どうやら前の席の男子には嫌われているらしい、それはともかくオタク系の女の子とも仲良くなれそうだ
前回のあらすじ:中垣内との動画撮影と投稿は非常に順調
さて、中垣内と、一緒にやっている動画投稿は非常に順調だ。
どうやら、まとめサイトか何かで取り上げられたらしいが、これは季節柄に合った動画の内容だったからかもしれないな。
単純に中垣内が可愛いからというのもありそうだけども。
登録者数が1000人を超えて、動画再生の回数が2万回を超えれば、それで1000円くらいにはなるだろう。
もしかしたらそのうちに、そこそこの収入にはできるかもな。
まあ、これで食っていけるほど、ユアチューバーへの道は甘くはない気がするけど。
それとそろそろ中垣内の誕生日も聞いておくか。
「あ、そういえば中垣内の誕生日っていつ?」
「あたしの誕生日は9月15日だけど?」
「了解、じゃあ忘れないようにしないとな」
と俺はスケジュール手帳に中垣内の誕生日を記入する。
「あんたってそういうとこ本当にまめよね……。
ち、ちなみにあんたの誕生日はいつなのよ」
「俺は10月10日だよ」
「ふーん、結構あたしと近いのね」
「たしかに、言われてみればそうだな」
まあこんな感じでいるならば中垣内が南木さんに、また中傷を仕掛けるようなこともなさそうでほっと一息付けそうだな。
女子からの嫉妬をさばけるほどのコミュ力がなくて、孤立気味な南木さんへのフォローもそろそろしていかないといけないな。
そして、明日は家庭科部の部活動の日だ。
そういえば明日は、家庭科部では何をするんだろうか?
調理を中心って言っていたからまた何か食べるものを作るのだろうけど。
俺は大仏さんにSNSを通じて聞いてみることにした。
『明日の部活動って何するんでしょうか?』
大仏さんからはすぐに返事が返ってきた。
『んー特に決めてないよー。
何か作りたいものはあるかな?』
『んじゃ、今回はベーグルなんてどうでしょう?
ベーグルなら発酵の時間もあんまりいらないですし』
『ベーグルか、うん、それもいいね。
じゃあ、明日はベーグル作成ってことで』
『わかりました。
西海枝さんにも、連絡しておきますね』
『よろしくー』
というわけで前と同じように西海枝さんへ、連絡を入れた後に少しだべって寝る。
そして翌朝。
いつものように俺、広瀬君、剛力君、西海枝さん、東雲さんでだべっていた。
「みんな、おはよう」
「おはようございます。
今日の家庭科部の部活動はベーグルを作るそうですね。
私はベーグルを作るのも初めてですので、また教えてくださいね」
西海枝さんがそういうと、東雲さんもニヒヒと笑って言った。
「またまた、美味しいものを食べられるのを期待してるから」
「東雲さんもちょっとは手伝おうって思わないのかね」
「あたしは食べる専門だもーん」
そんなことを言ってると、前の席から舌打ちが聞こえた。
「ちっ、リア充どもが、朝っぱらからイチャイチャしやがって。
だいたいなんで、俺じゃねえんだよ……俺は主人公だろうが」
そう言って彼は席を立って立って教室から出て行ってしまった。
あいつが言ってる意味は全く分からないが中二病かな?
「別にイチャイチャは、してないと思うんだけどな」
俺がそういうと広瀬君が苦笑していった。
「いや、はたから見たらいちゃついてるようにしか見えないと思うよ」
剛力君もこくこくうなずいている。
「僕もそう思うよ」
それに対して広瀬君が突っ込む。
「いや、イチャイチャには剛力君が混じってるんじゃないかな?」
「え? 僕、男なんだけど」
「俺が秦だけにって?」
俺がそういうと教室が一瞬シーンと静まり返った。
「すまん、思いきし、すべった」
俺がそういうと東雲さんが冗談めかして言う。
「あー、ほんと寒くて、凍え死ぬかと思ったっしょ」
そんなアホなことを言っているうちに予鈴が鳴って、皆はそれぞれの席へ戻り、前の席の男子も席へ戻ってきた。
名前は確か羽賀海斗だったかな?
まあ、さすがにクラスメイト全員と仲良くできるとは思ってないが、真ん前の席の男子に嫌われるのは少々気まずいものがある。
ただ、あっちは俺を敵視しているような雰囲気だから、今下手に声をかけても逆効果だろう。
こういう時はしばらく接触しない方がいいと思うが、どうかな?
”逆行転生対象αの逆行転生対象βヘイト値の増大を確認。
逆行転生対象αの行動への注意を要します”
なんだ? 以前どこかで聞いたような気がするが……
それはともかくどうも俺は、同性相手だと好かれる場合と、嫌われる場合の差が激しい気がするんだが、こればかりは仕方ない。
異性だけでなく同性とでも仲良くできることを恨めしく思うやつはどうしてもいるしな。
そんなこんなで昼休み。
今日の飯はどうするかと、取り合えず学生食堂か購買部に行こうかと、席を立って教室を出ようとしたとき、ふと女子がノートに何かを書いているのが見えた。
「それって毀滅の刃の我妻善次?
ちょうどアニメが始まったよね」
「ふぇっ!?」
イラストを描くことに集中していたのか、俺が声をかけてようやく、俺が見ていることに気がついたみたいだ。
「あ、あ、あの」
「ん? それにしても上手なイラストだね。
俺は絵とか得意じゃないからすごいと思うよ」
「すごい、ですか?」
「うん、えっと……」
俺は自己紹介の時に聞いたはずの彼女の名前を思い出そうとした。
「確か新發田さんだっけ?」
「はい、私、新發田眞百合です」
「漫画のほうも読んでるの?」
「あ、はい、週刊少年ホップのコミックも読んでます」
「俺は最近、ヤングホップの”かぐや姫は告らせたい”とか”エンパイア”とか”君のことが大大大大大大好きな100人の彼女”とかが面白いと思うんだよね」
「かぐや姫のアニメは、冬アニメでやってましたよね」
「そうそう、最終話のあの花火のシーンは最高だよね」
「私もそう思います。
あんなことを現実にされたら、絶対好きになっちゃいますよ」
「あ、ちなみに俺は秦彰浩。
自己紹介でも言ったけど、漫画やラノベ読むの好きだったりするんで、同じクラスに同じ趣味の人がいてよかったよ」
「実は私もなんです。
まわりの人はアニメ見ない人がほとんどみたいですし」
「あ、ごめんね。
このままだと昼めし食いそこなうんで、また話をしようぜ」
「あ、ええ、それじゃあ、またです」
オタク同士でも、細かいところで好きなものが違っていて、話が合わないことも実は多いんだけど、新發田さんとは話が合いそうでよかったな。




