洋裁っていうのは思っていた以上に面白いもんだな
さて、今週の土日の文化祭で、いろいろあって不機嫌になっていた文ちゃんだが、何とか機嫌は直してくれたようだ。
その代わりに来週は土曜は文ちゃんとデートで、日曜は剛力君と買い物だけどな。
明日は期末テスト期間前の部活ができる最後の週の月曜日だし、何とかホットパンツを今週中に完成させて、コミケのときに見栄えがするコスプレ衣装が出来上がってるようにしたいな。
というわけで翌日の放課後。
俺・西梅枝さん・東雲さんのいつものメンバーで家庭科実習室の被服室に向かった。
「今日もミシンでお裁縫かぁ」
東雲さんがそういうので、俺は苦笑気味に言う。
「ま、家庭科部だから料理だけじゃなくて裁縫や手芸も部活動の範囲だしね」
俺がそういうと東雲さんがちょっとむくれつついう。
「私はおいしいものが食べたいのにー」
「まあ、確かに家庭科といえば料理ってイメージだけどな。
でもミシンを使って何かを作り上げるのも楽しいと思うけど」
俺がそういうと西梅枝さんがうなずいてくれた。
「はい、洋裁は楽しいですよね」
そして、大仏さんと雅楽代さんは今日もすでに来ていた。
ミシンの用意なども済ませてあるようだ。
「いつもながら早いですね、大仏さん、雅楽代さん」
俺がそういうと大仏さんが、笑顔で答えた。
「こんにちは、私たちは先輩ですから。
今日もミシンなどの動作の確認はしておいたので、早速と先週、日暮里で買ってきた生地を使ってそれぞれが作りたいものを作りましょう」
俺はうなずいて言う。
「いつもすみません、ありがとうございます。
じゃあさっそく始めますね」
というわけで早速ハーフパンツの制作に俺達は取り掛かった。
まず型紙を用意し、俺の体のサイズに合うように調整する。
それから生地の上に型紙を置いていく。
パンツ本体用にポケット用、ベルト用の型紙を生地の上に、大きいパーツから置いていき、余りのところでポケット用布やベルト用布を置いてから、型紙の上に重しを載せて、裁断ばさみで型紙に沿ってカットしていく。
パンツ本体用布にポケット用布を縫い、縫ったところを開いて、アイロンをかけ、ポケット口に端から5mmほどのところにステッチをかけて布井がほつれないようにする。
パンツ本体の前パンツ、後パンツの股上を縫ってつなげればなんとなく形ができてきたな。
「うん、なんとなく完成が見えてきた」
俺がそういうと東雲さんが感心したように言う。
「へえ、結構簡単にできるもんだねぇ」
「そうなんだよな。
洋裁っていうと難しいってイメージだけど、意外と簡単だったりして面白いぜ」
俺がそういうと東雲さんが小首をかしげつついった。
「それならあたしにもできるかなぁ?」
「最初はきんちゃく袋とか、何なら雑巾とかの簡単なものからやっていけば大丈夫だと思うぜ。
こういったことは勉強とかと同じでうまくできれば自信もつくし、コツみたいなのものもなんとなくわかってくるもんだし」
そしてトートバッグを作っていた西梅枝さんをみるとかなり仕上がってるがめちゃくちゃうまい。
「西梅枝さんはすごいな。
料理もそうだけど上達の速度がめっちゃ早い」
俺がそういうと西梅枝さんがはにかみながら笑顔で答えた。
「私は器用貧乏なだけですよ」
「でも全体的なレベルが高めだしな。
俺はスポーツとか歌とかはダメダメだし」
俺がそういうと東雲さんがうんうんうなずきながら言う。
「秦ぴっぴはできることとできないことの差が極端だよね」
「いや、そこ真面目に答えない」
そんなことをやっていたらだいぶ時間がたってしまった。
俺たちに大仏さんが告げる。
「今日はここまでにしておきましょう」
俺はうなずいて手を止めた。
「こまごました作業をするとやっぱり時間がかかりますね。
でもいいところまではできたんで水曜日には完成しそうです」
俺がそういうと西梅枝さんも続けて言う。
「私もあとはファスナーをつけるだけなので今日は切り上げても大丈夫です」
そういう西梅枝さんのトートバッグはファスナーが必要なければもう完成してるように見える。
「うーん、やっぱ才能とか器用さの差なのかなぁ」
俺がそういうと西梅枝さんは俺をフォローするように言った。
「私の方は見ての通り四角いまっすぐなトートバッグですから、裁断とかミシン縫いにはあまり手間がかかりませんでしたから」
「まそういうのもあるのかも?」
そんな感じでハーフパンツは簡単な方とはいえ、やはりどれなりに手間はかかることもわかった。
毀滅のコスプレ衣装を作るなら結構日程的な余裕を見ておいた方がよさそうだな。