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ひとくち語  作者: 柚紀
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心の闇

 なにか面白いことがやりたい・・・

 面白い場面に遭遇したい・・・

 面白い人に会いたい・・・

 面白い話が聞きたい・・・

 面白い話をしたい・・・

 面白いものでありたい・・・


 ・・・面白いってなんだろ?

 ・・・何を基準にしたらいいんだろう

 ・・・なんで面白いにこだわるのかな?


 平成二十四年十二月三十一日・・・大晦日。神奈川県某所。独身一人暮らし、彼女いない歴=年齢、家賃四万のボロアパート、田舎から上京して五年、アルバイト先と家の往復の毎日、なにも変化のない毎日。

 俺は思う・・・面白いことなんかないかな・・・。

 最近はバイト先でもよく怒られる、新しく入った女の子のバイトとたまたま一緒に帰っただけなのに、それを見た店長からの執拗な嫌がらせ。ほこりがまだ残ってるぞ、など姑のような嫌がらせ・・・。

 いい加減イライラした俺は

「うっせぇぞ!クソジジイ!死ねや」

 ・・・と言えるわけもなく、そもそもその女のことは何もなかったし、その子は店長の嫌がらせで辞めちゃうし。ツイてない、全くツイてない。

 毎晩コンビニで缶ビールと安いつまみを買って、帰り道の河原でタバコを吸いながら独り言の恨み言をつぶやき、ビールを煽る。

 そんな毎日にウンザリしていた俺はある日、いつものようにコンビニでビールとつまみを買い、いつものように帰り道の河原に着いて、いつものようにタバコに火をつけようとした時、いつもとは違うものが目に入る。

 それは暗い闇に紛れていつの間にかそこにあった・・・今の今までそんなものは目に入らなかったのに、いつの間にかそこにあった。それは一冊の本、新品同様の本が一冊そこに置いてあったのだ。表紙には


『こころの隙間をお埋めします』


 ゾッとした、昔そんな言葉をどこかで聞いたことがあるからだ。それは身の毛もよだつような記憶と共にある言葉。唇が渇く・・・喉も渇く・・・顎がガタガタと震えだす・・・いつの間にか自分が泣いているのに気が付く。

「なんだこれ、なんだこれ、なんだこれっ・・・」

 頭の中が混乱して思考がまとまらない、脂汗をダラダラとかき始めた。黒い黒いその本は瞬きをする度に徐々に近づいてくるような感覚に落ちいる。

「来るなぁ、来るな、来るなー」

 自分に近づいてくる計り知れない恐怖に悲鳴にも近い声を上げる。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで・・・・・・・・・・・・・・。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い・・・・・・・・・。はやくここから離れないと、なんかヤバい、なんかヤバい、なんかヤバい。頭の中で警報が鳴っている。しかし俺の身体はその本を手に取る。ダメだ、ダメだ、ダメだ・・・。やめろやめろやめろ・・・。どんなに頭の中で叫んでも身体は意思とは違う反応をする。身体から思考が切り離されたように。すると


「その本は読んではダメですよ」


 後ろからいきなり声をかけられる。ビクッっと急に話しかけられたのに反応して方が吊り上げり固まった。そしてゆっくり振り返ると・・・そこには誰もいなかった。不思議に思いながら再び持っている本に視線を向けると、その手には本などもともとそこにはなかったかのように跡形もなく無くなっていた。周りを見渡してもどこにも異常はなく、いつもと同じの河原風景だった・・・。俺はタバコに火をつける・・・微かに手が震えていた。なんだったんだろうと思いながら河原を後にした。


 その次の日、店長が亡くなったという話を聞いた・・・なんでも強盗にあったとか。それからそのバイト先には顔を出していない。 

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