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三節

「うーん」

僕は学校の休み時間、一人で頭を抱えていた。あの日、小説を書いていることを言ったのはいいものの、ストーリーが思いつかない。『愛と春』を題材にした小説は探せばかなりあるのだが、僕が書きたい小説はそんなものではない。

有名になるためではない。僕が君を想い君のためだけに書いたそんな小説を書きたいのだ。

しかし、そんな小説を書いたところで僕のエゴと成り下がり、題材を見失ってしまう。それはいやだ。どうせなら君の心を、感情を、表情を何もかも動かしたい。たとえ僕の心臓が止まったとしても、僕はそれを叶えたい。

「と言っても、まともに恋愛なんてしていない僕には書けないよな」

僕は鉛筆を置いて、窓の向こうに広がる校庭で遊び回る君の姿を見ていた。とても無邪気で太陽のように眩しい。

ふと僕と目が合った。それに気がついた君は僕の方に向かって笑顔とピースを見せた。

そして、友人と話して子どものように笑う君の姿を見て、僕は思った。

(そっか、別にそう難しく考えるんじゃなく、僕という人が描ける世界を表現すればいいだけだ)

そして、僕は君に向かって微笑み、再び鉛筆を取る。

あらすじはこうだ、元気に過ごす少年の側に現れた可憐な少女。

二人は恋に落ち、そして桜並木の側で小指を絡ませるんだ。

いつか、一緒に過ごすこと、つまりいつか、結婚することを約束した。

そんなありがちな物語、でも僕にはそれしか思い描けなかった。僕にとって春というのは約束した場所でもある。

「ヘイ静次、小説の調子はどうだい?」

いきなり肩に衝撃が来て、僕は身体を硬直させる。元気な君の声が僕の頭の中に響く。

「びっくりしたなぁ、、もうハル、急に脅かすのは止めてくれと言ってるよね」

「ヘヘッ、やーだね!静次って誂い甲斐あるもん。やめろって言うなら私、死ぬしかなくなるけど」

「冗談だとしてもやめて、泣くぞ僕」

そこまで言うが、君は笑う。

いつもこうだ、いつの間にか現れて、熱された雪のようにいつの間にか時間が溶けている。そして、春のように心地いい時間もとっくに変わってしまう。

「ハハッ!、、、ごめんごめん!静次のイジイジしてる姿って可愛いからさ!」

「だとしてもやっていいことの限度は守ってよね」

「分かった分かった!これからはしないって!」

そして、君は「もう授業始まってしまうから私行くね!」と自分の教室へと戻ってしまった。

滝を流れる水のようだ。寂しいはずなのにとても清々しい。斜陽に照らされた僕の机を見ると、どこかしらから入ってきた桜が気持ちよさそうに寝そべっていた。


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