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第26話 アリス・オーロラ




 薄暗く、暗順応しなければ普通の人間なら歩くのもままならないほどの空間に、1人で意味を求めて私――アリス・オーロラは歩く。音は四方八方から聞こえる。どれも人間の声で、魔人族の声なんて滅多に聞こえない。


 ここはコルデミル大迷宮。魔人族と人間族の領土の間にあるここら一体で最も大きく、危険の伴う好かれない所だ。何故ここに私がいるのか、それはサナのためにある程度の人間族の猛者を消し去るためだ。


 この大迷宮には魔導書があり、それを死にものぐるいで誰もが取りに行く。あるかもわからないのに、魔法を強化するという言い伝えを頼りに信じて。


 そんな噂や言い伝えがあって、これまで誰1人として最下層に辿り着けてないのだから、本当は無いのではないかと思う。そう思っていたらエルミラが私の心を読むように、あるというのだから信じるしかない。


 だから私はその言葉で迷いを吹き飛ばし、今ここにいる。何度も大迷宮には迷わせられるが。あれ、久しぶりの1人ギャグは中々面白いぞ?


 一歩ずつ進むが、灯りはない。時々奥深くに目を通すと魔法で照らす者や松明という心許ない灯りを手に持つ者も見える。その度に重力を倍にしたり無にしたりして退けているが、正直毎回これをするのは面倒だ。


 なんせ、人数が多くて無駄な魔力を消費してしまうのだ。だから視界に入れては殺める癖を治すか、絶滅してくれるかの二択だが、私的には一択だ。


 「んー、ここは中層か」


 肌で感じるのは人間族の猛者の気配。最下層に行くにつれて、勝手に作られた人間族の拠点には猛者が潜む。転移魔法で人間族領土から転移し、透過魔法で私の目には視認不可能の拠点を製作する。匂いも同時に消されるので場所の特定も不可能だ。


 しかしそこから人間が出ると瞬時に察知する。感覚が敏感である私には些細なことでも反応する。今まさにそれで、中層には猛者だが、人間族では下っ端だろう弱々しい魔法使いがいる。


 潜れば潜るほど魔道士も増えるが、ここらへんは基本魔法使い程度の実力がうじゃうじゃ居るだけ。出来るならさっさと魔道士ほどの実力のある人間を相手にして絶滅までのカウントダウンを早めたい。


 そう思いながら退屈しのぎに来たのに退屈が続いている現状がさらに退屈に感じていると、それを破壊してくれそうなやつが現れる。


 「よぉ、ねぇちゃん」


 後ろから耳にしたくないほどゲス臭漂う、私より年上の、魔道士になれるかギリギリラインの実力と分かる男が話しかけてきた。


 それに振り向かず私は反応を示す。


 「何?」


 「いきなりで悪いが、ねぇちゃんから魔人のニオイが鼻曲がるほど漂ってくるんだよ。だから――殺すぞ」


 凄い殺意だ。私ほどではないが、魔人族にそれほどの恨みを持っているかと、自業自得のくせに被害者面されるのは癪に障る。


 私が顔を見せてやろうと振り向くと、男は魔杖(ディヴァル)を持ち出し今にも詠唱をする気満々だった。こんなにも先手を取れたと思って勝ちを確信しているのは久しぶりに見た。が、すぐにそれは消えてなくなる。一生。


 「っ!?お前は!」


 一瞬にして顔が強ばる。無理もない。この世界で名を知らない、そして顔を知らない者はゼロに等しいのだから。


 「どうした?来なよ」


 「アリス……だと……ホントにコルデミルに潜ってるとはな……」


 男の顔にはもう絶望以外の何も残ってない。死を覚悟するのも嫌だろうが、絶対に勝てないと知るから無理に動けない。この男より圧倒的に強い人間を葬ってきた私だから、絶対を確信している。


 「私だと気づかないなんて、お前もまだまだだな。これで慢心するほどなんだから、人間族はやっぱり底辺揃いの弱小種族ってことか」


 「……クソが」


 手が震えている。これを見る度にお前らコルデミルに来る資格無いぞ、と思ってしまう。そんなにここは甘くないんだがな。魔物も多く存在するので一筋縄では到底乗り越えることは不可能。


 そんな地にこんなバブちゃんを連れてくるとは……コルデミルも舐められたものだな。まったく、人間族は何でもかんでも舐め腐るな。


 意を決したか、男の顔つきは変わった。


 「いいね。逃がすつもりは無いけど、自分から来てくれるなら手間も省けるから大歓迎だ」


 「くっ!覚悟し――」


 男が魔法を詠唱しようとした瞬間にドゥン!と重力を増加させてやる。距離はあっても、重力には何も関係はない。世界の裏側に居てもそれは変わらない。一瞬で相手を押さえつける。


 「あれ、もう耐えられないのか?まだ1割程度なんだが」


 「っ…………」


 重力に押されて言葉も発することが出来ない。5Gの負荷しかかかってないだろうに、まだまだ鍛錬が足りてなかったってことだな。サナでも余裕顔で耐えれるっていうのに、転移者ってことを除いても引けを取るのはどうかと思う。


 「まぁ、潰れて死なないのはそれなりに魔力圧を使えてたってことで良かったが、それ以外はゴミだな。来世では魔人族に生まれて、六天魔人(ヴァビリム)になれるといいな」


 男は震えたまま何かを訴えているが、それが耳に届くことはない。私に話しかけた時点で運命は変えられなかった。運命魔法を使えるなら助かってただろうにな。


 「重力操作(ナ・テリト)


 確実に魔力を変換させ地面へさらに強い重力で押しつぶす。これで生き残れるのなら猛者と呼ぶに値したが、男の心臓が脈を打つことは無かった。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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