【オープニング2】シリア(後編)
最終ミッション:塔(ⅩⅥ THE TOWER)
魔法学園都市の底に潜む、時間と記憶を操る『邪神:オメガバージェス』を倒し、魔法学園に平和を取り戻せ。
このゲームは、GM=奥沢さんです。
3人のPLが、1PL1シーンずつ、オープニングのシーンを演出していきます。
次のオープニングは、GBさんのPC:シリアです。
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奥沢:西の地平線、彼方に太陽は退き、空は急速に暗くなっていく。夜空には怖いくらいの星が瞬き始めていた。
奥沢:そんな時間帯に、シリアは工房に戻ってきました。
奥沢:ここは、師匠が構える辺境の工房の前です。師匠はここで魔導機術と古代遺跡に関する研究を行っていました。特に古き封印された神々、人間から神になった存在について、彼は深く研究していたようです。
奥沢:あなたが、その工房の近くまで辿り着くと、ドアの向こうから激しく争う音が聞こえます。えー、具体的に言うと――工房の一部が吹き飛びます。
PL一同:笑
まほそ:どーん!
狼子:派手!
奥沢:いや、だって、魔導機術ってグレネードとか使う魔法だから!
奥沢:グレネードがどーん!って鳴ったり、銃がどん!どん!って鳴ったりとかね、すごい激しい争いの音が聞こえてきます。
シリア(GB):じゃあ、一瞬、師匠がまたいらんことしたかなって思うんですけど。
狼子:師匠、普段からそういうタイプですか笑
シリア:はい。そういうタイプのひと笑
シリア:音が鳴りやまないので、「これは違うな」と血相を変えて、そちらへ向かっていきます。
奥沢:シリアが音の出所であろう部屋へ近づくと、聞こえていた争いの音が突然止んで、耳が痛いほどの静寂が襲ってきました。
シリア:構わず、部屋に駆け込みます。
狼子:(強い……!)
奥沢:跳び込む? 特に警戒もせずに?
シリア:はい!
狼子:(お返事が力強い!)
まほそ:笑
奥沢:OK、室内でまず目についたのは、作業台に寄り掛かるようにして伏せている師匠。そしてその横、彼の上に覆いかぶさり、彼の顔に手を当てて何事かをなそうとしている怪しげな帽子を被ったローブの人物が立っていました。
シリア:えっと、この時点では、使える技能は現在時制のキャラシートより低いんですよね?
奥沢:そうですね、判定値を下げて、使える魔導機術の技能の上限を1レベル下げましょう。
シリア:この時点の私は、荒事にもそんなに関わってないし、今回も遺跡の探索ってことで丸腰でしょうから……。
シリア:工房の壁に立てかけてあったモップを取って、構えます。
シリア:「師匠から離れろ!」
ローブの人物(奥沢):「おやおや」
ローブの人物:「隠れておればいいものを。小娘が飛び込んできたか」
ローブの人物:「残念だな、ジェイナス。お前の持っている記憶さえいただけば、見逃してやろうと思ったものを」
奥沢:という訳で、この正体不明の存在があなたに対峙します。戦闘ですね。
シリア:きた……!
狼子:ひぇー!
奥沢:戦闘は、ソードワールドのシステムに則って、敵の正体を見抜く知名度判定、先に攻撃する側を決める先制判定、攻撃が当たるかどうかを決める命中(回避)判定、そして攻撃の威力を決めるダメージ判定の順に行います。
奥沢:相対距離は室内、敵は1体です。
奥沢:ダイスを出してください。
狼子:(うー、他PLのだけど、初戦闘どきどきする!)
奥沢:まず、知名度判定を行ってください。セージ技能は……ないね?
シリア:ないです。
奥沢:それでは、2d6(6面ダイス2個)の値で判定してください。
シリア:よっし……(ダイスコロコロ)そこそこいった!
奥沢:ダメです。全く分かりません。
シリア:ですよね(苦笑)。
奥沢:相手の正体も、弱点も見抜けません。
奥沢:次に先制判定を行います。シーフ技能、あるいはウォーリーダー技能はありますか?
シリア:ありません。
奥沢:じゃあ、これも2d6で。目標値は12を超えるので、あなたが6ゾロを出した場合のみ、成功です。(※1)
シリア:……(コロコロ)ダメです!
奥沢:それでは正体不明のローブの人物が先制攻撃になります。
奥沢:ローブの人物は、宙に浮いているように見えます。剣を抜き、恐るべき速度――具体的に言うと、よく鍛えられた冒険者の全力疾走くらいの速度であなたに接近し、攻撃を仕掛けてきます。
まほそ:はやっ!こわっ!
シリア:死ぬ……!
奥沢:手にした剣は禍々しく、真っ黒な刀身に赤いラインが走っています。毒々しい感じね。
奥沢:では、ローブの人物の攻撃判定を行います。彼の持つ技能のうち魔力撃の技能を使って、ダメージを加算します。
シリア:もうダメだ……。
PL一同:笑
奥沢:命中力は……(コロコロ)おっ、いったなぁ。じゃあ、シリア、回避判定をどうぞ。
シリア:はい。えっと、過去分のマイナス判定を入れて……これは無理では?
まほそ:これも、成功は6ゾロだけだね。
シリア:ですよね……(コロコロ)はい、無理です!
奥沢:じゃあ、まったくかわせてないので、ダメージ判定……(コロコロ)。ここから防御力を引いて、ダメージ値を確定してください。
シリア:結構やられました! 残りHPが半分切ってる……まだ生きてるけど。
奥沢:ちなみに、今のは毒の特殊攻撃ですので、このローブの人物の攻撃でHPが1点でも引かれた場合、毎手番終了時にHP3点を失うことになります。
狼子:ずるい!
