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7 暴走する心と身体

ー好きー



ようやく気付けた。こんなの今更遅いのかもしれない。

それでも何もしないよりはマシだ。

私は今までの態度を謝罪したい。そして、ちゃんと向き合いたい。…まずはそこからだ。


そして、いつか告げる。

白い結婚ではない、本当の結婚相手として見て欲しいと。


考えながら歩いていたらいつの間にか中庭の奥にまで入り込んでいたらしい。確かこの先は東屋があったはずだ。


『~……』


風の吹く音に紛れて聞き覚えのある話し声が聞こえた気がした。

それと…もう一人。


どくり。心臓が大きな音を立てた。

まさか…そんなこと。


あるはずがない。

そう思う私の心とは裏腹に、真実は私の前に姿を見せる。ミリフィーナだ。そして、その笑う瞳の先にいるのは私と同じくらいの年の青年。


…あれは、確かミリフィーナの公爵領に隣接する侯爵家の嫡男、リヴィウスか。幼馴染みだと聞いているが、何故彼がここにいるんだ。


物凄く胸騒ぎがする。

会話の内容は聞こえないが、とても楽しそうにしている。私といる時には見たことのない表情だ…。

このまま放置をしていたら、取り返しのつかないことになる。

多分この予感は、当たる。


ー私は駆け出した。



これだけの距離が物凄く遠く感じた。リヴィウスに笑い掛けるその笑顔を、何故私には向けてくれない?私のことが嫌いだから……?いや、違う。その男が好きなのか……っ。


リヴィウスは顔を赤らめながらミリフィーナの腕を掴んで真剣な眼差しで見下ろしていた。



ーーー奪わせてなるものか……っ!!!




『……もし。

もしも、今の状況が辛いと……嫌だと思う日が来たら……俺は……』



「私の妻に何をしている」


荒い呼吸に気付かれないように、息を整えながら静かに近づく。

私の存在に気づいたリヴィウスは慌てて謝罪をしながら一歩引いた。…ちゃんと分をわきまえている。

噂通り、有能な次期侯爵のようだ。だが、優秀であればこそ、ミリフィーナへの疑いは深くなる。


愛さない仮初の夫より、馴染みある有能な次期侯爵。

どちらが良いかなど、一目瞭然だろう。



硬直して動かないミリフィーナを無理やりその場から引き離し、私は自室に連れ込んだ。


感情の抑えが利かない。悪いのは私だというのに、謝らねばと考えていたのに、嫉妬で気が狂いそうだ。


腕の中に囲い、見下ろすミリフィーナは動揺のあまり赤くなったり青くなったりコロコロと表情を変える。普段見る淑女の仮面が外れていることに僅かな愉悦がもれる。


笑い掛けて貰えやしないのに、こんなことで悦ぶ自分に嫌気が走る。…恋とはこんなにも愚かになれるものなのか。



「……君はあの男にはあんな嬉しそうに笑うのだな」

「…え、なんのことでしょう?」


どうやら、自覚がないらしい。

それなら、そのまま気付かずにいて欲しいと思うのに、先程の光景を思い浮かべるだけで胸が苦しくなり、嫉妬の情念で何もかも壊してしまいたくなる。


「私には外向きの顔しか見せないのに、あの男とは随分楽しそうに会話していたではないか。


…好きなのか?」


「そんなまさか…っ」


好きなのかと聞けば違うと否定する。

だが、貴女は私にはあんな表情を見せてはくれないじゃないか。

貴女の、ミリフィーナの夫は私だというのに。



「それでも、君は私の妻だ。…そうだろう…?」


このまま、全て奪ってしまいたい。

自覚がないうちに丸め込み、私だけのものに。

…そうすれば、あの男にも他の者にも奪われることはもう出来ない。





「あ、あの、その、いきなりどうなされたのですか…っ!?い、色気が駄々漏れ……っ!!むりぃ…っ」




聞いたこともない動揺した声が腕の中から聞こえた。

顔を真っ赤にしてぐいぐいと胸を押し返そうとしているミリフィーナ。

……これは、嫌われては…いない?

もっと目を見て確認したい。


「……?色気………?君は私に色気を感じてくれているのか…?顔が赤い……ねぇ、こっちを向いて……?」


俯くミリフィーナの顎に手を添えて上向かせた。

目が合うと更に顔を真っ赤にして瞳を潤ませる。

……あぁ、可愛い。私の妻はこんなにも可愛い人だったのか。



「ひ、ひぇ……っ!!と、突然のSモード!!む、むむむむ無理です~!!!殿下が麗し過ぎてご尊顔を直視なんて出来ませんー!!」


「そうか…この顔は君の好みか」


悲鳴を上げているが、嫌悪感は感じていないようだ。

これなら、希望はありそうだ。


「好みとかもうそういう次元ではなく……!あぁあああ今まで貴族令嬢としての仮面被って必死に取り繕ってきたのにぃ…っもう、全て終わりだわ………」


今までの人生で、女性に纏わりつかれトラウマになってきたこの顔など嫌いでしかなかった。だが、今初めてこの顔に生まれたことに感謝している。


もう終わりだというミリフィーナは離縁…再嫁ぎ先…と不穏な言葉を口にする。無意識のようだが、そんなことさせるわけがない。


このままもし離縁などあろうものなら、先程のリヴィウスなどすぐに名乗りを上げるだろう。それどころか、他にも名乗り出るものが増えることまで想像出来る。

………このまま、()()()()()()()ならば。


なら、その状況を強制的に変えればいい。



「そうだね、もう終わりにしよう。これからはこの顔に慣れて貰わなければ困る。……ほら、慣れるためにもこっち向いて……?」


ー申し訳ないけれど、もう離さない。


「え………っな、なんでお顔がこんなに近くに…っ!!!」

「うん、慣れるにはこれが一番かなって」



そう言って笑顔を浮かべて口付けた。

何度も何度も、確かめるように。



「……ん…っふ…っ……ぁ」

「……そんな可愛い声出さないで。我慢できない」


深い口付けに頬を紅潮させ可愛い声をあげるミリフィーナに欲望が沸き起こる。繋ぎ止めるためだとか白い結婚をなかったことにするためだとかそんなこと建前で、ただこの腕の中に閉じ込めてずっと抱き締めていたい。



「……ふぇ…?な、ななななんでこんなことに!?」


動揺するミリフィーナは本当に可愛くて、これが淑女の仮面に隠された本当の顔なのだとしたら、愛しくて愛しくてたまらない。



「ふふ、何から何まで可愛い反応。今まで放置してきてしまった分、たくさん可愛がってあげるから……早く私に慣れて…?」


「ひゃああああ!!!」



**********


理性が焼き切れた私は、そのままの勢いでベッドにミリフィーナを連れ込み、朝まで離さなかったのだった。



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