第8話 なんの意味があるの?
「自分から遊ばれに来るってウケるんですけど。それに、さっきから睨んでくるけどそれはどういうつもりで向けてんの?」
案の定、私が睨むことにご立腹の様子。それならお前のイジメはなんのためにやってるのかと聞き返したくなる。だが、そこまでこの状況を理解してない私ではない。きっと難癖つけて何としてでも悪い方向に持っていくだろうから、自分から首を絞めることはしない。
「睨んでないよ。そう見えるのは角度的な問題だと思う」
我ながら適当な言い訳に口角が上がりそうだった。私の正面ではなく、左斜め前に座っているので普通に通りそうな言い訳だ。
「そんなわけ無いじゃん。さっきも目を合わせて睨んでたのに、良くも堂々と立場を弁えず嘘をつけるね」
立場とかこの場に置いても関係あるのか?足を組み替えて偉そうに問いかけるその姿はまさに癪に障る。私は嘘をつくことも、本当のことを言うことはなかった。
「それで、何して遊ぶの?私は早く1人の時間が欲しいの。こんなことで呼び出されて無駄な時間を過ごすのは好きじゃないからさ」
目も合わせず、無視したのだ。それも、今までとは違い、立場なんて毛頭考えることもなく今までの鬱憤を晴らすかのようにスラスラと。
もう1度言うが、状況は理解している。だが前言撤回だ。もうこの世界に来てから私は首を絞めてでも、こいつらに抵抗する気でいる。慣れとは恐ろしいもので、殴られても蹴られても罵詈雑言を刺されても、今の私の体は平気だと言っている。
「くっ!あんたねぇ!」
「あれれ、この世界に来てから歯向かいたくなっちゃったのかなー?」
キレる芽郁の隣でニヤニヤと不適で気持ちの悪い笑みを浮かべる結。落ち着きのある分、感情のコントロールは結が上らしい。
「歯向かう?別にそんなつもりはないよ。ただ、いい加減こんなことしても何の意味も無いことに気づかないのかなって、そう思うだけ」
「うわー、なんかウザいね。厨二病ってやつが出てきたの?真白さん」
明楽が横から不満気に入ってくる。どう考えてもウザいのはここに居るイジメっ子がそうさせているだけで、イジメなんてしなければこんな状態にはならずに済んでいる。自業自得の負の感情を人のせいにするなんて、都合のいい明楽らしいクズっぷりだね。
「真白、お前のやったことはこの世界に来たからって無くならないんだぞ?なのに人が変わったかのように被害者ヅラするなよ」
「……今度は君か。あのね、被害者ヅラしてるのは水樹だよ。いつまでも芽郁の噂を信じてるなんて水樹も恋バカなんだね」
「っ!?お前なぁ!」
あー、言いたいことを言えた。そう思い、内心ではスッキリした気持ち良さに浸っていた。水樹は殴りかかる手前で、なんとか堪えてる様子。芽郁も結も明楽も、それぞれムカついている面持ち。しかし、そのスッキリ感を一瞬で物理的に壊す女が、最後に残っていた。
「真白」
呼ばれてその方向を向くと――いつの間にか私の側まで来て立っていた七瀬が居た。そして時間にして1秒も満たない速さで私の腹部に全力に近い蹴りを入れ込む。
「――んっ!?」
思わぬ展開に、抗うことは出来ずモロにそれを受ける私は、途轍もない瞬間的な痛みとともに、二分の一程度に減らされた持続的な痛みに襲われる。
両手で腹部を押さえつけても痛みは引く気配はない。息絶え絶えにはならずとも、呼吸はとても苦しい。酸素を吸うのに必死だ。
「さっきから聞いてると一発やりたくてね。もう1回やられたかったらその生意気な態度を改めなくていいけど、嫌ならやめなよ」
いつもは寡黙のくせに、イジメとなると自慢の脚力でボコボコにしてくるこの女、ギャップ狙ってるのか知らないけど今どき流行らないって、このタイプの女。
なんて考える余裕は既にある。視界もハッキリしてるし、何を喋ってるかよく聞こえる。
「ナイス蹴りだ、七瀬」
「どーも」
何がナイスなのか私にはさっぱり分からない。だが水樹は満足した様子。
「どう?ここに来て初めての蹴りは」
「……相変わらず、口では解決出来ない七瀬らしいなって思ったよ……」
と言うと、すぐに間を置かずして倒れている私の横腹を2度も蹴る。流石に蹴りは殴りと違って、接触する面積が広いので痛さもそれ相応の範囲に等しく与えられる。
局所的な殴りに対して倍ほど痛みを感じる。
まだ高校生であり、人生なんてこれからという女の子に対してこんな悲惨なことが起こり得ていいのだろうか。冤罪で捕まっているのと同じだ。私への醜い劣等感から始められたこのイジメも、噂を信じるバカしかいないクラスと相まって地獄のように変化した。
私がこんな性格なのも悪いのかもしれない。だが狭い価値観や狭い器を持つ人間しかおらず、増しては天上天下唯我独尊と言えるほどのイカれた女が多いこのクラスも悪い。
はぁぁ、めんど。
「そろそろ思い出してきたかな?いい加減やめないと骨折するよ」
警察もいないこの世界で、もう目に見えない場所に限定して傷を残さなくても良くなった。なら堂々と痛めつけるだけのこいつらは、目の色が変わっていた。
現に、このように不意に蹴りを入れ込まれたのは初めて。ドMになるしか無いかなって一瞬考えたほど、驚き、呆れた。
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