表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/20

【本編7】イグニス、涼しい顔で腹に収めておく

奥沢さんのマスタリングでプレイするTRPG。

『塔(ⅩⅥ THE TOWER)』のカードに象徴される、時間と記憶を操る『邪神:オメガバージェス』を倒し、魔法学園都市に平和を取り戻せ!

本編7シーン目、プレイヤー側の最終シーンは、まほそさんのPC:イグニスのシーンです。

奥沢:PLの設置した最後のカードは……?

狼子:(そろそろとめくる)

挿絵(By みてみん)


奥沢:ここで、マジシャンか。

まほそ:(無言で手を上げる)


(場面説明:図書館、狂気の研究、アイデアが湧く)


まほそ:アイデアが湧くっていうのはいいよね。


GB:魔神はかつて、アルファをいらんことに使われんように封じ込めたんでしたね。

まほそ:そう、滅することまではできなかったんでしょうね。愛してるから。

GB:でも、その恋人が、今や、ギルベリオスらにいいように使われてる。

まほそ:今の状態は、アルファだった彼女への冒涜だもの。

まほそ:だから、彼女に力を与える存在は許せない。ループは認めない。そういう思いに至ってる。


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


イグニス(まほそ):「子狼よ。お前が取り戻した記憶を、オメガバージェスらはまた狙ってくるやもしれん」

イグニス:「しかし、屈するな」


コミカ(狼子):この、心が弱い狼になんたる無茶ぶり!

一同:笑


奥沢:じゃあ、シリアの中にある記憶の存在に、イグニス自身に辿り着いてもらいましょうか。

イグニス:本当のアルファがどこにいるのか、イグニスは知っておきたいよね。せっかくの伏線だから。

奥沢:じゃあ、記憶を遡ることで、イグニスはその記憶を確認することができます。

奥沢:判定は、知力ボーナス+冒険者レベルで。


イグニス:……(コロコロ)高くはないけど。

奥沢:ああ、でも知力ボーナスが半端ないから、ちゃんと通ってるよ。


奥沢:イグニスとアルファは、古の時代、封ぜられる前は同じテーマについて、研究をしていました。

奥沢:それは、人の記憶をどうやって後世に伝えられるか、というものです。

イグニス:文字以上に、意味として、ミームとして伝えるということ?

奥沢:そうそう。


奥沢:その研究の中で、イグニスが目指した道と、アルファが目指した道は途中で別れてしまった。

奥沢:アルファは、何度でもやり直せばいい、という結論になった。イグニスは、次の世代にただ伝えることが大事だ、と考え続けた。


奥沢:とは言え、途中までは同じ道で研究をしていたアルファも、「伝える」という観点から、アルファ自身の心の在り方を残しておく研究もしていました。

奥沢:――ということを、イグニスは知っています。自分のメモリーをどこかに遺しておくことはできないか、という研究ね。

奥沢:そのことを思い出したイグニスは、シリアの刻印がその研究のシンボルと同じである――つまり、シリアの持っているのはその時のアルファの記憶である、ということにはっきりと気付きます。


イグニス:おう……。

イグニス:ここでそれか!?

奥沢:なんだよ!笑


シリア(GB):それは、気が付いたイグニスは、私に伝えるんでしょうか?

シリア:私は、この刻印の存在にも、さっき気付いたところだけど。

コミカ:さっきまで気にしてなかったんでしたね。

コミカ:あ、でもループ記憶を取り戻したシリアには、刻印ができたときのことが分かるのでは?


奥沢:時系列的に、それについてはシリアがループから抜け出さない限りは思い出せないね。ループ攻撃を食らうより前に、その刻印を得ているから。

シリア:あー、そうか。師匠が狙われた理由と同じなんやろね。

奥沢:そう、その通り!


シリア:多分、私がループの対象にされた理由と、師匠が私に隠していた秘密は、同じなんですよ。だから、師匠は狙われたんです。

シリア:生まれたときから、そういう対象にされるべき秘密があったんや。その秘密とは何か、それは師匠の記憶を取り戻さな分からんけど。


シリア:コミカの場合は生まれた後、魔狼の巣に放り込まれたところで、ループの対象としてのフラグが立ってる。けど、私の場合は、手の甲に刻印がある段階で、既にループの対象やった。

コミカ:なるほど。天然もののシリアと、養殖ものの僕の違いですね。

シリア:そう、そういう感じ!

一同:笑


イグニス:さっきちらっと思った仮説なんだけど、オメガの中にある空っぽの部分に、もともとおさまってたのがシリアなんじゃないかと思うのね。

奥沢:そう、そうです。


コミカ:もともとアルファだったものが、今生まれ変わってシリアになってるんですね? オメガバージェスよりも、元のアルファに近いのは、シリアなんだ。

イグニス:アルファとしてはシリアの方が近いよね。


コミカ:なるほど。だから、アルファの影が出て来たときにシリアと見間違えて、僕は「あのとき会ったひとだ」って思っちゃったんですね。

シリア:なるほど!

イグニス:繋がったねー!

一同:笑


奥沢:まったく……ようやく気付いたかね!

