序章
初執筆初投稿
改稿しました
1 異世界転生兄妹
目の前で、腰まで届く長さの艶やかな白い髪が風に靡く。
緩やかに流れる白の少し前方で、10mはあろう怪物が胴体に風穴を空けられ断末魔を上げている。
その音が耳に入らないほど、その巨体が目に映らないほど。
目の前の人の、絵画のような美しさに。
私(俺)は、目を奪われていた……
――この日、私(俺)は異なる世界で、運命の出会いを果たした。
地球 日本のとある町
「ありがとうございましたー!」
家の近くにある喫茶店で、接客のアルバイトに精を出す私こと椎名雪菜は、兄の秋斗と2人で暮らしている。
幼いころに両親を亡くした私たちは、祖母の元で育てられてきた。
その祖母も1年前、眠るように息を引き取ってしまい、身寄りの無くなった兄妹を引き取ろうとする親戚はどこにもおらず、その日から私と兄さんの2人での生活が始まった。
高校1年生と3年生の2人暮らし、入学金こそ祖母の残した遺産で支払えたものの、もともと祖母も裕福なほうではなく、生活費はほとんど自分たちだけでまかなう必要があった。
とはいえ、兄さんがもともとバイトが好きな自称「バイト戦士」であり、またそのバイト代のほとんどを貯金していたために特別貧しい生活でもなかったことは、兄には感謝してもし切れない。
いくらバイト好きだからといえ、色んなジャンル節操無く手を出しすぎだとは思う、熊やらマグロやらの解体だのサバイバル術だの大工技術だの、どんなバイトで身につくのだろうか……
高校に慣れて余裕が出来てからは、兄も働いている今の喫茶店でアルバイトを始めた。
まだ始めてから1ヶ月と経っていないが、兄さんがバイトを好きな理由が少しわかった気がする。確かに楽しいし、これでお給料まで貰えるのだから素晴らしい。
今までは、趣味にお金をかけることも出来ず、兄妹そろってネット小説を読み漁るのが趣味だった。これからは私もバイトで稼ぐことが出来るし、兄さんの収入も合わせれば多少は娯楽にお金をかけることも出来るようになるかな?
そうなったら、色んなことに挑戦してみて新しい趣味を見つけるのもいいかもしれない。
今まで興味が無くて生活にも余裕がなかったから恋愛なんかも一切したこと無かったし、告白なんかも全部断ってきたけど、恋愛してみるのもいいかも? だからって好きでもない相手ととりあえずで付き合うとかは論外だけど。
兄さんも、バイトばっかりじゃなくて、恋人の一人くらい作ればいいのになぁ。本人は興味ないしめんどくさそうだから作りたくないって言ってるけど、兄さん顔良いんだし、作ろうと思えばすぐだと思うんだけどなぁ。これ言うと「お前もだろ」って言われるから言わないけどね。
とりあえず、今日は初給料が出たし、贅沢に外食なんてしちゃおうかな。
「ねぇ、兄さん」
「お疲れ様でしたー!」
今日も今日とてバイトに全力を尽くし、俺、椎名秋斗は妹の雪菜と帰路に着く。
今日はバイトの給料支給日だ。やはり、何回目でも、給料を受け取る瞬間は嬉しいものだ。
雪菜も始めての給料が嬉しいのか、笑顔になっている。
やはりバイトはいいものだ……! 色んなことが出来るし、色んな人に会える。さらには給料までもらえる。そして楽しい!
雪菜からは「バイトばっかりじゃなくて、恋人作ったりとかしたら」とか言われるが、そんなものには興味が無い! 好きな相手がいるわけでもないのに誰かと付き合う気もないし、女に興味を持ったことも無い。同級生がかわいいと言ってる女子を見てもなんとも思わないし、そもそもかわいいだけなら雪菜で見慣れている。実際、雪菜は兄妹の贔屓目なしに見た目は文句無くかわいい。友人たちも学校で一番だとよく言っているし、俺もそうだとは思う。とはいえ、雪菜は妹だし、同級生たちが妄想しているような展開になる可能性など皆無だが。
やめだやめやめ! 興味のないこと考えても時間の無駄だし、今は、雪菜の初給料記念に外食にでも連れてってやるか!
