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第3話 イジメの予感




 今度は別の意味で静まり返ったと、私はすぐに理解した。無能力魔法と聞いた周りのお偉いさんたちは、項垂れるように元気を失ったが、今は驚きも驚きのようで開いた口が塞がらないようだった。


 そして、それらを再び代表して国王は口を開く。


 「今のは本当か!?」


 手に持ったワイングラスを握力が無くなったようにスッとそのまま地に落とす。パリン!と高音を鳴らして割れるガラスに目を逸し耳を塞いだのは私だけではなく、ほとんどのクラスメートもだった。


 身を乗り出すように体ごと一歩前に踏み出す。それに少し怖じ気づいたように言葉を詰まらせた。


 「う、うん。そう書いてあるから読んだだけなんだけど……」


 相手が国の王と知っても敬語は使わない。いっそそれで罰せられてほしいが、転移者そして驚くほどの魔法を持って召喚された側なのでそんなことは万が一にもありえない気がする。


 まったく、都合のいい女だ。


 水樹は何も答えず黙ってその場に座っている。


 「そうか……そうか……」


 頭を片手で押さえつつ、取り乱した自分を自分で落ち着かせようとする。いくとこまで行ってそのまま逝っちゃっても良かったけどね。


 こんなことを思うようになったのは全部芽郁を始めとした取り巻きたちのせいだと思いながらも、私の周りの時間は止まることなく進んでいた。


 次々に確認し終わる転移者の魔法。その中に私と同じ反応をされる人は誰もおらず、逆は3人4人ほどいた。この世界では元の世界と通じた運命があるのかな?


 だんだんと終わりが近づく魔法測定。この後どうなるかなんて未来魔法でもないと分からないだろう。が、この世界に来て早速最悪が起こることは分かった。


 「ちょっと遊んでくる!」


 私には元気な女子高生を偽るように見えるイカレ女。彼女は1言残してその場に立つ。この時点で私はもう嫌な予感しかしていなかった。


 顔を下に、目だけ動かし芽郁がどこに行くのか確かめる。でもだんだんとこちらへ近づいてくるのだけしか理解出来ない。あー、これ終わったな。


 そう思った瞬間だった。


 「ねぇねぇ、紗凪。あんたはどんな魔法を使えるようになったの?」


 座る私を上から見下すように冷めた目で睨みつける。慣れたものだが、いつされても、何が良くてこんな歳にもなってガキ大将のようなことをしているのか理解に苦しむ。


 「無能力……無能力魔法だよ」


 答えなくても答えてもどちらでも何かを理由に罵倒が始まる。なら素直に従って答える方がまだ楽にイジメられる。もう完全にイジメについて熟知してしまったようだが、それでも止まないのは、それほど私が癪に障るからだろうな。


 「無能力魔法?あっははは!何それ!何も使えないってこと?!ウケる!」


 ただひたすらに高笑いをする。私には何がウケるのかさっぱり分からないが、イジメが始まったとクラスメートの注目を集めれば全員がゴミを見るような目で見てくる。


 便乗しかしない取り巻きらしい行為だ。誰か1人に同じような目で見返したらどうなる?多分「あっ、芽郁さん!あいつ睨んできたよ!」って報告するだけだろうな。情けない。


 「おい、ウケるだろ?笑えよ」


 私が真顔で芽郁を見ることに気に食わない様子。そこの国王といい勝負の絶対王政ぶりだ。何もウケないことにウケてあげようか。


 「ははは……」


 我ながら可愛くもカッコよくもない湿気た笑いに満足する。いつもならもっと気持ちを込めて笑うが、今ならそんなことをする必要はない。むしろ愛想笑いを出来るだけやりたいものだ。


 「ふっ、ブタみたいな声で笑いやがって。この世界でもあんたは下の下ね」


 「そうだね……ははっ」


 「はぁ?何も面白くないでしょ。勝手に笑ってんじゃねーよ!」


 パシッと左手で頬を激しく叩かれる。普通に痛い。でも声はウッ!と驚く以外出ることはなく、その勢いで右手を床につけ倒れないよう態勢を整える。


 理不尽極まりない行為だが、この世界でも芽郁が絶対。叩かれるのは全て私のためと思い込めと命令もされている。何が目的なのかは不明だ。


 私も顔は大切にしたい部分なので正直叩かれるのは嫌だ。


 って言っても、もう右腕と左目の横に消えない傷跡が出来てるけどね。ホント、最悪の極みです!


 「そこに召喚されし35名の使徒よ。たった今魔法測定が終わった。よって、ここからは私が話しを進めるとする。一言一句聞き逃さぬよう聞き止めるのだ」


 私がイジメられるのを見て止めようとしない国王は図々しくも、自分の話を聞けと視線を集めようとする。このおかげでこれ以上なにかされることはなくなったので、助かったといえば助かった。


 「これからあんたがどう生きていくか楽しみ。私が死ぬまで一生可愛がってやるから感謝して生きなよ。おブタさん」


 と言ってもっとイジメてやりたかったというオーラを放ちながら、満足する気配もなく呆れて鼻を鳴らし水樹のいる場所へ戻って行った。


 あんなイジメっ子と頑張って関わろうとしてた時期があったのが、信じられなさすぎて目が飛び出しそう。それに、おブタさんとか言われたけど、どちらかと言えば絶対に芽郁の方が私よりもお腹は出ている。


 毎日イジメられても、ストレッチや運動を欠かさずやってた私を舐めるんじゃないよ。いつか、ブタは自分だったって後悔させてやるから、その時まで死にものぐるいで生きなよ。


 そう心の中で言い返し、私は国王の言葉に耳を傾けた。

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