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【本編5】オメガバージェス、闇へいざなう

奥沢さんのマスタリングでプレイするTRPG。

『塔(ⅩⅥ THE TOWER)』のカードに象徴される、時間と記憶を操る『邪神:オメガバージェス』を倒し、魔法学園都市に平和を取り戻せ!

本編5シーン目は、GM奥沢さんの妨害シーンです。

奥沢:次のカード、めくってね。

まほそ:じゃじゃーん!

挿絵(By みてみん)

狼子:ジャスティス!

(場面説明:法廷、異端審問、掲げられた光)


奥沢:はい、これはGMの妨害カードです。

まほそ:ジャスティス、さっきも出てきたよね。(※1)このシーンが終わると、ラスボスも魔力撃激化、得ちゃうの?

奥沢:そうです。このGMシーンを成立させてしまうとね。PLはみんなで阻止しないといけないですよ。

まほそ:あっ、そういうこと。


奥沢:なのですが、さっき判定に失敗したコミカは、真実を見せられた衝撃と自分の中の願いに気が付いたショックで、青ざめてその場から走り去ってしまいます。

狼子:心が弱い!

一同:笑


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


奥沢:コミカは地下通路を無我夢中で、どこがどこだか分からないままにどんどん走って下っていってしまいます。螺旋階段のようにぐるぐるとね。

コミカ(狼子):下がった先は底の方――オメガバージェスの神殿に近付いてますね。


奥沢:坂の途中で、反対側の壁へ渡るアーチがあるので、コミカはそれを渡って向こうへ行こうと駆け抜けます。

奥沢:そのアーチの途中で、あなたは一人の【少女】に出会うのです。

コミカ:げっ!


奥沢:【少女】は最初、橋の上にうずくまっている影のようでした。あなたに気が付くと立ち上がります。

奥沢:真っ黒な身体のラインの分からないドレスを着ており、肌も髪の毛もまっ白、赤い目をしています。


奥沢:彼女はあなたの方へ向かって、はっと気が付いたような顔をします。

コミカ:えっ、なんですか!? 誰ですか!?

奥沢:そして、問いかけます。

【少女】(奥沢):「……どうしたの?」


コミカ:えー!? こんなん絶対ヤバい人じゃないですか!

コミカ:「おまえは誰だ!?」


【少女】:「私は……アルファ」

コミカ:ひえーん、やっぱオメガバージェスじゃん!


【アルファ】:「あなたは、誰?」

コミカ:「ぼ、僕はコミカ、だけど」

【アルファ】:「コミカ……私達、どこかで会ったわよね?」


奥沢:そして、【アルファ】がここで手札を出します――

挿絵(By みてみん)


一同:きゃー!?

コミカ:ここで再びのラヴァーズですか!?

(カード効果:任意のプレイヤーとロマンスが発生し、即座に追加経験点を得る)


コミカ:こ、これは……彼女は! つまり彼女は僕の!

奥沢:はい。コミカは、この【アルファ】が、あなたが探してきた彼女であるような()()()()()

コミカ(狼子):わー!? 気がしてますー!


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


奥沢:と、いうのがGMの妨害シーンです。ここでコミカと【アルファ】の恋愛関係が成立してしまえば、シーン成立ということで、GMはラヴァーズのカード効果である経験点と、ジャスティスのシーン効果である魔力撃激化を手に入れることになります。


奥沢:まあ、GMには経験点の使い道がないので、一番最後に君たちが戦う敵のステータスを上げさせていただくことになりますかね。

まほそ:ひ、ひどい……!

狼子:ごめんなさーい!

一同:笑


狼子:ごめんなさい、コミカの心が弱いせいで……!

奥沢:もちろんここで皆さんがシーン成立を食い止めれば、どちらも阻むことができます。シーンカードのジャスティスと、手札として使ったそれぞれに対して判定が必要になりますので、2回分の判定が必要ですね。どちらを妨害するかは指定してください。


奥沢:今日のセッションの最後に出てくるボスキャラクターは既に魔力撃を持ってますので、ジャスティスを通せば、魔力撃激化という命中率の上がる技能を得ます。かなりキツイ戦いになるでしょう。


奥沢:で、ラヴァーズの方だと、基礎能力値を上げますので、それはそれでキツイです。誰がどっちを打ち消すか、成功可能性も含めてよく考えてくださいね。


狼子:えっ、じゃあ、手札として使ったときのカード効果について質問なんですけど。

奥沢:うん?

狼子:例えば、ザ・スターの説明に書いてある『追加の行動権を与えることができる』は、ここで使って、誰かに妨害に来てもらうとかアリですか?

狼子:(この質問で、私がザ・スターを持ってるって言ってるも同然だけど……ここは聞かねば!)


