればかりは趣味嗜好の問題だからどうにも。
そもそも趣味においては自分の嗜好は自分だけのもので真の同士とか存在しないもんですよ。
これはドルオタの推しも同じみたいですけどね、ソシャゲのものも含めて」
俺がそういうと白檮山さんはうなずいた。
「たしかに、そういうものなのかもしれないですね」
等と話していたらバイト先に到着。
「おはようございまーす」
白檮山さんが、王生さんへ、接客業向けの仮面をつけて元気に挨拶するのを見て俺は心で苦笑しつつ、続けて挨拶する。
「おはようございます。
王生さん」
「はい、おはようございます。
今日はお二人で一緒に出勤ですか?」
王生さんがそういうので俺は答える。
「ええ、昨日白檮山さんも同じ学校だって偶然本屋でばったり会って知ったんで」
「そうですか。
では今日もよろしくお願いしますね」
「はい」
「はい」
バイト中は色々やることがお互いにあって雑談をしている暇はなかったけど、白檮山さんと新發田さんはもしかしたら仲良くなれるかもしれないな。
まあ、新發田さんはおそらく腐女子じゃないとは思うけど。




