夜空を灯す流れ星
ぽっぽっぽっ
オレンジ色に染まる空が、ペンキをこぼしたようにゆっくりと夜色に変わる頃。
ぼくたちの仕事は始まる。
ぽっぽっぽっ
空にひとつずつ、星を灯すお仕事だ。
人が道に迷わないように、
一人でいても寂しくないように、
誰かを重ねて幸せに思えるように、
夜色に咲く花畑のように星がキラキラと瞬いていく。
ぽっぽっぽっ
雲の小舟に乗って、すいとひと漕ぎ。
ぽつりぽつりと浮かぶ星にきらきらを灯していく。
「わっ!しまった!」
ポロリとこぼれ落ちた星は、しゃらしゃらと流れるように光を灯したまま街の向こうへ消えてしまった。
「あーあ、ひろいに行かないと」
流れる星を見送っていると、仲間の誰かがそう言った。
面倒だなあ、とぼくは小舟ですいと広い空の向こうへ漕ぎ出す。
ひとの街へ来るのは初めてだ。
きょろきょろとあたりを見まわすと、電球の明かりがまぶしいくらいにギラギラしながら街を包み込んでいた。
街から見上げた夜空。
キラキラと瞬く星たちがとても小さく見えた。
ぼくたちは一生懸命 星を灯しているけれど、街の人は星なんて見ていないのかもしれない。
「ちぇ、なんだよう」
ぶつくさとやるせない気持ちで、街の向こうへ流れていった星を探す。はやく見つけて夜空に帰ろう。
「星を見ませんでしたか?」
建物の影に隠れたねずみさんに聞いてみた。
「ちゅ?上を見てごらんよ、そこにあるでしょ?」
テコテコと塀の上を歩くねこさんに聞いてみた。
「星を見ませんでしたか?」
「にゃ?オイラまんまるお月様しか興味ないにゃあ」
しばらく歩くと、窓から夜空を眺める女の子。
その両手にはキラキラとした星が宝物みたいに包まれている。
「お嬢さん、その星は……?」
「これ?流れ星を捕まえたの。とても素敵でしょ?」
にこにこと笑う女の子。
ぼくが間違えて落としてしまったのに、どうしてこんなに嬉しそうなんだろう。
「それはぼくが落としてしまった星なんです、夜空に星を灯すのがぼくの仕事なんです」
「そうなの?とても素敵なお仕事ね!」
ぼくが星をひろいに来たことを話すと、女の子はキラキラとまぶしい笑顔を浮かべた。
でもぼくは、女の子の言葉が嬉しいはずなのに素直に喜べない。
「素敵なお仕事かな?街のほうが明るいし、星なんて誰も見てくれてないんだってぼくは悲しくなったよ」
しょぼくれるぼくに、女の子は首をかしげながらゆっくりと教えてくれた。
「みんな当たり前だから気付いてないだけだよ。
悲しくて一人になりたいときや、大好きな人と一緒で幸せだなって思うときは空を見上げるの。
そこにある当たり前のキラキラに心が温かくなるんだよ。
なかでもとびきり嬉しいのは流れ星。
流れ星は願い事を叶えてくれるんだよ」
女の子の手のひらの中でキラキラと光る星。
街を歩くひとたちも、星の灯りを当たり前にあることだと、かけがえのないものだと思ってくれていたのかな。
「君はもうお願いしたの?」
「私の願いごとはね、 」
それを聞いて、ぼくはとても優しい気持ちで小舟を空へ漕ぎ出した。
夜空に戻ったら、また星を灯そう。
星を拾ってくれた優しいあの子の願いが叶うように、流れるように星を揺らそう。
きらきらきら
しゃらしゃらしゃら
瞬く光が、きらりと何本もの光の道になって夜の向こうに消える。
たしかに、とても綺麗だ。
ぼくの仕事は星を灯すこと。
今日も誰かの心を灯すように、
ぽっと夜空を彩るのだ。
おわり
「 」部分には、自分の願い事を思い浮かべてほしいです。
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