奥沢:あー、拡大解釈的ですけど、それはいいと思いますよ。

奥沢:ただし、このシーンに関しては、GMは他の2人のプレイヤーに、このシーンで1回ずつ行動権を認めます。なので、スターを使うならば、僕が設定した判定に失敗した後、追加で行動するのに使って貰うことになりますね。

奥沢:カードを切らなくても、2人とも助けに来てくれていいよ。2人のうち、どちらかがラヴァーズ、どちらかがジャスティスの妨害をすればいいんじゃない?


奥沢:とは言え正直、どっちのカード効果も言う程絶望的ではないんですよね。コミカが受けてる精神的ダメージの方がでかいぐらいです。

狼子:笑


奥沢:GMはちゃんとこの辺考えて調整してますからね。

奥沢:そんなに絶望的じゃないけど、妨害する方がドラマティックだし有利になるよって感じかな。

奥沢:まあ、どちらを通しても、そこまで劇的に戦況は変化しない。

まほそ:ということは、どんだけいい手札がGMの手元に来てるのかってことなんですよ。逆算すると。

一同:笑


奥沢:ザ・ワールドは切り札なので、なるべく最後まで温存した方がいいですね。しゃれになってないカードが僕の手元に後2枚ある。

まほそ:何だろうなぁ。デスとか? テンパランスだとやだなぁ。

奥沢:場札と手札見てみなよ。だいたい何が相手の手元にあるのか、わかるよ。シナリオを作るときに配ったカードも思い出して。山札はあと1枚しかないからさ。


奥沢:さて、シーンを続けても?

狼子:あっあっあっ……あと、回避できそうなカード――今の【少女】の誘惑は主動作になりますか? デビルとかどうですか?(カード効果:敵の主動作を打ち消す)


奥沢:や、デビルは……まあいいけど、デビルのカード効果を使おうとするとき、何か危険な取引をすることになりますが?

狼子:危険な取引!?

まほそ:抗いがたい誘惑とかね。禁断の関係。

狼子:(慌てて一覧表を見直す)……ほんとだ!

奥沢:今の状態よりもっとドツボにはまるやん!

一同:笑


奥沢:こういうのはほら、巻き込まれて巻き込み返す系の詐欺師タイプで頭が切れるキャラだったら、それもいいけどさ。

狼子:こいつ、アホですからね。

奥沢:コミカはちょっとなぁ。

狼子:心弱いし……。

奥沢:どうよ、コミカ?

狼子:ダメです!

奥沢:コミカには考えつかない! みんな、助けてやってくれ!笑

一同:笑


奥沢:じゃあ、続けますよ?

狼子:コミカはもう諦めました……(無の表情)

まほそ:じゃあ、登場してもいいですか?

奥沢:いいですよ、もちろん。

GB:じゃあ、私も一緒に。


奥沢:では、何かこのシーンの状況を揺さぶるようなロールプレイをください。あと、2人のうちどっちがどっちのカードを打ち消すかも決めてね。


奥沢:今、【アルファ】の能力は、コミカの「本当は過去をやり直したい、過去を知りたい」という気持ちを知ったことで強化されています。

奥沢:コミカが立ち向かえない状態なのは、ラヴァーズで関係を結ばれてしまっているから、要するに心を共有されてしまっているから立ち向かえないんです。彼自身の心の弱さだけではなく、ね。


奥沢:これは、オメガバージェスが引き起こしている精神攻撃なのだ、とそう解釈してください。ほんとに彼の心が弱い……だけではない。

狼子:だけではない。つまり、弱いのは弱いで間違いない。

奥沢:弱いところはある。

一同:笑


奥沢:弱いところを巧みに突かれているので、そこを切り崩すロールプレイをしてください。

GB:()()アルファなんですよね?

奥沢:はい。自称、ね。


GB:イグニスは、アルファのことは知ってますよね。

まほそ:うん。だけど、彼女はもう抜け殻だってことも知ってるんだよ。

奥沢:そうです。イグニスは恋人ですからね、見ればすぐに分かりますが、これはアルファじゃないんです。オメガバージェスであって、アルファではない。


奥沢:そして、シリアの胸の中でも、「何かが違う」と答えが出ています。

GB:……なるほど。


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


【アルファ】(奥沢):「コミカは、何から逃げてきたの?」

コミカ(狼子):「ぼ、僕は……オメガバージェスの力を見せられて、その強さに怯えて……でも」

コミカ:「それ以上に、それを見てもオメガバージェスを止めようとする2人が怖かったんだ」


【アルファ】:「どうして?」

コミカ:「だって僕は、かつての記憶を取り戻したいという欲望がどうしても捨てきれないんだ!」


【アルファ】:「ああ……可哀想ね」

【アルファ】:コミカの頭を抱え込みます。


【アルファ】:「やり直したいだけなんだよね?」

コミカ:「そ、そうなんだよ……」

コミカ:へなへなと崩れ落ちて、【アルファ】の腕の中へ――


イグニス:いきますよ!