奥沢:知名度判定に成功してたら、攻撃特性が見抜けたんだってば。
奥沢:では、GBさん。あなたの手番です。どうします?
シリア:えっ……もう既にだいぶ痛いんですよね。
一同:笑
シリア:あっこれは無理だって考えましたけど、師匠はそこで倒れてるんですよね?
奥沢:はい。生命力や精神力を奪う攻撃を受けていたようですが、あなたが途中で乱入したことでその攻撃が途切れたので、息はあります。
シリア:あー、なるほど……。
シリア:何とかして師匠は助けたいけど、私が死にそうです。
一同:笑
シリア:こういう場合どうするかなぁ?
シリア:んー……助けを呼ぶ? なんか狼煙を上げるような魔法なかったかな?
奥沢:これはオープニングなので、多少例外的な運用も認めますよ。何しろ、これからセッション始まるとこなので、ここで死なれたらお話が進まないですし。
奥沢:例えば、魔導バイク呼び出して逃げるとか。
シリア:あ、魔導機術にオートモビルありましたね! バイクで師匠拾ってぶおーんと、逃げれます……か?
奥沢:そうですね、まあ……やってみてもいいんじゃないでしょうか。
まほそ:召喚したバイクで走り出す、だ!
一同:笑
シリア:じゃあ、オートモビルを使います。
奥沢:分かりました。このセッションでは、味方など抵抗していない相手にかける魔法について、発動判定は省略しますね。時間とMPがもったいないので。
奥沢:では、シリアの前に、問題なく魔導バイクが召喚されたとしましょう。
シリア:さあ、師匠をどうやって拾おう。うーん。
シリア:じゃあ、ぎゅーんと格好良くドリフトしながら師匠を抱え込みます。
奥沢:分かりました。それじゃ、シリアが逃げ出す分には判定は必要ありませんので、師匠を拾う分について判定を行ってください。
シリア:やっぱり。
奥沢:冒険者レベル+筋力ボーナスに2d6で。
シリア:はっ……(コロコロ)よっしゃ! 高い!
奥沢:すごいなぁ。じゃあ、シリアは火事場の馬鹿力を発して、窮地を脱し、工房を抜け出します。
シリア:やった!
奥沢:そうすると、穴があいたアトリエの屋根から、先ほどの正体不明のローブの人物が、真っ黒な翼を広げて飛び上がっていきます。
奥沢:その速度は相当速く、うっかりするとバイクも追いつかれてしまうようなぎりぎりの速度です。
狼子:(ヤバい、もう一戦……?)
奥沢:ところが、ローブの人物は、シリアが必死に逃げていくのを見て、特に追おうとはしません。満足げに笑っています。
ローブの人物:「面白いことになったな」
ローブの人物:「いいぞ、ジェイナス」
ローブの人物:「お前の行動が、すべて裏目に出ることになる」
奥沢:そう言って哄笑をあげると、いずこかへと飛び去って行きました。
奥沢:シリアの腕の中には、意識を失い苦しげな息をしているジェイナスがいます。
シリア:えっ、じゃあ、師匠を助けられるところへ連れて行って治療を……。
奥沢:どころじゃなくて、あなた今、毒を食らってますからね?
シリア:はっ! そうだ、忘れてた!
一同:笑
シリア:えー、じゃあどうしよ。えーと、直すヤツ……ないな。
奥沢:アンチドーテポーションとかないですか。
シリア:それはないですね(きっぱり)。
奥沢:いや、持っとけって言ったじゃねぇか!(※2)
シリア:そうでしたっけ?
奥沢:えー? じゃあ、どうしますか。工房になら、何かあるでしょう。
シリア:あ、じゃあそういうことにしましょう。奴が去っていったのなら、工房は安全だ! 取って返して、師匠の持ち物をあさって、毒消しを使います!
一同:笑
奥沢:じゃあ、シリアは窓や屋根が吹っ飛んでボロボロになってる工房に戻り、棚の中から何とか生き残ってたアンチドーテポーションを見付け、飲み込みます。
奥沢:人心地ついたところで、師匠の姿をよく見ると、その手には帽子が握られていました。例のローブの人物がかぶっていた怪しげな帽子です。
シリア:この後、師匠が記憶を失っていることに私は気付きますよね。師匠の記憶と共に消えた自分の秘密を知るには、あの正体不明の人物を探し出なくては。
奥沢:はい。その帽子についている模様は、どうやら魔法学園都市の高位魔導士のものによく似ているようです。はっきりとは断定できませんが。
シリア:じゃあ、その帽子について調べるために、魔法学園都市に向かいます。
シリア:えっと、きっと魔導機術である師匠は地元の人にも信頼されてるはずなので。
シリア:師匠の面倒は近所の人にお願いして、私は師匠の記憶を戻す旅に出ます。
奥沢:では――こうして、シリアは旅立ったのであった。
奥沢:それが、オメガバージェスとの長い因縁の幕開けとなることも知らずに……。
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一同:ふう……。
奥沢:と、いうオープニングとなりました。では、GBさん、経験点を加算して、シーン効果を読み上げてください。
GB:えっと……「ゲーム終了まで回避力にプラス」ですね。
狼子:すごい!
GB:やったね!
まほそ:これは大きいなぁ。回避力半端ないね。
奥沢:うん……じゃ、最後のオープニングはコミカですね。
狼子:えっ……はい!(ついに私だ!)
――と、いうことで、次回はオープニングのラスト、私こと狼子のPC:コミカが登場です。
※1:2個のダイスが2つとも6であること。ファンブルの逆で、6ゾロは自動成功となりますので、目標値に届かなくても大丈夫なのです。いわゆるクリティカル。
※2:キャラメイクの時に言われましたが、GBさんは完全に見落としてたようです。そんなうっかりなところも魅力。