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第25話 魔導書




 「これで魔力圧は問題ない。実感も何も無いだろうが、それが当たり前だ。今もサナの魔力をいい塩梅で放出しているから心配する必要はないぞ。安定もしているしな」


 「と言われましてもね……」


 私も安定の実感が無いだけで、実は今もなお魔力が体から吹き出ているのを感じる。このままなら魔法を使う時にも、イメージがしやすく操作しやすくなる気がする。


 魔法はイメージが大切らしい。特に、魔力を物として可視化出来るように放つ魔法以外は、基本思い通りに魔法を扱えるので想像力と魔杖(ディヴァル)への魔力変換をより上手く出来る方が勝利をするのだとか。


 私も転移前にファンタジー系の何かに触れておけば想像力も鍛えられたんだけどな。


 「まさかこの短時間で無理難題を物ともせず乗り越えるとは、ここまで来ればサナも私たち天才の域だな」


 「多分私も天才なんだろうけど、アリスとかエルミラに比べたら劣って劣って褒められてる気にはなれないんですが」


 「それは歳と世界が違うからだろ。もしこの世界に生まれて歳も私と同じなら圧倒的に私が下の存在だっただろう。それは私だけでなく、ソフィアもスタリスもシュルクも同じだ」


 おそらくエルミラを除く六天魔人(ヴァビリム)の中で1番の実力を誇るのはアリスだろう。転移者でもなく、特異コンビとしてエマと共に二強で恐れられる存在。そんなアリスが言うのだから、本人たちが口に出してなくともそうなのかもしれない。


 「実際、エマでそれは証明されているからな」


 「私ってエマと同じくらい才能ある?」


 「いいや、エマ以上だろうな。そもそも魔法のレベルが違って体質も伴って違うからスタート地点から差がある。エマが魔力圧を習得するのにかけた時間は1週間程度だし、魔杖(ディヴァル)を使いこなせるようになったのは2週間だったな。それに対してサナはそれらの何十分の一で習得しているから、この時点で差は歴然だ」


 「思ってたより私ってヤバいんだね……」


 エマはアリスとほぼ互角の実力であり、アリスの最大のライバルでもあるらしい。そんな強大な力を持つエマを超える存在になりうる。そう聞くだけでモチベーションが爆上がりだ。


 六天魔人(ヴァビリム)は全員が魔法を覚醒させているため、目で見て計れる実力は無いものの、人間族を圧倒していると自負している絶対的な自信と安心感からある程度の差は知れる。


 故に私にどれほど距離があって、六天魔人(ヴァビリム)に期待されるほどの力を秘めているのかを曖昧に把握出来る。これからは毎日鍛錬の日々かな。もー疲れて疲れて自室に戻るとすぐ寝るレベルなんだよね。どうにかしないとな。


 「今日はここまでにしよう。十分な鍛錬になったし、私も指導だけでは退屈するからな、コルデミル大迷宮にでも潜って人間を殺……大迷宮散策をしてくる」


 やっぱり退屈してたし、絶対に、人間を殺してくるとか物騒なこと言いかけたし、この女性はホントに性格が読めないな。まぁ、見た目に合いすぎてるからカッコよくて好きだけど。


 「コルデミル大迷宮ってそんなに暇つぶしになるの?」


 ただの大迷宮であり、人間族が蔓延ってるとだけしか聞いてないので、猛者であるアリスがストレス発散以外に行く意味があるのか知りたかった。


 「ああ。一応サナとも無関係ではないぞ」


 「私?」


 「ああ。コルデミル大迷宮には最下層に魔導書が隠してあるらしくて、それが何かの強化に繋がらないかと取りに行くんだ。可能性としては特異魔法の強化に関係がありそうって噂で、サナの魔法覚醒の時短になるんじゃないかってエルミラに頼まれて行ってるんだ」


 「へぇー、アリスでも最下層には辿り着けてないの?」


 「奥が深くて、何度も人間族に邪魔をされるから、時間のかかるコルデミル大迷宮の奥へはそう簡単に辿り着けないんだ」


 「なるほどね」


 うむうむ、と考える。


 「だから私の成長ついでに、アリスも付いてくるのか」


 「そういうことだ」


 立ち上がり、魔杖(ディヴァル)で私の方を差してくる。そんなことをする人だっけ?と、私の頭の中のアリスを再確認する。うん、違う。


 「その下見程度に行ってるようなもので、正直あの人間族に塗れた大迷宮なんて行きたくないから、早く魔人族のものにしたくて仕方ない」


 「相変わらず人間族嫌ってるね」


 「当たり前だ。好きになるとしたら絶滅後ってとこだな」


 過去に何があって因縁を持っているのか分からないが、尋常じゃない様々なその熱意に、それ相応のことを人間族がしでかしたのだと分かるには時間はいらなかった。


 何度も聞くし何度も言うが、この世界の人間族は人間としての道徳心ってか心を持たない。故に極悪非道は当たり前であり、イジメなんて生温い。ここへ来てそろそろ1ヶ月が経つが、勉強として頭に入れる人間族の過去は覚えたくないほど人外だった。


 私利私欲のために動く人間しか存在しないようで、今、王国として存在していることが奇跡としか思えないほどには、知識はついている。


 今頃芽郁たちは何やってるかな……。


 だんだんと忘れ行く元クラスメートの名前。はっきりしているのは主犯格たちだけ。完璧に適応するまでそう時間はかからないかな。


 「では、ゆっくり休んでくれ」


 「どーも。アリスもお気をつけて」


 「ああ」


 なんて杞憂をして、ゆったり何も圧とは思えぬ魔力圧を放出する私の後ろで、アリスはブワッとスタリスのことは忘れて魔力圧を放出した。


 若干寒気がしたんだけど。

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