前編3
サミーとアンジェに連れられて、メインストリートに久しぶりに訪れた。
ナローケーキを好んで食べていた時には、俺も足繁くこのランク付の名店が並ぶメインストリートに足を運んだものだが、ケーキ職人を始めてからは意識的にここに来ることを避けていた。
人気作品の影響を受けるのが嫌だと言っていたが、本音はメインストリートに集うランク付きの名店が稼ぎ出したポイントや、その店に集まる人だかりを見て劣等感を感じるのが嫌だったからだ。
次にこの奇妙な2人の連れの紹介をしたい。
サミーの方が、大学を卒業したばかりの俺よりも、10年ほど社会人経験が長い。
現在彼はフリーのライターを生業にしているが、以前雑誌社の編集をやっていた頃には、俺と同じようにナローケーキ職人もやっていたそうだ。
学校に1人位はいる、いわゆる少年期に神童と言われていたキャラクターだ。
話してみると頭の良い印象はあるのだが、どこか冷めているというか一生懸命にならないところがあり、俺はそこが好きになれない。
それだけナローケーキの知識や経験があるなら、自分で書いたらいいじゃないかと思うのだが、彼はかたくなに作品を見せようとしない。
ひょっとしたらただの作品を作らないナローケーキ職人なだけなのかもしれない。
背丈は俺より10センチほど低い160センチ後半で髪は金髪、目はブルー。薄い緑の度付きのサングラスを愛用している。
アンジェリカは18歳と言っているが、世間話の内容やサミーとの会話の歯車のかみ合い具合から推測するに、アラサーと思われる。
メインストリート各店の常連で、彼女の根本姿勢は暇つぶし主義である。
もはやありとあらゆるナローケーキを食べ尽くしてしまった彼女は、今は何を思ったのか俺の店に入り浸っている。
ときには他店のケーキを俺の店で食い始めると言う暴挙に出たりするのだが、店にお客さんがいれば、その姿を見て寄って来る他のお客さんがいるのではと思い、サクラの仕事をしてもらっていると割り切り、それを容認している。
身長は160センチ前後、ブラウンの髪、緑の瞳、透き通るような白い肌に、黒基調のゴスロリのファッションが映える。
アンジェと話をしている中で知ったことなのだが、彼女は大量生産大量消費教の信者であった。彼女は俺が大大消教のアンチであると知っている。いつかこのこのファクターが事件を巻き起こしそうな予感があった。





