【本編3】コミカ、心が揺らぐ
奥沢さんのマスタリングでプレイするTRPG。
『塔(ⅩⅥ THE TOWER)』のカードに象徴される、時間と記憶を操る『邪神:オメガバージェス』を倒し、魔法学園都市に平和を取り戻せ!
本編3シーン目は、狼子のPC:コミカのシーンです。
奥沢:じゃあ次のひと、カードをめくってくれる?
狼子:(ぺらっとな)
奥沢:(出されたカードと全員を見渡し)おい……お前ら正気か? 結構大事なカードどんどん場にでてるけど、俺は心配になってきたぞ!
(場面説明:競馬場、軍馬のいななき、決断を迫られる、もっと早く)
まほそ:そして、残念ながら、私のシーンじゃないんだな。
奥沢:イグニスのシーンじゃないということは……?
狼子:わ、私です。(自分が配置した訳じゃないので、めちゃくちゃ焦っている)
狼子:えっ、どうしよう。全然予想外のところで出てきちゃいました。(慌ててカード説明一覧表をめくる)
奥沢:よくあることだ!笑
まほそ:よくあるよくある笑
狼子:(ぺらぺらぺら……)あ、そうだ。「己の意志を問う敵」というのを使いたいなって思ってて。
奥沢:うん。
狼子:コミカはここまで逃げっぱなしなんですよ。
奥沢:うんうん。
狼子:そろそろ腹を決めないとこのまま終わっちゃうので、ここで何かを……例えばイグニスに問うてもらう、みたいな。(丸っとぶん投げ)
まほそ:私!? 何を問うの!?
一同:笑
まほそ:うーん、じゃあ、ここで一回おさらいしましょうか。コミカがなぜここまで来て、どんな問題を解決しなきゃいけないのか、軽く再確認するね。
まほそ:えっと……コミカは、少女を探しているのと、おじいとギルベリオスに魔狼に差し出され、かつ回収された過去があるのよね。何らかの目的で。
GB:何かに利用されそうになったけど、危ういところで逃げたんでしたよね。
まほそ:伏線回収のために、軽くその辺を詰めてもらえますか、GM?
奥沢:そうですね。オープンにすると、その計画というのは、オメガバージェスに捧げるための強烈な記憶を育てるための計画なんです。オメガバージェスは、強烈な、特別な経験の記憶を食らうことで、力を取り戻す邪神なんです。
奥沢:しかも、オメガバージェス自身は、自分の心をもう持っていないんです。自分の心はどこかに捨ててしまった。捨てたことによって神になった。
まほそ:そして、周りを救おうとしたのよね。
奥沢:そうです。そして、彼女の捨てられた心の部分は、このお話に既に登場している。
狼子:(えっ!?)
狼子:(ど、どこで!?)
奥沢:まあ、そのことは別として、彼女自身のその心を捨てて穴となった部分に投げ入れるための強烈な記憶――他にない経験をした存在を作ろうとした。それが、ギルベリオス達の計画なんです。
奥沢:人間ではないものに育てられた人間の記憶とは、すごく特別なんじゃないか――そういう特別な存在の特別な経験をもう一度やり直して、更に強い記憶を作る。リフレインさせることでもっと力を得る、何度もリサイクルして永久機関のようにする。そうして、更にエネルギーを蓄える――そんなシステムを作ろうとした計画です。
狼子:んっと……その繰り返しに、シリアは成功したけど、コミカは成功しなかったってことですか?
GB:コミカはまだ繰り返してないんやないかな。
奥沢:そうです、まだやってないんです。
狼子:さっきのシーンで、シリアちゃんとイグニスは何だか前に会ったことがあるような話でしたよね?
まほそ:そうね。イグニスは何か思い当たりがあるようだったね。
GB:シリアは本当は知らないんだと思います。知らないはずなのに突然「この人のことを知っている!」ってなったのは――あれは、シリアの記憶じゃない。多分、他の存在が紛れ込んでますね。
奥沢:はい。それに、イグニスがシリアに反応したのは、さきほどの紋章に関係するんじゃないでしょうか。シリアの手のひらの痣――そこに関係するものを、イグニスは知っている。
奥沢:それはもうシナリオに登場しています……と、言うか、あなた方が登場させたので。
まほそ:あは、私です。私が登場させました。
狼子:(あっ、それは――オメガバージェスになる前の?)
まほそ:ね、おさらいおさらい。
狼子:(なるほどー! すごい、めっちゃ分かった……!)
