中垣内に首輪型のチョーカーをプレゼントしたら変態だとののしられたよ
さて、中垣内が、映画を見に行こうと誘ってきたのをOKしたほかは、今週は特に変わったことは起きなかった。
月曜日と水曜日は家庭科部の部活動。
火曜日と木曜日は中垣内との動画の撮影。
金曜日と土曜日はパティスリーでのバイトをこなし、やってきたのは日曜日。
とりあえず身だしなみを整えて、待ち合わせのために駅前に向かう。
「弥生ちゃんお待たせ、まった?」
「ううん、私も今来たところだから大丈夫だよ」
「じゃ、今日もよろしく」
「はいはい」
二人でらららぽーとへ電車とバスで移動して靴屋へ。
「靴も4000円くらいから、それなりに良さげなのがあるんだなあ」
「まあ、高いものだとそれこそ何万円とか何十万円だけど、そこまで高いものじゃなくても服に合わせれば大丈夫だよ。
ローファーはあるから、スニーカーとドライビングシューズが一足ずつあればいいよね。
うーんどれが似合うかな……」
と、あれこれ見てくれるけどやはり、俺にはどれが服に合ってお洒落なのかよくわからん。
「とりあえずはこれかな?
色を合わせたいからちょっと試しに、はいてみて」
弥生ちゃんが持ってきたのは白、黒、グレーのモノトーンカラーのスニーカー。
「はいはい、じゃあ試してみるよ」
俺は言われた通りにはいてみた。
「どうだろう、これ?」
「うん、これならグレーかな」
同じようにドライビングシューズも茶色いのを一足買って一万円が吹き飛んだ。
「はあ、やっぱお洒落って、金がかかるよな」
俺がそういうと弥生ちゃんは苦笑して言う。
「女の子は衣服だけじゃなくて、さらに化粧品や美容室の代金もかかるけどね」
「いやいや、ほんと女の子は大変だよな」
そんな感じで今日は靴を二足買うだけなので、12時半には買い物は終わった。
「さて、待ち合わせの時間までまだ時間はあるな。
弥生ちゃん、今日のお礼で、ビュッフェで昼の食事はどう?」
「うん、それでいいよ。
ちょうどおなかも減ってきたしね」
らららぽーとのビュッフェレストランは食べ放題でランチ1,780円だから、まあそこまで高くはない。
ビーフ・ポーク・チキンのグリル料理をメインに、ピザ・パスタ・グラタンにカレー、スープに温菜、冷菜、デザートといろいろそろってるし、内装もそこそこ洒落てるしな。
で、中に入ってさて食事開始と行こうとしたところ、店の外になんかすっごい気合入れておしゃれをしてきたっぽい中垣内の姿を見かけた。
時間を見たがまだ13時のちょっと前だが、待ち合わせは14時なのに、ずいぶん早く来てんなあいつ……。
俺がどうしたものかと、しばし悩んでいると弥生ちゃんがきいてきた。
「あっ君、どうしたの?」
「いや、14時に待ち合わせって言った相手がさ、もう待ち合わせ場所に来てるみたいだしどうしたものかと」
「ええ、それはちょっと早すぎだね。
もしかしたら、こっちでご飯食べるつもりだったのかもしれないよ」
「ああ、なるほど、そう考えてみればちょうどいいかもな」
俺は店をいったん出て、案内板を見て首をかしげてるらしい中垣内に声をかけた。
「おーい、中垣内。
お前も食事場所を探してるのか?」
俺がそう聞くとびっくりしたように俺の方を振り返った。
「え、あ、そ、そうよ。
でも、ここに何があるか、あたしはあんまり知らないから、どうしようかなって思ってたの」
「そっか、じゃあ一緒に飯食おうぜ。
ちょうど弥生ちゃんと、飯を食べようとしてた所だ」
「あ、う、うん。
じゃあそうするわ」
という訳で俺は中垣内を連れて弥生ちゃんの元へ戻った。
「あらあら、あっ君のお友達がこんなかわいい女の子だなんて。
てっきり男友達かと思ってたのだけど……それとも彼女さん?」
ウフフと笑ってそういう弥生ちゃんに俺は苦笑。
「まだ高校に入学してそこまでたってないのに、彼女ができるわけないじゃん。
弥生ちゃん、こいつは中垣内」
俺がそう紹介すると慌てたようにぺこりと頭をさげて言った。
「初めまして、ええと……」
「はじめまして。
私は北郷弥生です」
「あ、中垣内静香です」
「これからも、あっくんと仲良くしてあげてね」
「は、はい」
まあ上映開始は14:30からだし、のんびりおしゃべりしながらでも食べよう。
弥生ちゃんと中垣内は結構相性が良かったらしく、二人で楽しそうにおしゃべりをしながらグリルプレートにグリル野菜、サラダやスープをチビチビ食べてる。
俺はそんな二人に対して、時々相槌をうったりしながら、元を取れるようにがっつり肉を食べていたが。
で、そろそろ時間だ。
「弥生ちゃん。
悪いんだけどそろそろ映画の時間だから」
「あ、ごめんね。
ついついおしゃべりが楽しくて……ね」
弥生ちゃんが笑顔で言うと中垣内もうなずいた。
「はい、あのSNSのID交換しませんか?」
「ええ、いいわよ」
と二人はID交換を済ませた。
「んじゃ、弥生ちゃん
今日はありがとうな」
「ううん、わたしもたのしかったからいーよ」
「じゃあ、映画を見に行くか」
「うん」
俺たちは千葉県下最大級のシネマコンプレックスへとむかう。
「席はっと……L列の12と13だな」
「場所は、あそこみたいよ」
「ん、じゃいくまえにポップコーンとか飲み物買っておくか?
