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回想:フィアナ視点

 ルミーナ・エルファリア嬢。

 銀髪碧眼の“天使”――学院中が彼女をそう讃えていた。


 わたくしも、そう思った。

 初めて彼女を目にした瞬間、胸が苦しくなるほどに美しかった。


 でも同時に、こうも感じた。


 


(――あの瞳、覚えている)


 


 数年前の夜。

 城下で男に絡まれたわたくしを庇った、黒衣の剣士。

 彼女は男装していたが、気づかないほどに鈍くない。


 鋭く、美しく、毅然として、そして――優しかった。


 


「無事か?」

 そう言って、差し伸べられた手。


 剣を収めたあとの、あの人の背中が、今でも夢に出てくる。


 


 わたくしは、あの人に恋をした。

 出会った瞬間に。

 名も知らぬ騎士に、少女のままの心で。


 


 そして今――あの瞳が、ルミーナ嬢に重なる。


 確証などない。

 でも、心が覚えている。

 彼女が、わたくしを守った“あの人”だと。


 


(ああ、また会えたのですね)


 それだけで、胸がいっぱいになる。


 この距離で見られる。

 声が聞ける。

 笑顔を見られる。

 それだけで――十分。


 


 わたくしは、きっと恋に報われたいとは思っていない。


 


(あの方は、何かをしようとしている)


(ならば、邪魔はしない。わたくしは――見届けるだけ)


 


 そして、必要とあらば、

 その“罪”すらも引き受ける覚悟がある。


 


(あの人が仮面を脱げる日が来るなら。

 その背中を、自由にできるのなら――)


 


 わたくしは、自分の感情を隠し、静かに微笑んだ。


 この恋は、騎士への恋。

 “騎士”である彼女の選ぶ道を、わたくしは見守りたい。


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