狼子:(僕がストーリーに隠されたものを全然見えてないって、まほそさん分かったんだな……ありがたや)
奥沢:となると確かに、コミカはコミカの原動力になるような動機をしっかりと育てることが、このシーンでは重要でしょうね。
奥沢:チャリオットの絵って、戦車を引いている馬は白黒二頭なんですよ。それが二面性、表と裏を表しているカードなんです。
GB:あ、それが「二律背反」の意味ですね。
(ここでひとしきりカードについて語り合っていますが、話が脱線してるので中略(※1))
狼子:えっと、話を戻して……原動力になる動機ですね。そう、コミカはここまで逃げてるだけなんですよ。
狼子:シリアとイグニスにはここにいる理由があります。シリアはここでイグニスを逃せないし、イグニスはイグニスで「お前知っているな」って感じなので。
狼子:でも、コミカは、ここで「じゃあ僕は知りませんから帰ります」って言ってもおかしくない、でも……。
まほそ:でも、それだと、美味しくないよね。
狼子:そうなんです……。
奥沢:それはやっぱり、外から働きかけないと、コミカが自分の中から作るのは難しいと思うな。
まほそ:そうしてあげたいよね。だから、それを考えるために手がかりが欲しいんだけど。
奥沢:この場面で、「イグニスに何かを問うてほしい」っていう狼子さんの発言は、確かにお話の核心を突いてると思う。
奥沢:つまり、ここに来る連中をイグニスがどう思ってるのか、この場面で知らないと動けないということね。
奥沢:イグニス的には、自分の神殿にわざわざ踏み込んできたヤツは、「またかお前たち」「また時間遡行をしに来たのか」ってことでしょ?
まほそ:うん、なんで来んねんって思うよね。
奥沢:だよね。だから、ことと次第によっては許さんぞって怒りで目覚めないとだめだと思うんだよ。リセットしてもう一回やり直すっていうチート行為は絶対許さん、っていう姿勢じゃないとダメなんですよ、イグニスは。
まほそ:うん。
奥沢:だから、自分を目覚めさせたコミカとシリアに対して、「またやってきたのか」っていう気持ちがあるじゃないですか?
まほそ:うん。
奥沢:シリアにくっついて来たコミカに、「お前は一体何者だ!」って言うよね。「我が、自分勝手な時間遡行を許さぬと知っての狼藉か」って言わなきゃダメだと思うよ。
まほそ:そこまで作ってもらうと、その台詞もらっちゃいますけど?
一同:笑
まほそ:うん、その問いを使うとして、狼子さんはコミカとしてどう答えたい? どっちに持って行きたいの?
奥沢:うん。その問いがそのまま「お前は一体何がしたいんだ」っていう問いなんですよ。
まほそ:ああ、なるほど。そこで考えて、狼子さんは、それを答えるシーンにしたいってことなのね。
狼子:(分かった顔で深く頷きつつも、2人の話を追うのに必死である)
GB:ああ、コミカが決意を固めるための流れが欲しいってことですよね。
GB:コミカはおじいとギルベリオスの会話を聞いた。そこで、自分がギルベリオスにいいようにされてて、しかもわざと逃がされたってことを知った。ってことは、このままコミカが何も考えず進めば進むほど、ギルベリオスの思うツボになっちゃう可能性がある。
まほそ:そういう意味じゃ、コミカは「自分はなぜそうされたのか?」「泳がされているのか」ってことを知りたくなるよね。
まほそ:それに、「何で自分はわざわざ魔狼に捧げられたのか?」っていうのを知りたいかなって。
奥沢:魔狼との生活についても知りたいかもね。本人は覚えていないけれど、その生活は実験のための非常に冷徹なシステムだったのか、ほんとは魔狼のお母さんが可愛がってくれたのか。それを知るためには、時間を遡行して過去をやり直すことが出来るシステムはある意味魅力的に見えるかも知れない。
まほそ:時間遡行できるっていう話は知らないんだよね?
奥沢:だから、イグニスが目覚めたときにそうやって問いかけるんだよ。
まほそ:「お前も時間遡行をするつもりか!」って怒鳴りつけて、逆に「そんな方法あるんや」って教えちゃうのか。
一同:笑
奥沢:コミカは、伝承に時間遡行できる魔神がいたっていう話は知ってますからね。
まほそ:学園育ちだもんね。
奥沢:この学園の下に封ぜられているっていうのを聞いているでしょうね。
狼子:つまり、イグニスの話を聞いて、コミカは考えるってことですか? 僕の失われた記憶を取り戻すことができるんじゃないだろうかって。
まほそ:それそれそれ、そういうのが欲しかった! 何を答えるために問いかけるのかってこと!
