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平穏な日 13(アルーラの決意)

アルーラは良い女の子

街から戻った、アルーラは夕食もそこそこに、早めの入浴を済ますと自室に篭ってしまった。

何する訳でもなく、ベッドの上に寝転がり天蓋をただボーッと見つめていた。


コン、コン。


ドアをノックする音がした。

しかし、気もそぞろといったアルーラの耳にはその音が届くはずもなく、返事をしないまま時間だけが流れるばかりだった。


コン、コン。


2度目のノック。

それでも気づかないアルーラ。


・・・・・・・・・・・・・


「何、ボーッとしているの? いつもの調子はどこに行ったのかしら?」


突然、自身の耳元で声がしたので、反射的に聞いた耳とは反対へと飛び退く。


「な! 何?! え? お婆様?」


アルーラはベッドの上に両手を付きながら、少し膨れっ面のラリーアの姿を確認した。


「お婆様! 突然ビックリするじゃないですか! 入る時にはノックぐらいしてください!」

「あら? 私はちゃんとしたわよ?」

「え? うそ」

「嘘、言ってどうするの? だいたい私が接近するまで気付かないのだから、ノックも気付かないわよ」


確かに、お婆様がベッドの上に上っていた事さえ気付いていなかったのだ。ノックも聞こえるはずがない。

その事が余計にアルーラの心を沈ませてしまった。

俯くアルーラ。今にも泣きそうな表情だった。


「アルーラ、あなたに確認したいことがあるの」


そんなアルーラにはお構いなしで、少し強い口調で訪ねるラリーア。

それに反応してアルーラの身体が微妙に後ずさる。


「あなた、その態度は何? フェル君が支援属性しか持っていないと聞いてからずっとそんな調子だけど、それって同情? それとも哀れみ? 期待外れで幻滅したの?」

「そんな・・・」


ラリーアの口調は怒っていた。それを感じたアルーラは何も喋らず黙りこんでしまう。


「情けないわね。まさか私の孫がその程度だったとは、思わなかったわ。あなたの母親よりも才能と強い心を持っていると思っていたのに、買い被り過ぎたかしら?」


情け容赦無い言葉を投げつける。

その言葉をただ黙って聞くアルーラだったが・・・


「違う・・・」

「ん? 何が?」

「違う!!」

「何が違うと言うの?」


アルーラは顔を挙げることなく俯いたまま、ベッドの白いシーツを両の手で強く握りながら叫ぶ。


「確かに、同情はしているかもしれないわ! でもそれは今後、フェル君を最弱と言って蔑む者が現れるだろう事が嫌だったからよ! あんなに真面目に修練を積んで、あんなに魔力操作が上手くて、あんなに才能があるのに、支援属性だけなんて・・・どんなに努力しても最弱のレッテルを貼られるのよ?!」


顔を挙げ、大粒の涙を流しながらも、ラリーアを強く見つめるアルーラ。


「誰がそんな事を言うの?」

「誰もがよ!」

「誰がそんな事決めつけるの?」

「皆よ!!」

「それじゃあ、あなたもなの?」

「私は違う!」

「どう違うの? あなたも最弱だと思っているから、そんな風に思ってしまうのじゃない?」

「・・・わ、私は・・」


言葉に詰まるアルーラだったが、視線はラリーアの目から離さず、見続けていた。


「それでは言い方を変えます。あなたはフェル君とこれからどう有りたいと思うの? 見捨てるの? それとも同情して一緒に居てあげるの?」


ラリーアのその言葉を聞いたアルーラは、口の端を上げ笑ったように見えた。


「お婆様、何を言っているんですか? 私がどうしてフェル君を見捨てるなんて考えがでるんです? それに同情? 上等じゃないですか! 私は、いっぱい!! フェル君に同情して、一緒になって、みんなに笑われてやるわよ!」


アルーラは自分の思いをラリーアにぶつける。


「そうよ! 同情のどこが悪いって言うの! 同情も愛情の一つよ! それにフェル君の才能は私だけが知っていれば良いのよ! 他の誰も知らなくても良いの!! 始めに感じたあの感覚、私の身体の芯の部分を刺激し、魔力の全てを把握される心地よさ! これ以上ない最高のパートナーになれるってそう感じたの! 私は自分の感覚を信じる! フェル君はもの凄い魔導士になるって信じている!!」


ハア、ハア、ハア、ハア・・・・・・


一気にまくしたて言い切ったアルーラは、肩を激しく上下させながら息をしていた。

そんなアルーラをラリーアは真剣な顔のままじっと見つめていたが、スーッと肩に入っていた力が抜けたかと思ったら、顔の表情も柔らかくなった。


「生意気な事を言うようになったわね?」

「ハア、ハ、お、お婆様の孫だもの・・・」

「それが生意気って言うのよ・・・でも、ありがとう」

「え?」

「フェル君の事をちゃんと感じていたんだね? 嬉しいよ。それでこそ私の孫よ」

「どういう事?」


アルーラはお婆様の言葉の意味がよく分からなかった。


フェル君の才能をちゃんと感じたことを喜んでいるの? それじゃあ、お婆様も感じていたって事? でも今の言い方は前からそれを知っているようにも聞こえるけど・・・


「アルーラ! 支度しなさい。今からフェル君のお部屋に行くわよ」

「え? 今からですか?」

「そうよ、そこで大事なお話があるからね、そんな寝間着姿じゃなくてちゃんとした服装に着替えるのよ」


今からフェル君のところに?


アルーラは戸惑いながらも、着替え身支度を始めた。

そして恰好を整え終えると、ラリーアと共に部屋を出るのだった。


読んでいただきありがとうございます。

また読みに来てください。

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