表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/37

第5話 無能力の運命




 芽郁が全員に向かって問いかけた。すると誰もが拒否することなく、何とかこの世界で生きていくために、最低限のことはしていこうという意思が汲み取れた。


 もちろん私もその1人であり、指名されて聞かれることはなかったが、睨みながら目を合わせてきたことで私の賛否は決められた。


 だんだんと楽になる体も、この世界に適応してきたようで自然と空気が美味しく感じる。これが魔力による世界の適応というやつかな?


 こっそり深呼吸をすると、ちょうど芽郁も役目を終えたらしくニッコリしてみんなと会話をしている。昔は1番近くだったのに、今では私からは遠く離れていった笑顔。今度はいつ本気で出来るかな。


 「ねぇ、こっちは全員賛成したけど?」


 このクラスを完璧にまとめ上げてるのは唯一のいい事。まぁ、権力云々でってところは目を瞑って。誰もが不安な状況を先頭に立って発言することで少しでも和らげようとしてるのなら大したものだ。そんな考えが出来る人ではないだろうけど。


 「そうか。それは良いことだ。しかしだな――」


 てっきりこのまま次の話に進むと思われたが、私の思い通りには、この世界の理が反するらしい。ゴミを見るような目で再び私を見る。あー、これ絶対私の魔法関係じゃん!


 即座に理解した。


 「何?まだなにかあるの?」


 質問と疑問と懸念の多さに流石の女王様も呆れ果てる。このまま国王とタイマンを繰り返してくれるなら傷つかずに済むんだけどね。


 「これで最後だ」


 来るぞ来るぞー。


 「この世界では残念な魔法があってだな。そのまま争いごとに向かうと、逆に不利になる可能性のある魔法なんだが、それを持つ者がこの中にいるのだ」


 「どういうこと?」


 「魔人族には操術を極めた者が居て、そいつらによって過去に甚大な被害を被ったことがある。それが転移者の【無能力魔法】を使う人間限定でだ。転移者は魔力が莫大と言ったが、無能力魔法を使う人間はその名の通り魔力が無いに等しい。しかし、魔力に限界が存在しない。つまり、魔力を無限に注ぎ込むことが可能ということだ。そうなれば魔力爆発を容易に起こすことが出来るようになり、それがこの王城にて発生したなら全壊は確実なほどの威力を発揮する」


 長々とご丁寧に説明ありがたい。結局は私がお邪魔虫であり、今すぐこの場から排除するか、元の世界へ戻すかの2択というわけ。まぁ、召喚にあれだけ喜ぶんだから相当な労力がかかるみたいだし、無能な私1人に面倒はしたくないよね。


 「つまりは、そこの茶髪の女を死に至る場所へ追放する必要があるということだ」


 指差して私だということを確実にする。国王ともあろう人がそんなことするなんて、この国もどれほどのものか図れる。


 全員の視線が四方八方から集められる。チクチクと日々感じてきたものとは比べ物にならないほど鋭い。憐れむことは誰もしない。ただ、この世界でも変わらないなって運命を嘲笑われている。


 ……その調子なら、こっちも覚悟決めるか……。


 私は動揺も拒否もせず、納得した面持ちで座ったまま目を合わせる。何も言うことはないが、それだけで十分。国王を睨んでるように見えるかもしれない。それでも私はやめない。次に私は芽郁を見る、そして初めて――鼻を鳴らした。


 「!?」


 即座に頭に血が上る。トマトのように赤く染めた頬は、隣の彼氏に向けてではなく、私に向けての苛立ちから。自分よりも下の存在であるブタに嘲笑われるのだから、この女がブチブチしないわけがない。


 しかし、手にギュッと全ての力を込め、芽郁は怒りを無理矢理抑えた。珍しいこともあるものだ。


 「この女は今すぐ追放するの?」


 キャッチボールが再開される。


 「ああ。早いに越したことはない」


 「私の奴隷にしたらダメ?」


 おいおい、とんでもないこと言い出したんだけど。私を奴隷にする?冗談じゃない。誰が好んでイカレ女の奴隷になるっていうの?


 「奴隷?」


 「どうせ、この世界にも居るでしょ?人間族同士でしてるかは知らないけど、別に魔人族に会わせなければ問題はないんだし」


 「うむ……」


 承諾しないで、そう願った時、私の思い通りにはならないことを思い出し、結局そのまま物語は進み始めた。


 「良いだろう。転移者同士で奴隷など面白いこともあるのだな。仲が良いと思っていたが、そちらの世界ではそうでもないようだ」


 「ふんっ、偏見ね。でもまぁ、この件は感謝する」


 「構わない」


 腕を組み偉そうな芽郁と、そろそろ足を組んで見下しのレベルアップしそうな国王は最悪な形で合意した。これを望む人間がどこにいるだろうか。水樹がドMなら望むかもしれないが、残念ながら恋愛対象でも友情関係を結んでるわけでもない私は真逆の対応をしたい。


 「それでは、ひとまず君たちにするべき話は終わった。この後は私の右に立つこの男――ネディル・エヴァンスの指示に従って行動するように」


 見た目は40前半の、平均程度の身長をした彫りの深い男性。高貴な人であることは身に纏うローブで簡単に理解出来る。


 そして、人間族でトップレベルの強さを誇るのだとも分かった。決して国王の発言を邪魔せず、存在感を消していたところ、国王に信頼か何か、特別な思いを持っているのかもしれない。


 でなければあからさまな国王の怠惰に何も口を挟まないなんてことは無いだろう。せめて注意ぐらいはするのが基本だと思うけど。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