次の物語の幕が上がる前に
上昇。
上昇。
上昇。
目に見えない圧力に押されながら、遠ざかっていく。
未来と希望が生まれる場所へと上昇していく。
ここは銀河より広大で、世界よりも高遠だ。
ここは世界峡間。
奇々怪々な世界がここで生まれ、遠い昔の世界がここで崩壊し再生される。
神話や叙事詩がここには数えきれないほど存在する。
馴染みのある感覚をたどり、馴染みのある場所を見つけた。
それは客観的に世界峡間に存在しており、彼にとってすべての旅の終わりに帰る場所だ。
寝室のドアを開けた瞬間、頭の中に声が響いた。
「また追い出されたか?」
「また、はやめてください、ディスさん。」
彼の落ち込みを感じ取ったのか、その声には慰めの気配が漂っていた。
「それで、会いたかった人には会えたか?」
「会えました。ミサは元気にしていて、もう見分けがつかないくらいです。」
「なら、喜ぶべきだ。追い出されたのは初めてじゃないだろう?」
この言葉に彼は顔を覆い、さらに落ち込んだ様子を見せた。
「まだミサと遊び足りないよ。彼女が大きくなるところもまだ見てない!」
「確か、あの世界の長寿族は二百年で成人だと聞いているが?」
「父親にとって、娘はいつまでも小さな子供だよ!」
ここで彼は何かを思い出したようで、真剣な表情を浮かべて椅子に座り直した。
「ところでディスさん、最近のヴィセロスの動向を知ってますか?」
「彼か?君は彼とあまり仲良くないだろう、どうして彼のことを聞くんだ?」
「少し用事があってね。」
「彼はまたある世界で騒ぎを起こしたらしい。その世界の意志は生まれたばかりで、ほとんど彼に乗っ取られたようだ。」
「やっぱりあいつは落ち着かないやつだ。」
彼は椅子の背もたれに体を預け、眉をひそめながら友人兼先輩の解説を聞いていた。
「そうだ、一界通暦前、彼が君に世界の座標を渡してくれと私に頼んだ。」
彼がくれた世界の座標だと聞いて、彼はさらに眉間にしわを寄せた。
「次に行く世界はもう決めている。この座標は後に回すよ。」
「機会があれば、私もその世界を見に行くつもりだ。」
「ディスさん、最近どこにいますか?」
「面白い世界を見つけたよ。私が以前住んでいた世界に似ている。」
彼はディス、ディストラの過去を思い出した。それは“彼”がかつて世界の意志として治めていた世界の話だった。
「機会があれば、私もその世界を見に行こう。」
「はは、それじゃあ君が来るのを待っているよ。しばらくしたら、また元の世界に戻るから、その時は連絡がつかないかもしれない。」
「私もだ。」
「今度時間があったら、楓も呼んで、いつもの場所で最近行った世界の話でもしようか?」
彼は顔をしかめ、不満そうな様子を見せた。
「彼女か?まぁいい、後で連絡してみるよ。今頃、彼女は私が以前行った世界にいるはずだ。」
少し雑談を交わした後、通信が途切れた。彼はしばらく天井を見つめていたが、突然立ち上がり、書斎に向かった。本を一冊取り出し、書棚に戻すと、さらに二冊の本を引き出した。
一冊は空色の表紙で、それを机の中央に置き、もう一冊は茶色の表紙で、それを机の隅に置いた。その上にある文字は奇妙で、一瞬歪んだかと思うと、彼が読める文字に変わった。
彼は先ほど棚に戻した本を手に取り、簡単にページをめくってから、頭を振った。
思った通り、その本には他人の筆跡が混ざっていて、内容が混乱していた。
彼はその本を元の場所に戻し、ベッドに向かって体を横たえ、ゆっくりと目を閉じた。
次の旅が始まる前に、彼は少し休み、旅の中で起こった出来事を消化する必要があった。