やはり接客業で働くときに大事なのは笑顔と掃除だな
前回のあらすじ:新發田さんにイラスト投稿サイトへ投稿をさせてみた
さて、かなり強引ではあったと思うが新發田さんに、ピクシズへのイラストの投稿を行わせることで、それに対して感想をつけて、彼女が書くイラストに自信を持たせる作戦はとりあえず始まった。
その結果がどう出るかは、まだわからないけどな。
そして、バイトの許可申請は無事に取れたので、今日からバイトは始められるな。
さっそく、駅前のパティスリー ”パティスリーアンドゥトロワ”へ俺は向かった。
「おはようございます。
本日からお世話になります」
店長の王生真理恵さんに会うのはこれが二回目だ。
風俗もそうだが飲食も実力があれば、若くても出世や独立は早い代わりに、長く続く人間はあまり多くはない。
その理由のほとんどは、時給換算にするとかなり低い給料に対する長い労働時間や土日祝日に休めないからなんだよな。
サービス業は普通の仕事が終わったり、休みだったりする時が混む業種なので仕方ないのだが。
「あ、ちゃんと来てくれましたね。
どうぞ入ってください」
「はい、では失礼しますね」
王生さんに続いて店内に入って、休憩室へ。
「では、さっそくだけど今日からお仕事をしてもらいます。
まずは前掛けとバンダナをつけてください」
「わかりました」
「最初はお客様がいらしたら”いらっしゃいませ”、お帰りになるときは”ありがとうございますという挨拶だけ、ちゃんと笑顔でしてくれればいいですよ」
「あ、はい。
挨拶は接客業にはとても大事ですからね。
了解しました」
「面接の時にもお話ししましたが、最初は店内やキッチンの清掃、イートインの食器の片付けや食器洗いなどの雑務から入りますのでよろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
という訳で最初にやるのは手洗いや粘着シートで衣服の糸くずや髪の毛、埃などを取って、基本は掃除からだな。
そしてそんな話をしていたらもう一人のバイトの女の子も出勤してきたようだ。
「おはようございまーす」
「おはようございます。」
「白檮山さん、今日からよろしくお願いしますね」
俺がそういうと白檮山さんは、にこっと微笑んでいった。
「こっちこそ、よろしくお願いします」
店長でパティシエである 王生さんが、一つ一つのケーキやスイーツを丁寧に作り、それを白檮山さんが状況に応じて補充しながらレジを打つ。
平日の昼間は別の主婦のパートさんがレジ打ちなどをやってるらしい。
店頭と店内のきっちりとした掃除は開店前にやるはずだが、こういった個人経営の店で開店前にはまずスイーツの仕込みをし、生地や焼き菓子などを作るのが先なので、そこまできっちり掃除ができないことも多いだろう。
俺は黙々とガラスのショーケースやイートイン用のコップを磨く。
ショーケースのガラスを磨く場合は、水拭きから油膜落としまで丁寧に行うと2~3時間は必要だが、さすがにそんな時間はないので、柔らかい布で水拭きをおこない、マイクロファイバーのクロスでから拭きする。
そうすれば、細かい汚れから拭きあとまで綺麗に落ちたりする。
さらに細かいガラスの汚れが気になるときは、メガネ用クリーナーで、よく拭き取ればいい。
ガラスのコップは水垢で曇っているものはラップに重曹の粉をつけて磨き、手あかがつかないように、麻の布を2枚使い、両手に1枚ずつ持ってコップを包むようにして磨き上げればいい。
俺がそうやってガラスを磨いたら、白檮山さんが感心したようにいった。
「あらら、ずいぶんきれいになったね。
ちゃんと掃除はしていたのだけど」
「中性洗剤だと意外と水垢は落ちませんからね」
「それに掃除って結構力仕事だから、やっぱり男の子がいてくれるのは助かるわ」
「確かに掃除って意外と大変ですよね」
お客様が来店したら、笑顔で
「いらっしゃいませ、ご来店ありがとうございます」
お客様が退店するときも笑顔で
「ありがとうございました。
またのご来店をお待ちしております」
と軽く頭を下げて挨拶もする。
そして奥から店長の王生さんから声がかかった。
「秦くーん、ちょっと物を運ぶの手伝ってくれる?」
「はーい、今行きます」
「ごめんね、これを奥へ運んでもらえるかな?」
王生さんが、指し示したのは、業務用の小麦粉のでかい袋。
業務用の小麦粉は25kgの袋に入ってて、塩や砂糖、コーンスターチといった商品も大袋は25kg入なので、それを運ぶのは女子には結構大変だったりする。
「ええ、わかりました」
まあ俺にはそこまで重たいとは感じないけどな。
パティスリーではお客様からケーキの注文を取り、ショーケース内のケーキをトングで掴んで、箱などに詰めて販売するので指先の繊細さも要求されるから、意外と大変だったりもするが、まあ何とかなりそうかな。
5月5日の子供の日は忙しくなるらしいのでそこまでにはもっと接客を手伝えるようにしないとな。