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後編6

 



 最後にごく簡単に、あのろくでもないケーキ対決ごっこから、3ヶ月経った今の状況を書き記しておく。




 サミーはカキン王国に引っ越した。

 カキン王国で、その実態と問題を、持前のライター根性で取材していると言う。

 カキン王国はカキンラーメンのメジャーリーグだ。

 麺とスープ、これはどこの店でもで無料で提供される。しかしコショウの一振りから追加料金が請求される仕組みだ。トッピングを追加料金で購入する訳だが、その購入金額は青天井だ。

 そしていつしかカキン王国の中でのみ存在している、独自の価値観が受け手の世界観にすり替わるのだ。より多くトッピングを盛った者が王国内でのハイステータスを得られると言う、馬鹿げている共通認識がまかり通っているのである。

 ここでもやはり大量生産大量消費教の暗躍があちらこちらで見られるそうだ。カキン王国にとって隣国であるコンチパ王国との戦争勝利の方が至上命題であり、王国内の大大消教信者達が発生させている、システム不備に基づく事件の数々は放置されている、とのことだ。

 サミーはいったいどんな記事を書くのだろうか、それにどんな毒を仕込むのだろうか、今からちょっと楽しみだ。




 アンジェはティービィー王国に引っ越した。

 この王国の歴史は比較的に古く、一時期から大量生産大量消費教を国教にしている。

 相変わらずの暇つぶし至上主義の彼女は原点に帰ったと言っていた。

 ティービィー王国はティービィー寿司のメジャーリーグだ。

 長椅子に座っているだけで、次から次へと回転寿司が、口の中に入っていくという、そういった仕組みになっている。

 基本的に全く追加料金が必要無いシステムだが、そこに落とし穴がある。長い間そのティービィー寿司の椅子に座っていると、結果的に買う必要のない物を次々と買ってしまうと言うカラクリがあるのだ。

 特に子供や老人といった弱者をターゲットにした、卑劣な押し売りがまかり通っているのが現状である。当然のことながら大量生産大量消費教の寿司が次々と運ばれてくる。

 人はいつしかこの宗教や、その思想や、あんな黒い思惑に洗脳される。


  「なんかもー早くもイヤになってきちゃってさー」


 なんでも頼んでもいない、食べたくもない、唐辛子と化学調味料にまみれた白菜の漬け物が、異常なほど頻繁に流れてくるのがファックだからだそうだ。知らねーよ。

 洗脳の結果、その白菜の漬物を追加注文をする子供もいるという。

 洗脳の結果、その白菜の漬物の原産地に旅行する若者もいるという。

 洗脳の結果、その白菜の漬物の原産地に謝罪と賠償をするべきだと主張する老人もいるという。

 ティービィー王国は最早終わった王国である。

 にも関わらず、その断末魔はいまだに続いているというのがアンジェの見解だ。俺は個人的にはアンジェの次の身の振りが気になっている。

 余談だが、あのろくでもないケーキ対決をやって、俺のケーキを賞賛し、心から楽しんだと言ってくれたのは、アンジェリカただ1人だった。

 街でゴスロリ女を見かける度に、俺は彼女を思い出す。べっ、別に好きとかそんなんじゃないからな!




 タカコさんはあのケーキ対決があった翌日に姿を消した。

 しばらくは人気のランカーがエタったことに関して話題になったが、1ヵ月もすればもう人々の心の片隅から綺麗に忘れ去られた。


 先日そのタカコさんから手紙ケーキが届いた。

 彼女の発した言葉をケーキに変えて手紙として送っているところから、彼女はまだこのナロー王国のどこかにいると推測される。


 俺は相変わらずこのナロー王国でケーキを作っている。

 今の俺はタカコさんに言われたことを、サミーに言われたことを、そしてアンジェに言われたことを忠実に守り、多くの人が喜んでくれるような甘い甘いナローケーキを作っている。


 新作ケーキの発表もなるべく頻繁に行うようにした。

 だがやはり俺の中で曲げることが出来ない部分があり、水増ししたかのような冗長なテイストは避けずには、そしてひとつまみの毒を加えずにはいられなかった。


 閉店後。

 日中の喧騒が静けさの中に感じ取れる誰もいない店内で。

 俺は今夜も未練がましくタカコさんの手紙ケーキの残りを、チビリチビリと食べながらウイスキーを呷っていた。


 =====

 アカル君

 君の勝ちよ 

 客を煽ってコントロールする

 炎上まがいの手を使う

 理想に燃える純粋な少年を演じて狡猾に目的を達成する 

 事実、多くの人が今回の件を切っ掛けに君の作品に触れたはずよ?

 キミにやられちゃう自分の力不足を感じたので修行の旅に出ます

 エタることにします

 またどこかで会えたらいいね


 

 P.S.

 あんまりナロー王国の運営の方々を困らせたらダメよ?

 タカコ

 =====


 俺はひとまずの目的は達成した。

 にも関わらず俺の心は虚無感に支配されていた。

 そして俺はふといろいろなことが馬鹿らしく思えてきて、

 ナロー王国の運営の方々を困らせたらダメであるという究極の悟りをひらくに至ったのであります… キュピーン!←第三の眼がひらいた音


 「うわぁ!月の裏側から監視されてるぅぅぅ!」「あらら…(苦笑」








 くたばれ!なろう小説!―――底辺ナローケーキ職人、盛大に逆ギレをぶちかます!―――


 おしまいにゃん! プス!←頭蓋骨の中の空気が耳から抜けた音


以上で完結です、お付き合い頂き誠にありがとうございました

感想・評価頂ければ幸いです

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