「なぁ、雪菜」
肩を並べて帰り道を歩く兄妹
互いが互いに同時に話しかけたその瞬間。
その姿が、唐突に、地球から消失した。
異世界ガルドアース エリアル王国領 魔の森
少しだけ開けた場所に、2人の男女が突如姿を現した。
「……ねぇ、兄さん」
「……なぁ、雪菜」
唐突な視界の変化、先ほどと違いすぎる光景に、戸惑いを隠せない兄妹。
「……なにが起きたんだ?」
「……わかるわけ無いよ」
「……だよな」
先ほどまで兄妹が歩いていた家までの帰り道の景色。地面はコンクリートで出来ており、街頭が暗い夜を照らし、車がすぐ横を走りぬけ、視界には様々な建物が立ち並ぶ。
今目にしている光景とは、何一つとして一致しない。
「夢でも見てんのか?」
「夢であって欲しいけどね」
ちゃんと体には感覚があって、踏みしめている大地はしっかりと存在感を主張している。
そろって自分の頬を引っ張るも、痛みを感じないなんてことは無く、今の状況が夢などではないことを認識させられる。
「なぁ、これってさ……ネット小説で見たことあるシチュだよな」
「あー、確かに、よく見かけるやつではあるね。決して自分がそうなりたいとは思わないけど」
戸惑いが大きいものの、現在の状況には覚えがある2人。共通の趣味であるネット小説の、ファンタジーものなんかでは良く見かけるシチュエーションだった。
とはいえ、現実に「それ」が起こりうるなど、到底、想像の範囲外ではあるが。
「神様に会ったりとか、誰かに特典貰ったりとか、したか?」
「ううん、なんにもないよ。兄さんこそなんか無かったの?」
「……なんも無かった」
…………
「なにも特典無く異世界とか、どうすりゃいいんだ……?」
「これで本当にファンタジーな世界だったら、絶対私たち生き残れないよ……」
当然この兄妹が、実はものすごく強かったとか、実は魔法を使えるとか、そんなことはない。
ごく普通の家庭に生まれ、苦労はしているものの、ごく普通に生活していた。
小説の主人公たちにあこがれたり、同じようになってみたいと思うことが、一切ないとは言えないが、しかし、それは特別な何かがあって初めて出来ることだ。
こんな突然に、なんの説明も無く、なんの力も無く、こんな状況になってしまっても、絶望以外の未来が見えない。
「兄さん、どうしよう……」
「とにかく、こんな森? の中にずっと居ても、なにが出てくるかわからんし、一先ずは人を探してみるのが一番かもな」
どんな場所かもわからないのに動き回るのは危険かとも思った雪菜だが、そもそもこの場だって安全なわけではないと気付き、兄の案に賛成する。
しばらく歩き回るも、人どころか森の出口すらも見当たらない二人。
長いこと、舗装されてもいない森の中を歩き回ったことで疲労が溜まってきた。
ちょうど少しだけ開けた空間に出たこともあり休憩することに。
「なにも見つからねぇな……」
「ホントにね……さすがに疲れたよ」
そういって近くの木の根元に座り込む秋斗と雪菜。
すこしでも疲労を回復させようと、全身から力を抜く。
そんな二人の後ろ、森の奥のほうから、かすかな振動が伝わり、木々がなぎ倒されるような音が鳴り響く。
それは、少しずつ、兄妹の元へと近づいてくる。
恐る恐る振り返った先には、300mほど先に、10mはあろう大きさの、醜い顔をした猿のような怪物が歩いていた。
あわてて姿勢を低くする二人。
「なっ、何だよ、あれはっ!」
「わ、わかんないけど、でも、見つかったらやばいよ!」
出来るだけ静かに、小さい声で会話し、そっと、怪物の様子を伺う。
――視線が、合う。
「……グゥゥルォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
2人の鼓膜を突き破らんばかりの咆哮、音が振動として兄妹の体を揺らす。
その恐ろしさに肌が粟立つ、足がすくむ、体が震える。
本能が逃げろと叫ぶのに、足が動かない。
いや、動いたとしても、到底逃げられはしないだろう。
――怪物が、2人へと、その足を向けた。
