感謝の気持ちは形にしないとなかなか伝わらない
さて、ふみちゃんへの誕生日プレゼントのアドバイザーは九重さんに頼むことにした。
ただアドバイスしてもらうだけで、こちらからは何もお返ししないのも何なので、何かお礼を考えておかないといけないな。
そういえば中垣内には、動画撮影でだいぶ世話になってるし、なんかお礼の品でもそろそろ買っておくかな。
もらって困るものではなく、価格的にそんなに高くはないけど、学生にとってはそこそこ高価に感じるものがいいと思うけどどうするかな。
俺はパソコンで”ギフト”と入力して検索をしてみる。
そしてなんとなく目についたものがあった。
それはコンビニで使えるちょっとお高めなアイスクリームであるハーゲ〇ダッツ各種1点との引換券で、コンビニでこれを提示すればバニラ・クッキー&クリーム・グリーンティー・ストロベリー・マカデミアナッツ・ショコラデュオ・クリスピーサンド ザ・リッチキャラメルのいずれか1つと交換可能というものだ。
今は夏だしちょっとお高めのアイスクリームなら嫌がられることはないだろう。
値段も一枚税込351円だから懐に厳しくはない。
俺は近くのコンビニへ行ってハーゲ〇ダッツ各種1点との引換券のギフトカードを2枚と一緒にコーヒーの引換も2枚買った。
あとは100均でラッピング用の包装紙とリボンを買い、ギフトカードを包装紙で包んだ後リボンをななめ掛けにしてそれっぽくしてみた。
まあ、こんなもんでいいかな?
そして俺は中垣内へSNSでメッセージを飛ばす。
『明日の放課後また撮影するけどそっちは大丈夫?
今回も俺とお前だけで撮影しようと思うんだけど』
メッセージを入れるとレスが即帰ってきた。
『大丈夫だよー。
今回も二人だけなんだ』
『ああ、今回の内容も夏休み中の活動についてだ』
『了解よ。
じゃあまた明日ね』
というわけで翌日木曜日の放課後。
いつものように家庭科実習室を使って動画を撮影する。
「さて、じゃあまあ今日も俺とお前でグダグダしゃべりながら、高校デビューに関しての話を中心にして撮影していくぞ。
SNSメッセーシで送った通り今日は夏休み中の活動についてだ」
「うん、こっちはいつでもオッケーだよ」
「よし、じゃあ始めるか。
さてさて、童貞のケンジと」
「処女のオトメのコンビで送る」
「グダグダ高校デビューチャンネルー。
さて、今日は夏休み中の活動についてだ。
まあ、ざっくりと大まかなアドバイスなどをしていこうと思う」
「夏休み中の活動についてのアドバイスって例えばどんなこと?」
俺は苦笑しながら言う。
「前回までは夏休みの宿題のやり方や生活のしかただったが、今回は少し学生らしく異性との夏休みイベントを楽しく起こすためのアドバイスってとこだな」
「異性との学生らしく夏休みイベントを楽しく起こすためのアドバイス?」
「そうさ。
あ、とりあえずその前に、とりあえずオトメへの感謝の気持ちだ。
これを受け取ってくれ」
俺がそう言いながら昨日買ったハーゲ〇ダッツ各種1点とコーヒーの引換券が入ったラッピングされている封筒を見せると中垣内は驚いたように言った。
「え、なんで?」
「このチャンネルが盛り上がったのもお前さんが一緒に動画に出てくれたからだしな。
だからこれはその感謝の気持ちを表したものだと思ってくれ。
まあ、実際は大したもんじゃないけども」
俺はそう言って封筒を手渡した。
中垣内は嬉しそうにそれを受け取ってくれた。
「なにかしら?
今開けて中身を見ても大丈夫?」
「ああ、それは別に平気だ」
俺がそういうと中垣内はリボンを外して封筒の中身を確認した。
「コンビニのちょっとお高めなアイスクリームとコーヒーの引換券ね。
悪くないじゃない」
「そう言ってもらえると助かる。
今の季節だとケーキとかを学校に持ってくるのは難しいし、アイスクリームやチョコレートなんかは溶けたりするからな。
その点でコンビニの引換券なら、食べたいと思ったときに近くにあるコンビニで手軽にアイスクリームが交換できるし悪くないかなと思ったんだ。
本当いつも一緒に動画撮影に付き合ってくれてありがとうな」
俺がそういうと中垣内は少し照れたように顔を赤らめていった。
「ベ、別にいいわよ。
私だって楽しいもの」
中垣内の答えに俺はうなずいて答える。
「ああ、そう思ってくれるのを確認できたのはありがたい。
人間行動や言葉で表さなくても思ってることなんて通じるだろうって考えがちだが、実際にはそんなことはないことのほうが多いからな」
「まあ、それはそうよね」
「なんで、友達の誕生日とかにはちゃんとプレゼントと一緒に誕生日おめでとうって伝えたりするのは大事だと思う。
同じようにクリスマスやバレンタインなんかにプレゼントをもらったらちゃんとお返ししたり、普段でも折を見てちょっとしたプレゼントを贈ったりしておいたほうがいいとおもうんだ。
バレンタインとかで義理チョコをもらってもお返しもしない男も多いけど、そういうのはやっぱだめだと思うんだが、逆にちゃんとお返しをするとかの行動を地道に積み重ねておけば夏休みとかにお出かけみたいなイベントもできるってわけだ」
「まあ、それはそうよね」
「まあ、親しさや相手の好みに合わせたプレゼント選びも大事だけどな」
「それはそうよね。
あんまり知らない人にいきなりプレゼントとか言われても怖いし」
「まあ、あと夏休みに限らないが誰かを遊びなんかに誘う場合に、相手が女性だと何か月も先まで手帳に予定がぎっしり入ってるとかもよくあるから、なるべく早めに相手の予定を聞いたりして空いている日を抑えておいたほうがいい。
花火大会だとか夏祭りだとかホタル観賞だとかイベントの日にちが決まってるようなものはなおさらな」
俺がそういうと中垣内はジト目で俺を見ながら言った。
「あんたってそういうところは本当に手馴れてるわよね」
「別にそんなことはないぜ」
「ふーん……まあ、言ってること自体は至極全うだと思うけど、なんかか納得とくいかないのよね」
「そう言われても困るんだがな。
ま、いずれにせよ”感謝の気持ちは形にしないとなかなか伝わらない”ってのは俺としては事実だと思ってるよ」
「まあ、それはそうよね」
「前も言ったが、基本的には一度きりの人生だしな。
後悔のないように行動したほうがいいと思うんだよ。
特に学生のうちはさ」
そんな感じで今回の動画撮影は終わった。
まあ今回もそこそこいい感じでまとまったんじゃないかな。