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第4話 異世界問題




 そして、何度目を擦っても傲慢さの片鱗が可視化出来るほど、堂々とした態度をとる国王に目を向ける。そんな中で髭をつまんでは満足気に鼻を鳴らすので、何となくムカッとした。


 玉座からでも全然声は聞こえるが、それでも国王は声を張って言う。


 「まずはじめに、君たちをこの世界に召喚してしまったことは申し訳なく思う。しかし、私たちも君たちを召喚しなければ命を落としていた身だ、どうかそこは理解してくれ」


 座り込む私たちを遠くからでも分かるほど見下すように視線操作する。きっと国王には私たちを利用することしか頭にないのだろう。いっそ清々しく去れそうでいいけどね。


 とはいえ、完全に理不尽のど真ん中に立たされてる私たち召喚された側は、能天気イジメっ子やその取り巻きを除いては誰もが不安を顕にしている。普通の反応だが、それだけでも私は気持ちが良かった。


 「次にだ。君たちを召喚した理由についてだが――まずこの世界では4つの種族がある。それが、我々人間族、それに対抗する魔人族、絶対中立のエルフ族にそれら3種族どれにも属さない未知族。そして今言った4つの種族はエルフ族を除いて日々争いを行っている。だから私はその争いを終わらせるために、君たちを召喚したんだ」


 簡単に要約して説明したことは私がエルミラから聞いていたことと変わりなかった。初耳なのはエルフ族が中立であることだけ。


 それにしてもどちらが始めたとか、悪いんだとかは言わないあたり多分ふっかけたのは人間族で、魔人族に押され始めたから無理矢理の最終手段で転移者を呼んだってとこだろうか。まったく、どこの世界にも都合の良いように扱う人間は存在するらしいね。


 「君たちは転移者としてこの世界へ来た。そしてその転移者は人間族として転移を可能にすることで、莫大な魔力と稀な魔法を持つと言われている。だから呼んだのだが、見事に成功し、ほとんどがその通りの転移をしてくれた」


 若干私を見ている気がする。ってか絶対に私のことでしょ、ほとんどの1人は。もしかして私だけの可能性もあったりして。運悪いのか、エルミラが理に干渉してわざとそうさせたのか、どちらにせよ今は国王の視線が目障りだ。


 「つまり、君たちはこれから私たち人間族を救うためにその魔法を行使してほしいのだ。難しいことはなにもない。それらは今後私の元で鍛錬することで必ず成長する。だからその首を縦に振ってはくれないだろうか」


 両手を広げ天を仰ぐ。国王らしい威厳と風格があるのならカッコよく似合っていただろうが、ただの傲慢強欲のデブがやると見苦しいだけだ。


 あー、早速この世界が嫌いになってきたかも。


 1時間も経過せず魔人族へ行きたいと思い始めると、国王の頼みに頷くより先に質問を投げかける女の声が耳に入る。


 「ちょっといい?」


 「んぉ?なんだ?」


 日本の天上天下唯我独尊とこの世界の人間族の天上天下唯我独尊、お互いがお互いを敬うことなく自分のフィールドからしか投げかけない会話のキャッチボールが始まった。


 「私は協力するのに賛成してもいいけど、その前に、私たちって元の世界には戻れるの?」


 珍しく誰もが気になりそうで忘れていることを聞いてくれる芽郁。自分が浮いていることにも気づいてくれれば言うこと無いんだけど。


 「もちろん戻れる。こうやって大人数の転移を成功させたんだ。逆が出来ないわけがないだろう?」


 「なるほど。じゃ、いつ帰ることが出来るの?やっぱり争いを終わらせたらすぐ?それとも、この世界の人間の過半数の賛成が無いとダメ?」


 「争いを終わらせたらだ。これは約束出来る、絶対に君たちを帰すと。しかし、その時はいつになるか分からない。だから戻る際に歳をとってる可能性も十分ありえる」


 「最後に、魔人族って強いの?」


 どストレートに聞いたことは、プライド摩天楼の国王が自ら口に出来るものではないと察しているのは私だけ。強いから、手こずってるから召喚したんだと何故分からない。


 少し怪訝な顔を見せるとすぐに引っ込める。


 「君たちの相手ではない。魔人族は並の人間とほぼ互角であり、魔法を極めた転移者とは天と地ほどの差があると言えるな」


 最低でも僅差で負けていると思いたいのか、上手いように誤魔化す。周りのお偉いさんたちは国王に目を向けることは出来ず、下を向く者がほとんど。誰がどう見ても落ち込む表情をされてはこの先が不安て仕方ない。


 そして天と地ほどの差がある。これは絶対に嘘だ。極めて、とか言ってる時点でそれまでは苦戦を強いられると解釈出来る。極めないと安心出来ない言い回しをされてもやる気は湧いてこない。


 そもそも未知の存在といきなり敵対なんて精神的に無理だ。ましては日本人に、どれだけ悪と言われても出会ってすぐに顔面パンチなんて決め込めないだろう。相当性根が腐ってるやつぐらいだ。


 そんなことは考えるに至らないイジメっ子は納得し安心して言った。


 「なら良いじゃん。私は賛成するー」


 こういうやつは序盤で足を引っ張って、仲間を失い続けて最後の1人になってからあの世行きって相場が決まってるんだよね。その通りなら複雑な気持ちの中で、ほんの少しスカッと感が勝つかな。


 真っ先に賛成したのがうちのクラスのボス。これが何を意味するか、まとまらない感情の中で誰もが理解した。


 これは、賛成した方がいい。と。

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