ミサの過去
彼女の記憶の中で、三百年前の大雪原の夜が最も印象深かった。
エルフと魔族のハーフである彼女は、母親と共に部族を追放され、ナイフのように鋭い寒風が母娘二人の頬を容赦なく打ちつけた。まだ子供だった彼女は、母親にしっかりと抱きしめられていた。母の涙が彼女の頬に落ちた瞬間、それは氷となった。
無防備な母娘が大雪原をさまよう巨大な獣や凶悪な魔物にどう対処するかはさておき、この無情な自然の力だけでも、二人の弱い命を奪うのに十分だった。もし風雪を避ける場所を見つけなければ、母娘はこの雪原に二つの氷の彫像を増やすだけだっただろう。
強い母親はすぐに涙を拭き取った。それは、涙が目の中で凍らないようにするためでもあった。視界がぼやけると、母娘の死を早めるだけだからだ。
母親は小さな声で呟きながら、彼女の額に自分の額を軽く当てた。それは後に彼女が知ったところによると、娘への祝福の儀式だった。その後、母親は笑顔で彼女の額を撫でた。
「大丈夫よ、ミーシャ。きっと良くなるわ。」
ようやく物心がつき始めた彼女は、母親の背中に背負われ、何重にも重ねられた布と獣皮に包まれていた。それはおそらく、部族が二人に向けた最後の優しさだったのだろう。
母親がどれだけ歩いたのかは分からない。ただ、彼女は眠っては目を覚まし、また眠り、目覚めるたびに母親はまだ自分を背負って雪中を進んでいた。
再び目が覚めたとき、彼女と母親はすでに暗い洞窟に身を寄せていた。洞窟は広くなかったが、二人が風雪を避けるには十分だった。これで少なくとも、雪原の無名の氷像にはならずに済んだ。
母親は多くの枝を集めてきたが、ほとんどは湿っていた。使えるものだけを選んで一か所に積み上げた。
母親は指先で小さな炎を灯し、小さな薪を燃やした。母親は通りすがりの魔法使いから教えを受けたことがあったが、それだけだった。教育のレベルも、母親自身の才能も限られていた。
「どう?ミーシャ。ママはやっぱりすごいでしょ~」
エルフはもともと高い魔力適性を持っているが、個体差があり、巨大な魔力を持ちながらもうまく使えない者もいる。
彼女の母親は、まさにその「幸運な者」だった。
当時まだ幼い彼女にとって、母親はいつでもすごかった。母親は万能の象徴だった。
火の光が母親の顔を照らし、その上に浮かぶ笑顔は、どんなものよりも輝いて見えた。
「うん!ママが一番すごい!」
彼女の幼い認識の中で、この時の火の光が未来の道を少しずつ照らしていくと思っていた。しかし、この火の光は弱く、一片の塵でもその輝きを消してしまうほどだった。
その後数日、母親はたくさんの乾いた枝を洞窟の一方に積み上げ、湿った枝を束ねて、洞口をちょうどふさぐ扉にした。寒風は何とか外に閉じ込められた。
母親が外出して戻るたびに傷だらけで、冷たく赤く腫れた手には、二人の食料である処理の雑な野ウサギが握られていた。
調味料はなく、ただ簡単に火で炙っただけだったが、この簡素な食べ物は、部族で食べたどんなものよりも美味しかった。
夜、母親は彼女の頭を撫で、柔らかな頬を揉んだ。その手は数日で傷だらけになっていたが、最後に額に軽く口づけして、「おやすみ」と静かに囁いた。
外では風が猛威を振るっていたが、二人はその咆哮の中で寄り添い、夢の中に入っていった。
翌朝、彼女が目を覚ますと、母親はもうそこにはいなかった。代わりに、見知らぬ男性が彼女の隣に静かに座っていて、目を覚ました彼女に安心するような微笑みを向けた。
「おはよう、ミサ。」