平穏な日 15
ラリーアとサリダの想い
「さて、ここからが本番ですからね」
い、いったいこれ以上何が有るって言うんだ?
ラリーア様の言葉に身構えてしまう。
アルーラの事でもかなりの出来事なのに、今晩は勘弁してほしいと言いたいところなんだけどなぁ。サルーダ様もここに居るって事は関係がある事なのか?
「そんなに身構えなくても大丈夫ですよ? ちょっと確認したいだけですから」
「確認?」
「はい、でわ、参ります」
「え?」
「フェル、あたい等の攻撃を受けるのじゃ!」
「え、えぇ!?」
ラリーア様とサリダ様が同時に身構え、ラリーア様からは精霊が呼び出され、サリダ様は自分の手の先に魔力を集め半透明な大型の剣の形を作り出して僕に向けてきた。
「お婆様!?」
「サリダ様! 何をされるんですか!?」
二人の突然の攻撃態勢にアルーラとルールディさんが驚き叫ぶ。
「あなた達は黙ってなさい!」
「そんな訳にはいきません!!」
アルーラが、僕の前に立ち庇うように両手を広げ立ち塞がると、ラリーア様を睨みつける。
「そこをどきなさい!」
ラリーア様も、一歩も譲らず呼び出した精霊を前面に押し出す。その精霊は風を纏う白き人型の精霊、しかも頭上には銀色のティアラが輝いていた。
「ウィンディエレメン・・風の精霊王、御方を呼び出されて何をしようというのですか?!この周辺一帯を塵に返してしまわれるおつもりですか!」
やはり、そうか。この凄まじい圧力、部屋の中を風が荒れ狂う。ラリーア様、最大最強の精霊魔法。
それに、サリダ様のあの剣は・・
「サリダ様! 何故、ファントムパラシュを顕現なさるのですか!」
「ルール、決まっているだろ? 必要だからじゃ」
自分の背よりもはるかに大きな剣の姿を成すものを、軽々と片手で持ち振り上げるサリダ。
あれが鉄の剣ならば、どんな屈強な戦士でも、支援強化が無ければ持ち上げることすらできないだろう大きさだ。
しかしその存在は半透明でガラスの様に壊れやすそうに見えるのだが、その周囲を這う様に飛ぶ青い放電が、それを普通の剣でない事を物語っていた。
ファントムパラシュ、幻想剣。サリダ様の最強攻撃で、振り下ろされたその先には空間に歪を作り出すとまで言われているものだ。
「アルーラ! そこをどきなさい!」
「嫌です!! フェル君は私のパートナー! 大事なパートナーだから、たとえお婆様でも、フェルに傷つけようと考えているなら全力で阻止します!」
アルーラの気持ちが僕に伝わる。とても嬉しかった。
「良い、覚悟ですね。あなたの本気見せてもらいました。でもここは私達とフェル君の問題なんです!」
「どういう事?」
「アルーラ! そこをどいて」
「え?」
僕の前に立ち盾になってくれている、アルーラの肩に手を置きこちらに向かせた。
「大丈夫、心配しないで、僕の後ろに居てくれるかな」
「え、でも! お婆様達、あれは本気よ? 冗談なんかでウィンディ様を顕現させるなんてありえないもの!」
確かに、二人の表情は真剣そのものだ。だから僕は答えなきゃいけない。これは彼女達が僕に向けた
「ラリーアとサリダに僕は答えなきゃいけなくなったみたいなんだ」
「ラリーア? サリダ? フェル君・・」
僕は、アルーラを後ろに下がらせ一歩前に出る。
「ラリーア! サリダ! 準備は出来ているよ。さあ、来い!!」
「「!!」」
「・・・・サリダ! 行くわよ!」
「嗚呼! 全力じゃ!!」
ラリーアから僕に向け強烈な風の渦が発生し、ウィンディエレメンの咆哮を放とうとその中心に向けられる。
サリダのファントムパラシュが一段大きく膨れ上がり、放電が部屋中に広がる。
「ルール! 部屋を取り囲むように防御結界!」
「! でも!!」
「いいから!」
「は、はい!!」
ルールディさんの言葉をきっかけに、二人の魔力が最大に膨れ上がった。
「お覚悟!!」
ウィンディエレメンの咆哮が空気を裂くように放たれる!
振り上げられたファントムパラシュが放電を纏いながら振り下ろされる!
「フェル君!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「「は?」」
部屋中に本や 絵画、壊れた調度品が散乱し、先程までの異様な状態であった事を物語っていたが、その異常な状態が一瞬で消えてしまっていた。
ただ、ラリーアのウィンディエレメンも、サリダのファントムパラシュも、その姿は今は無く、ただ二人が呆然と立ち尽くしているだけだった。
「フェル、君?」
僕にしがみつくアルーラに、
「ね、大丈夫だったでしょ?」
と答えてあげた。
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