味はなにがいい」
「なにがって?」
「大きなバケツに入ったポップコーンを一人で食うのはきついし、分けて食おうぜ」
「う、うん、味は普通の塩味がいいな」
「じゃあ、塩味のポップコーンだな。
あと飲み物はコーラでいいか?」
「うん、いいよ」
という訳でコーラ二つとバケツに入ったポップコーンをもって席へ移動。
映画は愛と爆笑の“千葉&埼玉ディス映画”といわれるだけあって、なかなかにシニカルな内容でもあるが、時々映画館に笑いが渦巻く様子を見ると結構人気なのだろう。
埼玉や千葉が江戸時代レベルの生活をしてその出身者が差別されていたりするが、北関東はもっとひどいし、埼玉対千葉の戦いは結構盛り上がってるし、いつの間にか普通に車やバイクも出てきたりしてるし何がなんだかとは思うが、ギャグ映画なのであまり気にせず観るのがよいだろう。
そして、実際に2月22日に実写映画版が公開されてから結構たってるけれどもそれなりに人は入ってるしな。
そして映画の上映終了後に、中垣内は言った。
「まだ時間あるなら、ちょっとウインドウショッピングしてかない?」
まあ、今日は楽しませてもらったし付き合うか。
たぶん買う訳でもない服を長々と見て回ることになるんだろうが。
「ああ、いいぜ。
ここは洋服屋に靴屋、雑貨屋まで沢山あるからな」
「んじゃ、れっつごー」
そしてあれこれ見て回ってるうちに、雑貨屋で俺の目に入ったのはベルベット素材のハート型のチャームが可愛い首輪みたいなチョーカー。
値段も1000円と安いし今日の映画のお礼に買ってみるか。
「すみません、これください」
「あ、はい、ありがとうございます」
そして俺は中垣内にそれを渡した。
「え、これって?」
「今日は楽しい時間をありがとな。
安物だけど、俺からのお礼の気持ちだよ」
中垣内はそれを見て顔を赤くした。
「あ、あのね。
まだ会って間もない女の子に、こんな首輪みたいなチョーカーをつけさせようなんて……。
あなたって変態なの?」
「え?」
「い、いいこと。
ほかの女の子に、こんなもの買って渡したら、絶対変態と思われるから絶対やめなさいよ」
そういいながらチョーカーをつける中垣内。
「いや、お前が気に入らないなら返品しても……」
「あんた馬鹿じゃないの。
もう身につけてるんだから返品できるわけないでしょ」
「お、おう。
ならつけなければよかったんじゃ」
中垣内はなぜか顔を赤くして言う。
「あ、あんたがろくでもない変態だって、わからせるためよ。
い、言っておくけど、こんなことをするのなんて、わ、私くらいなんだからね」
「いや、そこで自爆してまで、俺が変態だという証明をやらんでも……」
中垣内はプイっと顔を背けていった。
「いいの!
さあ、帰るわよ」
「へいへい」
なんか、ぷいっと顔を背けるときに見たが、やたらといい笑顔をしていた気がする。
こいつの心境が一ミリもわからん。
いやなのかうれしいのか、どっちかに、はっきりしてくれんかな。




