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第29話 コルデミル大迷宮




 それから1ヶ月後、アリスはサナにこの世界での基礎を学びきれるだけ教え込んだ一方で、人間族でも同じように魔法についての鍛錬が日々行われていた。


 そんな中で、今日は特別講習ということで芽郁をはじめとした34名のクラスメートは、誰1人欠けることなくコルデミル大迷宮の入口付近に集合を完了していた。


 入口からは、彼女たちが想像していた迷宮という意味からは想像つかない、思ったより整備された恐怖や不安を誘うような作りではなかった。想像通りなのはその大きさぐらいだろうか。


 ここから地下へ向けて何時間もかけて潜り、その時間はここら一体で最大と言われるだけあるほど消費される。普通の迷宮ならば5時間はあれば攻略可能と言われるが、コルデミル大迷宮は20年経過した今ですら最下層に辿り着けていないという。


 それに納得するほど、入口だけで高さ50m横幅100mはある。指導者として連れて行くネディルが言うに、これはコルデミル大迷宮でも驚くに値しないものだと言い、ここから下は一層一層が攻略に1週間は使うほど広く難しいとも言っていた。


 そしてその層は、上層で35層、中層で40層、下僧で30層の合計105層で作られていると予測されている。まだ最下層へ辿り着いた者は存在しないため確定してはいないが、間違いはほぼ無い。大地魔法の使い手が調べたものらしく、それならばなんとなくでも信じてしまう。


 今から芽郁たちが向かうのはその上層の第35層。中層のすぐ上に位置する階層だ。ここでは層の入れ替わりの場所であるからに、魔物の数も少なく力も弱い。魔人族と接触することすら殆どないというのだから、多少は安心して鍛錬可能というわけだ。


 しかし、人間族であるネディルがそれを伝えるわけもなく、ただ「成長を早くするにはここに来るのが1番だ。それに俺がいれば安心だからな」と言って適当な考えと自信過剰に任せて連れてきていた。


 そんなネディルに安心感を抱いて付いていく芽郁たち。そして中に入ると外とは全く違う、狭くて暗い空洞に誰もが危険が伴うのだと肌で感じる。常に監視されているかのように四方八方からチクチクと刺すような視線のようなもの。微かに届く唸り声。どれもこれも、日本に居た芽郁たちには、非日常感満載で怯えるのなんて当たり前だった。


 しかもここからさらに下へ34層も降りるのだから、いくら魔法で短時間移動するからといっても耐えるには少々酷な部分もある。「ヤバいでしょこれ……」と流石に芽郁もガクガクブルブル寸前の体で魔杖(ディヴァル)を持っている。


 そんなこんなでまだ1階層にいる芽郁たちは、転移魔法で組み込まれた魔法陣に乗り35層に飛ぶのだが、そこまでの道のりが少しだけ長い。故に魔物と出会うのは絶対とも言える。


 「やっと出てきたと思えばお前か」


 ネディルが目で捉えた魔物は日本で知られる狼と大差なく、四足歩行の赤毛に、体中を纏うように風が刃のようになって回転している。5体同時出現しており、これが魔法常時発動の魔物の1体。


 「怯むな。こいつはこの大迷宮の中で最も弱いウィンドウルフという魔物だ。体を纏う風は攻撃用であって守りにはなんの役にもたたないただの飾りだ。だから各々の持つ魔法で攻撃して討伐してみろ」


 いきなりの魔物にいきなりの指示。連携なんて微塵も取れないのに、各々の魔法を好き勝手放てるわけがない。いや、それは普通の人間の話か。ここにいる人間は違ったな。


 震えなんてとっくに止まり、目の前の魔物を狩る目をする芽郁につられてか、全員がやってやるという顔つきに変化する。彼女たちに日本で育ったキレイな心はこの世界で()()され、悪へと染まりつつあるらしい。


 特定の魔法に伴ったさまざな魔杖(ディヴァル)を手にしては詠唱をする。全員ではなく、ネディルが予め決めていた10人が先に立って。


 面白いのがやはり人間族に染まっているところ。魔法を具現化させ、放出する際にその先にクラスメートがいたとしても構わず全力で発射する。それに気づき、危機一髪で避けると「おい!」と叫んで喧嘩の一歩手前まで行く。


 もう自分のことしか考えられない人間だらけだ。


 そんな人間の集まりでも、やはり優秀さを顕にするのはスクールカーストの上位に君臨する者たち。


 「闇空間(ザ・エクレ)


 「光弾(ア・ワール)


 「雷轟音(ダ・ドーラ)


 闇魔法の優太、光魔法の芽郁、雷魔法の結という特異魔法に選ばれし3人の鮮やかで爽快な魔法は、目の前の魔物をあっさりと屍にしていた。個人個人に渡された特定の魔杖(ディヴァル)は練習用よりも強大な力を伝える。


 この世界と隔たりのある闇の空間へ連れて行き無の空間で殺す魔法に、光の速さで豆つぶほどの小さな弾を打ち込む魔法。雷が落ちるほどの音と衝撃を放つ魔法。どれも強力で、転移してから2ヶ月程度で鍛え上げられた技量とは思えなかった。


 「君たち、そうやって力業で解決するのはいいけどな、しっかり弱点を教えただろう?そこを狙って倒さないと今後の対処が出来ないぞ。オーバーキルも無駄な魔力を消費するだけだ」


 ネディルは3人に言っているのではなく、全員に言っている。確かに強大な魔法を発揮した3人はそれなりに暴れたが、その他も十分なほどに魔物を相手にした。


 特異魔法で薄れるが、彼女たちは転移者だ。元の魔力が並の人間族ではないのだ。

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