新年おめでとう 〜ゲーム攻略中〜
「あと少しで新年だね」
カチャカチャカチャ。
「そうですね」
「何やってんだろ……私ら」
「そんな悲観しないで下さいよ。こっちまで冷静になる」
カチャカチャカチャ。
「でもねぇ、これはねぇ、何というかぁ、やってる意義がもう分からないよ」
「僕らが始めた物語ですよ。この対決は」
「だとしても投げ出したいよぉ……なーんでクソゲーのクリア対決する羽目に……」
「僕らゲーム部。どんなゲームにもヘコまず進め!がモットーなんですから、これくらい諦めないで下さいよ」
カチャカチャカチャ。
「諦めかけるよ!勝ったら勝った相手のどんな命令も聞くって部長が企画したけどさ!やるゲームがクソゲーなんて思っても見なかったよ!」
「普通のゲームじゃつまらないと考えた部長の策略。あのゲス顔が今でも思い浮かびます……」
「冬休み特別企画……部員同士が二人一組となり、部長が用意したゲームで先に勝った方の命令を聞く……悪魔の誘い!悪徳業者!」
カチャカチャカチャ。
「で、参加したのにも関わらずにゲームと企画を放棄した場合。双方のゲームのクリアデータが無ければ罰ゲーム。部長が自腹でクソゲーを用意してくれたお陰ですよ。こんなことさせられているのは……」
「本当にやってくれたよ部長は……あっ」
ダンッ!!
「だ、台パン……?あー、詰みですね。バグって裏世界に突入しちゃいましたか」
「クソゲー、クソゲー、クソゲー!まとめサイトに堂々と二位になったのも納得の出来!まともに、まともにクリアさせる気が無いでしょ……」
「ですね」
カチャカチャカチャ。カチャカチャカチャ。カチャカチャカチャ。
「あっ、もう一時か……」
カチャカチャカチャ。
「新年おめでと」
「おめでとう御座います。あぁ、鐘の音が聞こえてくる……」
「うん、私も聞こえてくるよ。この盛り上がらないbgmに紛れて……ごーん、ごーん、って鳴る鐘の音が」
カチャカチャカチャ。
「……」
「……」
カチャカチャカチャ。
「あっ、そこでセレクトボタンを連打したらバグったよ」
「そちらこそ、そこを会話スキップのA連打をすると会話が無限ループしますね」
「もうお互いに攻略情報を交換しないと終わりませんね」
「そーう、だね。まぁ超かさ増し激薄ゲームじゃ無いだけマシなんだけどねー。このゲームは」
「ただし攻略情報が無いと詰まる攻略ヒント品薄RPGで、バグが常態化しているクソゲーなのは間違い無いですけど」
「ははははは……」
「はっはっはっはっは……」
カチャカチャカチャ。
「あー、虚無」
「同意します」
「……後輩くん。スマホ借りるよ」
「良いですけど……おー。リセットしてからもうそこまで到達しましたか。それで何を調べて?」
「弱点」
「中ボスの弱点を今更調べているんですか。もう何度も突破したでしょう」
「虚無過ぎて弱点忘れた」
「あー……」
カチャカチャカチャ。
「ありがと……ふあ、あぁ」
「ふあ、あぁ」
「移ったね」
「欠伸が移りましたね」
カチャカチャカチャ。
『デン♪デデデデ♪デッデン♪』
「通常雑魚戦bgm……じゃ無い?!この固有bgm。もしかして」
「はい。やっっっとラスボスです」
「おめでとう……おめでとう……おめでとう……味方のステはどれくらい?」
「主人公と初期メンはレベル完凸。ドーピングアイテムで一部ステ完凸。途中加入と途中離脱のキャラは全く」
「やっぱり離脱キャラは完全離脱の方が良かったよね。なーんで二章で離脱したキャラが最終章でパーティに入るかなぁ。しかもレベルが初期の一桁のままだし」
「パーティメンバーは全員戦闘に出る仕様の上に、キャラの誰かが死んだら全滅扱い……手汗がヤバいですよ先輩……!」
「がんば。もうこんな罰ゲームなんて終わらせて。疲れた」
カチャカチャカチャ。カチャカチャカチャ。
『デウンデウンデウンデウン……デッデッデッデ♪!』
「だっ……」
「第二形態……嘘?!攻略にはラスボスに第二形態があるなんて無かった。スマホもっかい借りるよ!」
『デウデウッデ♪ デウデウッデ♪』
「後輩くん悪いニュースと良いニュース。どっち聞きたい?」
「……」
「あらら……固まってる。まぁ取り敢えず悪いニュースから。調べた結果、稀にバグってボツになったはずのラスボスの第二形態データが出張って来ちゃう。良いニュースは、第二形態のラスボスに勝てばそのままエンディングに直行。あっ、悪いニュースがまだあった。負けたらフリーズしてデータリセット案件になるよ」
……
「あ、あ、あ、畜生!先輩!第二形態のステータスは?」
「無い」
「な、無い?」
「うん。無い。めっちゃ珍しいバグだし、基本的にクソゲーのラスボスならまだしも、没になった敵のステータスまではサイトに無い」
「……自力かぁ……状態異常とか効くかな……」
「ちょ、ちょっと?自暴自棄にならな……ん?」
『ポココ。デウン、デッ!』
「毒になった。しかも効いた……」
「待って、このゲームの毒って……」
「敵味方関わらず最大HPの割合ダメージ。つまり、耐えれば勝ちですね」
カチャカチャカチャ。
『ポココ。デウン、デッ!』
「油断しないでよ」
カチャカチャカチャ。
『ポココ。デウン、デッ!』
カチャカチャカチャ。
『ポココ。デウン、デッ!』
カチャカチャカチャ。
『ポココ。デウン、デッ!』
カチャカチャカチャ。
『ポココ。デウン、デッ!デッ、デデデェ……デウンッド!ポポポーポーポッポポ』
「終わった……」
「片方だけで良いんだよね。クリアデータ」
「そのはずです」
「解放された……クソゲーから……」
「……先輩。あれ、して良いですか?」
「んー?あー、相手の命令を聞くってやつ?良いよ何でも言って。最終的に勝ったのは後輩くんだし」
「先輩に……命令と言うか……願望ですけど……」
「なに?もう瞼が限界だから、脳が限界だから、早く、早くしてぇ……」
「えっと、その……僕と、付き合って下さい!」
「……すぅ」
「……」
「……すぅ……すぅ」
「ね、寝てる?!……あっ、僕も限界」
その後、寝起き早々に告白し、先輩の前日までのクソゲーの疲れと驚きと衝撃で壁に頭を打って気絶。復活後、後輩は慣れた様子で淡々と三度目の告白を決行。
三学期の初頭、距離が近くなった二人がゲーム部で目撃されましたとさ。ちゃんちゃん。




