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後妻に入ったら、夫のむすめが……でした  作者: 仲村 嘉高


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20:深い森とアクマと愚かなむすめ




むかしむかしあるところに、とてもごうまんで自分勝手な王様がいました。


王様はとてもかしこい王妃様と結婚して、とても優秀な王子様がいたのに、お城に遊びにきた妖精に恋をしてしまいました。


妖精には愛する青年がいたのに、王様は妖精を捕まえて、カゴに閉じ込めてしまったのです。


妖精は泣いて泣いて、とうとう溶けてしまいました。

それでも王様は、妖精を返さずにずっと持っていました。

妖精だったものは、いつの間にか卵になっていました。


王様のお母さんは、せめてものつぐないとして、その卵を妖精の愛する青年に渡しました。



卵から生まれたのは、妖精に似て美しく、王様によく似た自分勝手なアクマでした。


アクマは自分のために、他人を傷つけることを平気でしました。

楽しいからと、町から愚かなむすめを連れてきてそばに置きました。

そしてその愚かなむすめの世話をさせるのに、けなげな娘をさらって来たのです。



妖精を愛していた青年は、アクマを人間として育てようとしていましたが、けなげな娘をさらって来た事を知り、全てをあきらめました。


けなげな娘を助け出した後、青年はアクマを深い森の中へ閉じ込める事にしました。 

その時に、王様もいっしょに閉じ込めました。


それを手助けしたのが王子様です。

王子様は王様のした事が許せず、いつか同じことが王様の身に起こるようにと、神様に祈っていたのです。


愚かなむすめは、とても愚かだったので、自分からアクマといっしょにいる事をえらんでしまいました



アクマと王様と愚かなむすめは、深い深い森の奥で、さびしく泣いて暮らしました。

神様が二度と出られないようにしてくれたのです。



悪いことをすれば、自分の身に戻ってくるのです。

他人を傷つければ、自分も傷つけられるのです。

愚かな人間は、気づかないうちにアクマと同じになってしまっているのです。


だからそうならないように、人にやさしくしてあげて、おべんきょうもいっぱいしなくてはいけないのです。



『深い森とアクマと愚かなむすめ』


おしまい




「おかあさま、ごうまんってなあに?」

 子供が絵本を読んでくれた母親に聞きました。

「偉そうにする失礼な人の事よ」

 説明をしながら、子供向けなのに『傲慢』は難しすぎるわね、と母親は思いました。


「ふかい森って、お城の森のこと?」

 子供が更に質問をしてきました。

 この国では、子供が悪さをすると「お城の森に捨ててしまうぞ!」と叱るのが常なのです。

「そうよ。あそこの森は、悪い事をした人が閉じ込められるのよ」

 昔は罪を犯した王族が閉じ込められる建物があったと、祖母に聞いた覚えがありました。



「むかしは王様って本当にいたの?」

 子供が聞いてくるのに、母親は首を傾げます。既に亡くなっている祖母の、更に母親が子供の頃には既に王制ではなかったらしい、と教えてもらっていたからです。

 自分も子供の頃に、母親に同じ質問をしたので確かな記憶でした。

 そうすると、百年以上前にはもう王様はいなかった事になるのです。


「いたのかもしれないけど、お母さんは会った事無いわね」

 自分の母親と同じ答えを、母親は口にしました。

 きっと将来、娘も自分の子供に同じ質問をされ、同じ事を答える事でしょう。




 遥か昔に書かれた王制廃止の歴史書が、時を()て子供の為の教訓の話になり、百年過ぎて、わかりやすい絵本へとなっていた。


 実際には、神様の手助けなど有るはずもなく、元凶であった愚王とその息子レグロ、むすめだったレヒニタは、武力により死ぬまで監禁された。

 レグロの愛人だった使用人二人は、実家に帰されたが、そのまま修道院送りになったようである。


 レヒニタの産んだ子は、隣国へ人質として差し出されたが、王制では無くなったのでそのまま隣国内で開放された。

 平民として、それなりに暮らしたようである。


 乳母が産んだのは娘であり、遥か遠い国へ側妃として嫁いでいった。

 何も交流の無い国であった為に、彼女が母国の土を踏む事は二度と無かった。それでも別棟で暮らすよりは、余程幸せだっただろうと推測される。




「ここから出さぬか! この役立たずが!!」

 無理矢理別棟へ閉じ込められた元王は、傲慢な態度を改めず、常に暴れていた。

 いつも優しく王族の鑑だと思っていた男の豹変した姿にレグロは呆れた。

 その不満の捌け口がレヒニタや愛人達に向いても、レグロは気にしなかった。


 レヒニタの事はもう愛していなかったし、妊婦には興味が無い。もう一人の愛人は、夜にだけ使えればかまわないと思っていたからだ。


 気付いたら、いつの間にか愛人達は居なくなっていたが、レグロは気にしなかった。若い使用人は他にも居たからだ。

 しかしいくらレグロが誘っても、女達はベッドを共にせず、力尽くで言う事をきかせようとしたら、逆に返り討ちに遭ってしまい大怪我を負った。



「いつかここから出て、あいつらに復讐してやる。儂を慕う家臣は多いからな!」

 傲慢を絵に描いたような元王は、毎日同じ言葉を繰り返した。

「その時はお前達も破滅だ!」

 全然言う事を聞かない使用人達にも、毎日同じ台詞を吐いていた。

 その度に食事にゴミを入れられたり、シーツを1週間以上替えてもらえなかったりと地味に報復されていたのに、懲りないようである。


 そして後世に伝えられた通り、王様とアクマと愚かなむすめは、生涯(しょうがい)深い森から出る事は出来なかった。




 めでたしめでたし……?



 終

最後までありがとうございました。

ブクマ・★★★★★評価ありがとうございます!


「とっぴんからりのぷう」とか「どっとはらい」でしめようかと思ったのですが、普通に「めでたしめでたし」にしました(笑)


[余談]うちの祖母は「とっぴんぱらりのぷう」ではなく「からり」でした。

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― 新着の感想 ―
とりあえず完結お疲れ様でした。 とっても面白かったです。 傍若無人な王、ダメ息子ざまぁ、気持ち良かったです。 色々疑問点はあるのですが、私は作品は作者の物と思っているので書きませんがあとがきの 「とっ…
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