突然の生命の危機に、思考が、真っ白に染まる。
一刻も早く逃げたい。
しかし、体が、金縛りにでもあったかのように、ピクリとも動かない。
怪物との距離が、段々と、近づいていく。
二人が動かない、いや、動けないことを知っているのか、ゆっくりと、歩いて近づいてくる怪物。
その距離が、零に、なる。
目の前に怪物が居る。
楽しんでいるのか、すぐに殺すことなく、ニヤニヤとした顔を浮かべ、ゆっくりと、大木のように大きな腕を、振り上げる。
2人ともが、もう死ぬしかないのかと諦め、顔を下ろしたとき。
怪物から鈍い音が聞こえた。
その音に反射的に顔を上げた兄妹の目に映ったのは、腰まで届く白く長い髪、怖気がするほどに美しい人物、その隣にたたずむ、九本の尻尾を持つ、2mもある白い狐、その向こうで、顔を歪めてたたらを踏む怪物。
目の前の人物が右手を怪物に向ける。
その手のひらに、白い光があつまっていく。
そのときの光景を、兄妹は一生忘れることは無いだろう。
手のひらから光がほとばしり、怪物の胴体に、大きな風穴を空ける。
その光景を作り出した人物の、その絵画のような美しさに、2人は、すべてを忘れて見惚れていた。
この日、私(俺)は異なる世界で、運命の出会いを果たした。
2 白の魔女(男)
自由に生きなさい。
それがおじいちゃんの遺言だった。
だから私は、おじいちゃんが見てきた世界を見て回ることにした。
私ことミリアルドは物心ついたときから森で育ってきた。
森の中にポツンと建っている家に、おじいちゃん、ガイアス・ローランと私の二人で暮らしている。
おじいちゃんは育ての親であり、本当の親は顔も知らない。おじいちゃんに聞いたが、私は森の中に捨てられていたらしい。でも、そんな顔も知らない親なんかより、おじいちゃんのほうがずっとずっと大好きだし、別にどうでもいい事実だ。
もともとおじいちゃんは森の外で暮らしていたのが、なんか周りとのなんやかんやで隠居したらしい。なんやかんやってなんだろう? 気になったけど、でもそのおかげでおじいちゃんが私を拾ってくれたんだし、そのなんやかんやには感謝してもいいかもしれないね。おじいちゃんはなんやかんやについては教えてくれなかったけど。
私とおじいちゃんが住んでいる森は、エリアル王国という国の中にあるらしい。危険な森らしく、実際に魔物なんかもすごくたくさん暮らしてる。でもいい子もいるんだ。ギャーちゃん(翼を広げたら15mくらいある怪鳥)はよく私を乗せてお空を飛んでくれるし、ガオくん(5m程の白い虎のような生物)もよく背中に乗せてくれるし、キュイちゃん(2m程の尻尾が9本ある白い狐。魔の森の中で一番強い)もよく一緒にお昼寝する。あの尻尾がふかふかでとても気持ちいいのだ。そんないい子たちばかりなんだから、危険だなんて言い過ぎだと思う。
外の魔物なんて、森の木々を大切にせず薙ぎ倒すし、弱い魔物なんかは食べられちゃったりする。食べるならまだしも、意味もなく殺す魔物もいるのだ。そんな魔物は大体キュイちゃんあたりがすぐに排除するが。私も何度か排除したことがある。そのときに見た魔物は、言葉も通じずいきなり襲いかかってきた。ああいった魔物こそ危険だと思うんだけどなぁ……
「ねー、キュイちゃんもそう思うでしょ?」
「キュ、キュイー(私たちをいい子だなんて言うのはミリアくらいのものですよ)」
「おじいちゃんだって、今はキュイちゃんたちのこといい子って言ってるよ?」
「キュキュ、キュイ(それはミリアの説得のおかげです。お爺様も最初は私をミリアから遠ざけようとしていましたよ)」
そうだ。おじいちゃん全然私の言うこと信じてくれなかったもん。キュイちゃんはいい子だって言ってるのに。
「キュイキュイ(お爺様が信じてくれないからって泣いていましたねミリアは)」
「そ、それは、だって、おじいちゃんがキュイちゃんのこと信じてくれないし、それに、あのときはまだ子供だったでしょ!」
なんだよその微笑ましい顔! 今はもうそれくらいじゃ泣かないぞ!
