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後妻に入ったら、夫のむすめが……でした  作者: 仲村 嘉高


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8/20

08:奇行




 私は、今までで1番と自負する笑顔をレグロへと向けました。

「この方々をお呼びしてお茶会をしたいそうなのですが、開催してよろしいのですね?」

 あまり評判の良くない貴族男性と、平民まで入っている名簿です。しかも既婚者まで入っているのです。

 レグロがザッと目を通し、顔色を変えました。


「普通のお茶会ではなく、部屋を開放してスワッピン? とかをするそうですわ。私はそのようなお茶会は開催した事が無いので、私では出来ないとお伝えしました」


 スワッピン? の意味は、クルスとマーサが説明してくれました。

 仮面舞踏会を更に性行為に特化させたようなもので、一夜に複数を相手にする事だそうです。夜とは限らないので、時間内と言った方が良いのでしょうか。

「正しくは、スワッピン()です」

 クルスが間違いを指摘してくれました。



 レグロは渡した紙を握りしめ、私を睨み付けました。

「開催するならば、詳しい方をお呼びします」

 お茶会では聞いた事ありませんが、夜会では助言してくれる方を雇う事もあるそうです。

 特殊なお茶会ですし、私は関わりたく無いですし、1番良い方法だと思います。


 暫く無言で私を睨み付けていたレグロですが、そのまま何も言わずに食堂を出て行きました。

 自室に戻るまでに何度か壁を殴りつけてましたけど、レヒニタさんは殴らないでくださいね。

 侯爵家の醜聞になりますので。




 その日から、レグロの行動がおかしくなりました。

 まず、洗濯係のメイドに変な質問をし始めたのです。

「あの日、シーツに血の跡はあったか?」

 そう言って、何年も前の事を聞き回っているそうです。

 洗濯メイドは「当時、血液の汚れは一度もありませんでした」と答えているのに、何度も聞きに来られて困ると相談されました。


 意味が解らないでいると、マーサに「カリナ様のは私がこっそり処理しておきました」と耳打ちされました。

 あぁ、そういう事ですね。

 思わず頬が熱くなりました。

「しかし、それは個人差があると聞いた事があります」

 年の離れた方へ嫁いだ友人は出血が無く、純潔を疑われたのではと心配していました。

 それは杞憂で終わったそうですが……。



 最近変わったといえば、レグロが毎日朝食の席に着くようになりました。

 何か言いたそうに私を見ているのを感じますが、敢えて視線を合わせずにいます。

 レヒニタさんは、淑女教育の授業に一切顔を出さなくなりました。

 メイドに呼びに行かせますが、体調が悪いと部屋から出てきませんし、こちらから訪ねても、扉を開けてくれません。


 彼女付きのメイドから、食事も完食しているし、湯浴みもしていて、特にどこか変わった様子は無いと報告を受けているので、暫くは放置の方向で良いでしょう。




 結婚して3ヶ月が過ぎました。

 今日の夜は、お祝いをする予定です。

 レヒニタさんが妊娠したのです!

 昨日、突然レグロが医師を呼ぶように執事へ命令し、呼ばれた医師がレヒニタさんが妊娠していると診断したのです。

 レグロは余程驚いたのか、何度も何度も確認していました。


 あの爛れたお茶会は中止になって良かったですね。

 あの頃にはもうお腹に赤ちゃんがいた計算だそうですから。



 夜、初めて家族揃っての食事です。

 2ヶ月ぶりに会ったレヒニタさんは、妊婦なのに体の線が露わになるドレスを着ていて、ポッコリとしたお腹や大きくなった胸を強調しています。

 私に対する優越感の表れた服装なのでしょうか?

 申し訳無いけど、レグロの子供を妊娠したレヒニタさんを羨ましくは思いませんけどね。


 レヒニタさんの椅子は、執事が引きました。

 前の溺愛ぶりならばレグロがエスコートすると思っていたので、少し驚いてしまいました。



 食事中、レヒニタさんの使うナイフやフォークの音が食堂内に響きます。

 さすがに咀嚼音を立てるほど下品な食べ方はしていませんが、口の中に食べ物が入っているのに話すのは止めて欲しいです。

 しかしここで注意すると、レグロが不機嫌になるので止めておきましょう。


「ねぇカ()ナさんは、子供いないの?」

 レヒニタさんがニヤニヤしながら質問してきました。両肘をテーブルに突いてパンをちぎり、それを口に入れながら話しています。

 私は口の中の物を嚥下して口元を拭ってから、話し始めました。

 ゆっくりとした動作なのは(わざ)とです。


「そうですね。今のところ子供はいません」

 私の言葉をどう捉えたのか、レヒニタさんは大口を開けてあははは、と声を出して笑いました。

「今のところ? レグロとヤッてないのに出来るわけないじゃん。馬っ鹿みたい」

 レヒニタさんがお皿の上にあったミニトマトを手で持ち、口の中へ放り込みました。




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