制服の洗濯やアイロンがけに手入れなんかも大事だよな
前回のあらすじ:イメクラ店員のスキル”女の子との会話”が発動
さて、学校が終わって家に帰ってきた俺は、制服を脱いで部屋着に着替える。
脱いだブレザーとスラックスは、そのまま床に放り投げたりはしない。
ハンガーにかけて、消臭スプレーを軽く吹きかける。
それから布目に沿ってブラッシング。
表面についた細かなホコリや汚れを落としてやる。
ブレザーはともかく、スラックスは肌に直接触れるから、週末にはちゃんと洗濯するつもりだ。
そして次はシャツ。
衿と袖口は、どうしても皮脂汚れがつきやすい。
だから、そこには酵素入りの洗剤を少量つけて、汚れを浮かせてから洗濯機へ。
ワイシャツは裏返しにして、洗濯ネットに入る大きさに畳んでから投入する。
洗剤、漂白剤、柔軟剤をそれぞれ所定の場所に入れて、コースは手洗い。
脱水時間も長くしすぎない。
三十秒ほどに短くしておけば、シワもかなり抑えられる。
……まあ、ここまでやる高校生は、そう多くないだろうけど。
コスプレ衣装が汚れたら洗濯するのが当たり前だったから、こういう作業にはすっかり慣れてしまった。
「お母さん、アイロンとアイロン台ってどこにあったっけ?」
「えっ?」
母さんが目を丸くする。
「洗濯だけじゃなくて、アイロンも自分でかけるの?」
「うん。大事でしょ、アイロンがけって」
「そうなんだけど……」
母さんはしばらく俺の顔を見つめる。
「本当にどうしちゃったの?」
「まあ、高校生にもなれば、人目も気にしないといけないと思うからね」
「確かに、中学生までとは違うわよね」
「でしょ?」
……まあ、前の俺は服を脱いだら脱ぎっぱなし。
部屋は散らかしっぱなし。
洗濯なんて、完全に母さんへ丸投げだったんだけどな。
そんな俺が、今では自分から洗濯をして、アイロンまでかけようとしている。
そりゃ、母さんも驚くか。
洗濯が終わったら、なるべく早く洗濯機から取り出す。
軽く乾燥させたら、これも時間を置かずに取り出す。
あとは一枚ずつ形を整えて、ハンガーにかけて吊り干し。
「よし。あとは乾くまで放置だな」
夕食を食べて、風呂に入る。
そのあと軽く予習を済ませれば、ちょうどシャツも乾いている頃だ。
ハンガーからシャツを外し、今度はアイロン台を出す。
シャツを台の上に広げ、霧吹きで全体を軽く湿らせる。
アイロンにはスチーム機能もある。
だけど、それだけだと繊維全体に水分が行き渡りにくく、細かなシワが残ることがある。
だから、俺は霧吹きを使う。
そのほうが、きれいに仕上がる。
そしてアイロンをかける前に、まず生地を手で押さえて伸ばす。
細かなシワを、この段階でできるだけ取っておく。
これを怠ると、生地が緩んだところに新しいシワが入りやすい。
下準備は大事だ。
あとは、アイロンを滑らせていく。
アイロンを持っていないほうの手で生地を軽く引っ張り、伸ばしながらかける。
これだけでも仕上がりはかなり違う。
「……よし」
最後に全体を確認する。
「まあ、こんなものかな?」
「あら」
背後から母さんの声がした。
「すごく上手にアイロンをかけられてるじゃない」
「今は、お手本になる動画とかいっぱいあるからね」
「お母さんの頃には、そんなものなかったもの。便利になったわね」
「ほんとだよ」
……まあ。
実際のところ、動画を見ただけでここまでできるようになったわけじゃない。
前の人生で、イメクラの仕事をしていた頃に、衣装の手入れを嫌というほどやったからだ。
コスチュームは商品そのもの。
シワだらけじゃ格好がつかない。
ボタンが取れたら付け直す。
ホックが外れたら交換する。
ファスナーが壊れたら修理する。
そんなことを繰り返しているうちに、裁縫やアイロンがけまで妙に得意になってしまった。
……まさか、あの頃の経験が高校生活で役に立つとは思わなかったけどな。
シャツをハンガーに戻し、明日の制服を確認する。
これでよし。
少なくとも、服装の清潔感については問題ない。
高校生ともなれば、こういうところも大事だ。
特に男子は、身だしなみに無頓着なやつも多い。
だからこそ、ここで差がつく。
「……うん。明日はこれでいこう」
俺は満足して、部屋の明かりを消した。
高校生活。
勉強だけが大事なわけじゃない。
こういう小さな積み重ねも、意外と馬鹿にはできないのだ。