奥沢:この深遠なシナリオに! でっちあげだけど。

一同:笑


奥沢:さて、イグニスはどうする? 今気付いたこと……つまり、アルファ=シリアだってことを、言うか言わないかだけど。

イグニス:うん、考えてたんだけどさ、このまま……言わずにこのまま、伸び伸びと過ごして欲しいなって気持ちが強いんですよ。

奥沢:あとは、今すぐに使わなくてもいいと思うよ。強い情報だから、ラストバトルで切り札に使ってもいいんじゃないかな。


イグニス:いやまあ、気付いちゃったけどね。あの頃のアルファがここにいるってことには。

イグニス:今度こそ守らなくてはって、決意は強まる。


シリア:私は、自分がアルファだということは知らなくても、さっきからのループ記憶を取り戻したことで、天然ものだってことには気付いてしまいましたね。もしかしたら師匠が大変な目にあったのは私のせいなのかも知れない。

シリア:だから、やっぱり私が師匠を助けなきゃ。


コミカ:それぞれに戦う理由を深めたシーンですね。

奥沢:じゃあ……ここで、最終決戦の場に挑みますか?


シリア:いやいや、待って。そう言えば、オメガバージェスのループ攻撃からどうやって逃れるか考えとかなきゃ。

シリア:私が2人を連れてどっかまで遡るけど、どこまで遡るか……。


奥沢:具体的に言うと、遡るにしても、オメガバージェスがその特殊な記憶を手に入れた後の時間に遡ったのでは、何度遡ってもエンドレスで遡行されてしまうんですよ。

シリア:なるほど。特殊な記憶って……この流れで言うと、私やね?

コミカ:そうでしょう。もう手に入れてるから、オメガバージェスは今ループができるってことですもんね。僕の記憶はまだぜんぜん取られてないので。

奥沢:そうです。手に入れてるから使えるんです。


奥沢:だから、今、2つ分岐ができています。シナリオ的に。

奥沢:片方は、シリアのループが始まるきっかけになったところ。もう片方はもっと古い時間です。

シリア:なるほど。片方は、師匠が襲われた私のループの始まり地点。もう片方は……アルファがオメガバージェスになったとき、か。

奥沢:そう、その通りです。


奥沢:ただし、古い方――オメガバージェスの誕生まで遡るには、必要な情報が揃っていません。

奥沢:なぜならば、今、シリアは自分がアルファであることを知らない、つまり「自分の知っている時間にしか遡れない」という条件によって、アルファの時代まで遡行できないからです。

奥沢:イグニスがフラグを――その情報を止めているから。

イグニス:あ、そういうこと?

奥沢:うん。


奥沢:これ、どっちを解決するかっていう、僕の当初の想定にはない2つ目の選択肢が、今生まれています。とても面白い状況です。

イグニス:そうなの?

奥沢:そうですね。予期せぬ面白さです。


コミカ:でもこれ、イグニスの「シリアには何も知らずに健やかに暮らしてほしい」っていう希望を考えると、口には出せないですよね……

コミカ:(はっと気付いた顔で)――あっ、これ、イグニスの選択によって、三角関係が生まれるんじゃないですか!? そして、それをシリアが知ってしまうと、二つの時間のどちらに遡行するかはシリアの選択――つまり、シリアが選ぶことになるんですね!

奥沢:そうなりますね。


コミカ:だからイグニスのこの悩みとは、イグニスがアルファを取り戻そうと選ぶか、シリアがコミカと幸せになるのを見守るかどっちにするのかってことなのでは!?

イグニス:あ、そういう……!?

奥沢:そうだよ。つまりここは、最初のときにイグニスがアルファと結んだラヴァーズの関係をどうするか、解消するかしないかというシーンなんだよ。


イグニス:そうか……そうすると、やっぱりさっきの決断になるなぁ。

イグニス:だって、自分が縁を結んだ【彼女】は、オメガバージェスになる前のアルファなんだよ。


イグニス:遡行して【彼女】を何とかしようというのは、【彼女】のやり方を否定していた身としては、でけんのよ。


コミカ:おー!(拍手)

奥沢:うぉー!(大拍手)

シリア:そうかー!

奥沢:かっこいいー! これはかっこいい!


イグニス:だから、我に悩む余地などないのだ。(涼しい顔)


奥沢:この思いを、我は墓まで抱えていく訳ですね!

奥沢:OKです! では、このシーンはここまで。


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


奥沢:さて、経験点を加点して、シーン効果を読み上げてください。

まほそ:「知力ボーナスにプラス」ね。


狼子:すっごい!

奥沢:そうか、それはヤバいな……。はよ倒さな。(きりっ)


狼子:わー、イグニスさん、コミカの3倍の魔力になってるんですけど!? よくこれでコミカは恋愛競争勝ち抜けたなぁ。シリアさんを譲ってもいいぞと思って貰うことができたなぁ。

奥沢:面白いからじゃない? 「あいつは面白い。あの茶番、只者ではない」って。

まほそ:「いい茶番を見せて貰ったぞ」ってね笑

一同:笑


奥沢:さて、すべての伏せられたシーンを終えましたので、ついにタワーのカードに到達しました。

奥沢:さっきのシーンで、それぞれに戦う理由を改めて確認しましたから、心も猛ることでしょう。ラストバトル前に経験点が余ってるPCはレベルアップしておいてくださいね。


奥沢:さあ、それじゃ……最終シーン、目的としていた「タワー」の攻略に入りましょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] こうやって読むと、狼子さんがこの時初プレイとはまったく思えませぬ。なんて瑞々しく可愛らしい主人公なんざましょ!! そして、読みものとしてのリプレイを紡ぎ出す手腕、お見事です。 あと、すっ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