「キューキュキュイ(そうですね、泣き虫ミリアはもう卒業していますね)」
「そうだよー! 組み手だっておじいちゃんに勝てるようになったんだから!」
もうその微笑ましい顔やめろよー! とキュイちゃんと話しながら、子供の頃を思い出す。
おじいちゃんに拾われて5年、今から12年前の頃、まだおじいちゃんの家から出たこともなかった私は、家の外に興味を抱いた。
このころはまだ家の中しか知らず、森の魔物が危険だと信じて疑っていなかったため、外に出るにはおじたいちゃんみたいに強くならなきゃいけないんだ、と子供ながらに考えていた。なんせ、おじいちゃんは自分の何倍もあるような獲物を簡単に穫ってくるのだ。だからおじいちゃんに私を鍛えてほしいと頼み込んだ。
それからは体を鍛える日々だ。午前はずっと家の庭で全力での走り込み、午後は日が暮れるまで武術の型の反復練習、一通りこなしたらおじいちゃんとの組み手を行う。
おじいちゃんはやっぱりすっごく強くて、どんなに必死に攻撃しても掠らせてもくれない。それが悔しくて、でも誇らしかった。悔しいものは悔しいから、より必死に鍛錬に励んでいったけれども。
「そろそろ魔法も教えてやろうかの、ミリアや」
鍛え始めて一年が過ぎるくらいのころ、この一言から魔法の練習が始まった。
「いいの!? やったー!! これで私もおじいちゃん見たいにかっこいい魔法が使えるようになるんだね!」
……なんて、最初はすっごく嬉しかったんだけどなぁ。
現実はそんなに甘くは無かったわけで。
「ミリアよ、お前、その、なんだ……」
「どうしたの? おじいちゃん」
魔法の練習を始めて少ししたころ。最初は、おじいちゃんが「ミリアは魔法の天才かも知れんのう。まだ初歩の無属性魔法とはいえ、これほどの早さで習得するとは……」って褒めてくれて、それが嬉しくていっぱいがんばっていたんだけど。
「ミリア、落ち着いて聞くんじゃぞ。その、お前にはのう……」
「うん」
「属性魔法の適性、才能が、かけらも無いんじゃ……」
……えっ?
「ほ、ほんとうに……?」
嘘だと思って、でも、おじいちゃんは否定してくれない。
「じゃあ、おじいちゃんみたいに、火を出したり、凍らせたり、出来ないの……?」
悲しくて、目尻に、涙が溜まってく。
「じゃ、じゃが、確かにわしみたいに属性魔法は使えんが、しかし、適性が無いだけで、お前の魔法を扱う才能はすさまじいものがある。だからそう悲しまんでくれミリアよ。わしはお前の泣くところは見たくないんじゃよ……」
「まほう、を、あつかう、さい、のうって?」
必死に泣くのを我慢しながら、なんとかおじいちゃんに聞き返す。
「うむ。お前は、ただ属性魔法が使えんだけで、お前ならば、無属性魔法だけでも、わしのように強くなれるとも!」
おじいちゃんの言葉に、一気に顔が明るくなる。
「ほんとっ? 私、おじいちゃん見たいに強くなれるんだね! がんばって、無属性魔法いっぱい練習する!」
私の言葉に、おじいちゃんが胸をなでおろしていた。
それからは、魔力の細かな制御や無属性魔法の習熟に力を入れていった。その甲斐あってか、おじいちゃんの言ってた通りに、無属性魔法だけでおじいちゃんとも戦えるようになっていった。さらには、おじいちゃんですらまだ理論を構築しただけで習得はしていなかった、周囲の魔力を吸収して自分の魔力にする技術も習得できた。
おじいちゃんは「もう魔法に関して教えられることはないのう」と嬉しそうに笑ってて、ああ、あの時に諦めないで、一生懸命がんばって良かったな。って、私も嬉しくなった。
組み手でようやくおじいちゃんに攻撃を当てられるようになり、魔法も、無属性魔法を極め、魔力吸収を習得したとき、ようやくおじいちゃんから家の外に出る許可が降りた。
