前編2
ここはナロー王国。
ナローケーキのメジャーリーグと呼ばれている場所だ。
ここのシステムはこうだ。
店舗とその店舗内だけで使える魔法が無償で貸し出される。その魔法は言葉をナローケーキに変える。作り出されたナローケーキは無料で食べ放題。ナロー王国に訪れる人たちに振る舞われる。人気店には各銀行が融資を行うことで有料店舗へ移行する。
ナロー王国に訪れる者にしてみれば無料でケーキが食べ放題だし、ケーキ職人を夢見る者としては無償で店舗が貸し出されているし、また融資する側もある程度売れる算段が立った上で融資が出来るので、いわゆるwin win winの関係が構築されていた。
つまり誰にでも自分の作品の発表の場が平等に与えられており、その作品の評価はこの王国を訪れる一般の参加者によって公平に行われているのだ。
これまでケーキを発表する機会のハードルが高かったケーキ職人たちにとって、このナロー王国のシステムは大きなチャンスに思えた。そして多くのケーキ職人は我先にとこぞって参加した。一部のナローケーキ職人はその技とアイディアで栄光を掴み取っていた。
その一方で大多数のケーキ職人達は、作品に対しスルーという不人気評価の現実を突きつけられ、心折られ、挫折した。今やナロー王国には夢破れたナローケーキ職人の死体が積み上がっている。
またナローケーキの受け手にも繁栄の光が創り出した影が存在した。200万人からの王国に押し寄せて来ているナローケーキのファン達は、満腹飢餓の状態になっていて、その飽和状態に陥った受け手達はさながら麻薬中毒患者のようであった。
兎にも角にもナロー王国はいまのところひとまずの繁栄を謳歌していた。ナローバブルケーキ(景気)と揶揄される程に。ナロー王国の近隣諸国であるカキン王国やティービィー王国に比べ、比較的道徳的な国家運用がなされてはいるが、このバブル景気をきな臭くしているのは、ここでもやはり大量生産大量消費教と言うカルト宗教だった。
追って詳しく説明するが最も深刻な問題は、この宗教は人間を人間としてでなく消費単位として扱う点である。付け加えて多くの銀行がこのカルト宗教を信仰もしくは利用している点も憂慮されなくてはならないだろう。