GB:コミカは、今まで記憶がなくて、ぼやっと棚上げにしてたものを、おじいの話を後ろで聞いていて気が付いたんやな。「自分にはあるべきものがない」っていうことに。
まほそ:記憶っていうのをキーワードにね。うん……台詞を考えるね、ちょっと待って。
奥沢:頑張ってね。
まほそ:私のシーンじゃないんですけど!?(※2)
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
イグニス:柩から身体を起こし、コミカとシリアを睨み付ける。
イグニス:「またしても過去ばかり顧み、先を見ようとしない者達が現れたのか!」
イグニス:(もう一押し……!)
イグニス:「そんなにもオメガバージェスの時間遡行の力に頼りたいと言うのか!」
奥沢:OK、いいと思います。
奥沢:ただ、オメガバージェスっていう言葉に反応するかな、みんな。バージェスは学園の名前だけど。
奥沢:2人とも、セージ技能がないんだよね。教養系能力がないと、こういうところで詰むんだよなぁ。
奥沢:もうちょっとはっきりするために、少し付けくわえようか。
イグニス(奥沢):「それほどまでに過去をやり直したいのか」
イグニス(まほそ):「それほどまでに過去をやり直したいのか!」
イグニス(奥沢):「お前たちの人生は後悔しかないのか!」
イグニス(まほそ):「……のか!」
イグニス(奥沢):「何をしに来た! ことと次第によっては、この場でお前たちを叩き伏せるぞ!」
イグニス(まほそ):きゃー、格好いい!(ぱちぱちぱち)
奥沢:俺が言ってんじゃねぇか! お前が言いなさいよ。
イグニス:ニュアンスは汲んでるんだけど、セリフは出てこないんだよねえ。
奥沢:イグニスは、「過去をやり直すことは許さない」「オメガバージェスを復活させようとする者は絶許」っていう態度をはっきりさせないとね。
コミカ:あっでも、僕はこれで、そうか、過去をやり直すことが出来るんだって気付いたんですけど、イグニスが「絶許」って言っても、僕自身はここでは「やり直してみたい! 自分の過去を知りたい!」って思っちゃってるんですよね。
コミカ:「過去をやり直すとかできるんですか?」
イグニス:「たわけ! それも知らんのか!」
イグニス:って叱り付けて、全部言っちゃう笑
シリア:すごい誘導されてる、魔神が笑
奥沢:まあ寝起きなんでね、非常に不機嫌なのかもしれません。
イグニス:「何だ、きさまら! また、強烈な記憶を糧に、オメガバージェスを復活させ、時間遡行をするつもりか! このたわけが!」
コミカ:「強烈な記憶を捧げて、オメガバージェスを復活させれば、時間遡行をすることができるんだ!?」
一同:笑
奥沢:これだけ言って貰えれば、きっと自分がオメガバージェスを復活させるための因子として育てられたのだということも気づくでしょう。
コミカ:「オメガバージェスを復活させるための、強烈な記憶を僕に植え付けることが、おじいとギルベリオスの目的だったんだ!」
奥沢:おじいは自分が間違っていることに気付いているけどね。
シリア:コミカの幼少期の記憶が曖昧なのは、もう捧げてしまったからでしょうか?
奥沢:いや、それは幼少期のショックとか、そういうものでしょう。彼は失敗作だったんです。成功していれば、コミカもまた過去に戻れているはずだから。
シリア:ああ、だから「思ったより役に立たなかった」ってことですか。
奥沢:そうそう。
まほそ:本来はその強烈な記憶があることで、エネルギーになったはずなのに。
シリア:なんかつらかったんか、思ったより打たれ強過ぎたんか……。
コミカ:どうもカスみたいなのしか残ってない!