イグニス:2人の間に、魔法の光をばばばっと光らせ、稲妻が周囲を走ります。

コミカ:稲妻!? それはびっくりする……うつむいていた顔をはっと上げ、周りを見回してびくびくします。

【アルファ】:微動だにしません。


イグニス:「そこまでにしておけ」

イグニス:2人の間にしゅっと現れます。

シリア:私も、アーチを駆け抜け、【アルファ】の前に立ち塞がって、コミカを背に庇います。


シリア:えっと、かつてコミカと会ったのはアルファじゃなくて私だってことを、私は知らないんでしたっけ?

奥沢:先程のイグニスの精神波で、すべてのループの記憶をシリアは取り戻しています。

奥沢:ですから、あの時自分はコミカと会ったぞ、ということを思い出してもらっていいですよ。


シリア:コミカは今、呆然自失状態ですよね?

奥沢:はい。精神攻撃自体は解けてないので、へたり込んで「【アルファ】……」と呟いてます。

コミカ:(なるほど!)「【アルファ】……僕の、探していた……やっと会えた」


シリア:コミカに対して、力強く問い質します。

シリア:「【アルファ】って誰!?」


コミカ:「彼女が――あの【少女】が【アルファ】なんだ」

コミカ:「僕がかつて会ったあの――僕は今まで、彼女を探してたんだ!」


シリア:「あなたが会ったのはあいつじゃない!」

シリア:「思い出して、あの――」


シリア:あれ? 私たち、どこで会ったかの話ってしてませんよね。

コミカ:えっ、でも、本人なら知ってますよね?

シリア:あ、そうか……ほな、どこにしよ?

奥沢:どこでもええわ、もう!笑


シリア:「あの時、中庭で――」

シリア:中庭はさすがにロマンが足らんか。

イグニス:爆笑

シリア:「あの、花咲き乱れる中庭で、あなたと会ったのは――私だ!」


奥沢:(花咲き乱れる中庭? えらいベタベタやな)

奥沢:……いや、OKです。今の言葉がコミカの心に響いたかどうか、判定で決めましょう。

奥沢:精神抵抗力で判定します。振ってください。

シリア:……(コロコロ)まあまあいきました。

奥沢:OK、通ってますよ。妨害成功です。精神効果が打ち破られて、コミカが正気に戻ります。


コミカ:「はっ!?」

奥沢:そして、コミカは曖昧だった記憶を取り返します。

コミカ:「そ、そうだ! 僕が会ったのは君だったんだ!」

シリア:立ち直り早い!

一同:笑


奥沢:そして、イグニスの向こうにいるのは、あなたの知らない【アルファ】です。

コミカ:「――あいつは誰だ!?」

イグニス:手のひらを返したように!?爆笑

一同:笑


奥沢:コミカ、面白いなぁ。

コミカ:心が弱いので!

シリア:でも、戻ってきましたよ!

イグニス:(笑い過ぎて言葉が出ない)


奥沢:残るはジャスティスですね。イグニスさん、行ってください。

コミカ:イグニスさん、【アルファ】のフリして出て来たあいつを倒すんです!

奥沢:正義を名乗って出て来たあいつをね!

シリア:先生、やっちゃってくだせぇ! ……みたいなこの流れは一体?

一同:笑


イグニス:「と、とんだ茶番を見せられたな……」

一同:笑


コミカ:まったくもっておっしゃる通りで……。

奥沢:俺だって予期してなかったよ。花舞い散る中庭かぁ。もう。

シリア:咲き乱れる中庭です!

奥沢:ごめんね!


イグニス:「見たか、オメガバージェス!」

イグニス:「やり直しの中で、こんな愉快な茶番を見ることがあろうか!?」

イグニス:「我は、この愉快さを手放すことは、どうしてもできんのだ!」

イグニス:「この狼少年の前から、ね」


奥沢:はい、OKです。では、魔力で判定しましょうか。

イグニス:とうっ……(コロコロ)ガツンと出た!

奥沢:おお、それはすごいな。文句なしですね。妨害成功です。


奥沢:では、イグニスの放った炎が【アルファ】――アルファの影を取り巻きます。

【アルファ】:「どれほど一期一会を謳っても、人間の心は必ずやり直しを求めるものよ」

【アルファ】:「あなたにも分かる、その日が」

奥沢:と言って、少女は燃え尽きます。


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


奥沢:お疲れ様でした。うまいこと妨害してくれましたね。

奥沢:さあ、あと2シーン、いきましょうか。

※1)「【オープニング3】コミカ」で、コミカの出したカードがジャスティスでした。この結果、コミカは魔力撃激化という強力な戦闘特技を手に入れたのですが、同じカードで追い詰められることになろうとは……まさに運命。

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― 新着の感想 ―
[一言]  今回のシーンを拝読して、「GM上手ェ……!」と唸りました。  ジャスティスの掲げた光とラヴァーズを組み合わせて、主人公を誤った方向に導こうとするというシーンイメージもさることながら、状況説…
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