意気揚々と家から一歩を踏み出し、森の中を歩き回る。そうやって森の中を歩いているときに、最初に出会った魔物が白い九尾の狐、キュイちゃんだった。白い狐は最初、警戒していたのか、私の様子をじっと見つめていた。だけど、私が目の前の白い狐のかわいらしさと私の髪と同じ色という親近感から思わず抱きつくと、警戒を解いたのか、ふさふさした尻尾で私を包んでくれた。以降キュイちゃんとは大の親友である。ギャーちゃんやガオくんとも同じように仲良くなり、今では森の中でみんなと遊ぶのが大のお気に入りとなっている。
そうやって大好きな魔物たちやおじいちゃんとの生活が、いつまでも続いていくと思っていた。
そう、信じてた。
おじいちゃんが倒れるまでは。
おじいちゃんが倒れて1ヶ月が経った。
看病なんて当然したことのない私じゃ、まともにおじいちゃんを看れるはずもない。
「おじいちゃん、大丈夫? 私、おいしいご飯も作れないし、おじいちゃんを元気にしてあげられないよ……ごめんなさい……」
でもつたない看病でも、おじいちゃんは嬉しそうに笑ってくれた。
「ミリアがそばに居てくれるんじゃ、これ以上嬉しいことはないわい」
そう言って、本当に、嬉しそうに笑ってくれたんだ。
そんな嬉しそうな笑顔のまま、おじいちゃんは、息を引き取った。
ミリア、自由に生きなさい。
それが、おじいちゃんの遺言だった
おじいちゃんのお墓を家の庭に作り、おじいちゃんの遺言について考える。
考えて考えて考えて、私は、おじいちゃんが見てきた世界を、見てみたいという結論をだした。
きっと、おじいちゃんなら、いつまでも家に引きこもっていたら、私を怒るだろうし、おじいちゃんの見てきた世界を見て、もっとおじいちゃんのことを知りたいとも思った。
キュイちゃんたちに旅に出ることを話す。ギャーちゃんとガオくんは、家は任せておけと頼もしく言ってくれた。キュイちゃんが何も言ってくれないので不安になったのだが、色々と考えた結果、家のことはギャーちゃんやガオくんに任せて私に着いてくるようだ。キュイちゃんが来てくれることが嬉しくてつい抱きついてしまった。
それから、旅の準備をしたり、家を出る前に、精一杯お掃除しよう、と色々とキュイちゃんと話し合っていたとき。よその魔物が森に侵入してきた感覚があった。
「キュイちゃん、侵入してきたよ」
「キュイー(そのようですね、しかし、この森の魔物たちならば問題なく排除できる程度の魔物ですし、放って置いても大丈夫でしょう)」
じゃあ放って置こうかなぁ、と考えていると、唐突に、森の中に、人間の気配が現れる。
この森に人なんて、私とおじいちゃん以外に見たことの無かった私は、ちょっと興味がわいてきた。
「キュイちゃん! 人の気配だよ! 私おじいちゃん以外の人って見たことないし、見に行ってみようよ!」
「キューキュ(オススメはしません……が、ミリアを傷付けられる力があるようにも感じられませんし、まぁ、行ってみましょうか)」
気配がある場所に到着して目にした光景は、例の魔物が、二人の人間を、ゆっくりと楽しむように殺そうとしているところだった。
急いでその場に割り込み、とりあえずは魔物を軽く殴って二人から距離を離す。
ある程度離れたのを確認してから、無属性魔法の「マジック・レイ」を放つ。さほど威力のある魔法じゃないけど、この程度の魔物なら問題なく倒せる。
目の前の魔物の悲鳴が鳴り止み、その体が地面に倒れ伏してから、改めて後ろにいる二人に向き合った。
これは、後から二人に教えてもらったことだけど。
おじいちゃん以外に初めて出会った人間は、違う世界から来た人でした。
これからガンバリマス!
改めて、毎日更新できる人ってすごいとおもった(小並感)