一同:笑
奥沢:おじいは彼を魔法学園の生徒として育てることで、魔法に習熟すれば精神領域の素養が身に付くだろうと思ってたんでしょうね。その中で、記憶に触れることがあるんじゃないかと方便を使いながらも、この子をこの辛い計画から外したい、と悩みながら生きて来たのがおじいなんでしょうね……(しみじみ)。
コミカ:そのおじいの願いを受けて、無意識的に記憶を掘る方向を避けて来たのが僕ですね。
シリア:だから、不本意ながら落第という方向に。
奥沢:そうそう。
イグニス:あ、繋がってきた、繋がってきた。
コミカ:でも、自分がなぜ育てられたかも知ってしまうと、これは時間遡行したい気持ちと、この計画自体を止めなきゃいけないという気持ちの両方がありますよね。自分の過去は知りたい。でも、第二・第三のコミカを作ってはいけない。
奥沢:なるほどなるほど。では、ある意味では自分は犠牲者だっていう意識になったってことですね。
奥沢:そこはじゃあ、判定をしたいな。
奥沢:では、僕はここでシナリオ分岐を提案します。
コミカ:はい。
奥沢:一つは、「第二、第三のコミカを作らないため、この計画を阻止する」という形で、意志が固まったコミカ。オメガバージェス絶許コミカ。
奥沢:もう一つは、「時間遡行して過去をやり直したい、記憶を取り戻したい」という誘惑に揺らぐちょっと弱いコミカ。
コミカ:なるほど。
奥沢:ダイスロールで決めたいと思います。達成値はこれ。(ちらっ)
奥沢:これを、精神力ボーナス+冒険者レベルで+2d6で超えれば、「絶許コミカ」。
奥沢:達成値に至らなければ、「ちょっと弱いコミカ」。
コミカ:なるほどー! 分かりました。
コミカ:どっちの方がいいんでしょうね、これ……絶許の方が、この後は楽ですよね? イグニスもシリアも「絶許」ですもんね。
奥沢:そうだね、楽だね。基本的には。
コミカ:誘惑に負けるとこれは、他メンバーとの足並みを乱して、後を引きそうな……うーん、とにかく行きます!
コミカ:……(コロコロ)酷い!負けてるじゃん!
一同:爆笑
イグニス:主人公!笑
シリア:いったわぁ笑
コミカ:弱い!
奥沢:俺の思惑通りだ!
コミカ:マジっすか!?
奥沢:今、呪いかけたからね! よくやった。
奥沢:と、いう訳で、口先では他の2人に合わせて「バージェス絶許!」って言ってるけど、心の中では「でも、遡行して過去を知りたい……」っていう誘惑から逃れられないコミカが出来上がりました。
奥沢:素晴らしいシーンだね、二律背反!
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奥沢:ということで、経験点を加算して、シーン効果を読み上げてください。
狼子:命中判定と回避にプラス値です!
狼子:とにかく逃げたいコミカができました!
一同:笑
GB:経験点溜まったんですけど、これ、技能のレベルアップは今やってもいいんですか?
奥沢:今やってもいいんだけど……何かこう劇的な、ここでレベルが上がるのが自然だなっていうシーンで上げて貰えると嬉しいな!
奥沢:「シーンの途中ですが、何か……今突然強くなった!(ムキッ)」って嫌でしょう?
一同:笑
奥沢:何かシリアさん、シーン終わったところでキャラ変わってませんか?(ムキッ)みたいなの、すっごく嫌だと思うんで、そこだけはもうちょっと演出を考えて貰えたら嬉しいなー。
狼子:コミカが悩んでる間になぜか強くなるシリアさんとか笑
奥沢:よく分からないけど、今筋肉が成長しました!(ムキッ)笑
まほそ:シーンの途中に振り返ると、脈絡なくシャツが破れてて(ムキッ)みたいな笑
奥沢:そこだけはもうちょっと演出を考えて貰えると嬉しいな!
GB:確かに、それは嫌ですね笑
※1)中略部分の会話
奥沢:このタロットの絵だとあんまり通じなくて、ちょっとまともなレオニダスみたいに見えちゃいますけどね。
まほそ:服着てるレオニダスみたいな、ね。
GB:……このひと、ここ(尻を指しつつ)矢で射られるとヤバそうですよね。
狼子:何でお尻に刺すんですか笑
GB:いや、いや何かこの角度やとヤバいなって……
奥沢:GB! あんた、人のシーンだと容赦ないな! あんたちょっと容赦なくない、それ?
GB:いや、レオニダスとか聞くとこの太腿が。
奥沢:全然考えられなくなるのでやめてもらえます、太腿とか尻の話とか!
GB:あっはい、すみません。
奥沢:「ケツに矢を受けてな!」みたいな話は!
GB:すみません、かく乱するつもりはなくて、申し訳ない。
狼子:(爆笑して何も考えてない)
GB:いや、だってかっこういいレオニダスとか言われたら、ちょっと。
狼子:矢とか刺してみたく?
GB:ねえ。
奥沢:そんな話はええねん!
※2)ほんと全然まほそさんのシーンじゃないんですけど、しょっぱなから狼子が丸投げしっぱなしだったのでした。まほそさん、その節はありがとうございました!




