第20話 主犯格の性格
一方その頃、人間族に転移した紗凪を除く34名のクラスメートの5人、イジメ主犯格たちは、紗凪の死体をその目で確認しパニックの真っ只中だった。いや、そんなことも無いかもしれないが。
「華、なんで押しちゃったの?!」
芽郁は語気強めに問いかける。全員が結の部屋に戻ってきており、その空気感は最悪だった。
「だってウザかったし、どんな未来でも死ぬんだったら早く死んでスカッとしたいじゃん」
「だからって本当に……」
紗凪の予想通り、飛び降りる寸前で止めようと思っていた芽郁だからこそ、この現実が少しメンタルブレイクなのだ。確かに忌み嫌うほど芽郁は紗凪が嫌いで、顔も見たくないほど距離を置きたいとは思っていた。しかし、まだ10代の子供。人を殺すことがどれだけのダメージを与えるか知っていたとしても、実際に耐えることは難しい。
だが、それはきっと今だけ。一色芽郁という女がどれほどの性分なのか、後々知ることになるだろう。人間族に転移したという本当の理由を含めて。
「……まぁ、いいや。遊び道具が無くなったのは残念だけど、奴隷は居るって聞いたし最悪クラスメートから探せばいいか……」
「相変わらずいい趣味といい性格してるね」
「ふんっ、ありがと」
そもそも紗凪に人として接していなかった芽郁は、優太や結、キララや華が死ぬことよりも何百倍もダメージは無かったのだ。ペットが死ぬことよりもダメージは無い。同じと言えるのは、幼き頃のお気に入りの玩具が壊れたときとほぼ同等。
再び同じ玩具を手にすれば前の玩具なんてすっかり忘れるものだ。増しては、同じものとすら勘違いするだろうし、ちょっとしたお気に入りと思う程度で、前の玩具に深い思い入れなんて無いだろう。
この女は5人の中で1番イカれているのだ。
「ってか魔人族に転移したってあいつ恵まれなさすぎでしょ」
キララはエルミラに改竄された記憶そのままに全員と共有をする。その記憶が絶対に正しいと思いこんで。
「うん。だから殺したほうが良かったでしょ、むしろ感謝されるべきじゃない?」
「感謝は言い過ぎだけど、良いことをしたのは違いないねー」
エルミラは紗凪の思いを知っているが故に、同じ転移者の紗凪に対する嫌悪感を最大限にまでイジっている。そうすることで復讐へのやり甲斐を生ませ、少しでも報われるように陰ながらサポートをしているのだ。
しかし、それがあってもなくても大差ないほどに5人は嫌悪感を顕にしている。だからあってもないようなものだが、多少なりとも変化はある。
「そういえばさ、俺は家族の悪口を言われたから嫌いなんだけど、みんなはなんで真白が嫌いなんだ?」
優太は正常とは思えないイカれ具合の4人には、きっとそれ相応の理由があると思い問う。
「ん?顔とスタイルが良くてそれを鼻にかけてたから嫌い」
と芽郁。
「私は、男子にちやほやされてるの見てると気分悪かったからきらーい」
と結。
「私は、性格が受け付けないかな。あぁやって媚びうる感じでぶりっ子してるの好きじゃない」
とキララ。
「私は、3人が嫌いだから関わり避けてたらいつの間にか心底嫌いになってた」
と華。
「……それだけ?」
初めて聞いた4人のイジメる理由に、優太は固まる。それだけの理由で死にまで追いやる必要があるのか?と、疑問に思っているのだ。
「それだけって酷くない?結構女子の中ではしんどいことなんだよ?」
圧を込めて言う芽郁に何も言い返せない優太。本当は言いたいことは山程あるのに、逆らえないとかそういう理由ではなく、言い返そうとしない。
「そっか、芽郁がそう言うならそうなんだろうな」
「うん、そうだよ」
洗脳されていた。彼女たちの言うことは絶対に正しく偽りはない。そう信じているからこそ疑うことも否定することもない。ただ疑問に思っても一瞬にしてそれは消え去る。
恋は盲目の最終形態だ。もしかすると人間族にもエルミラのような存在が居て、理に干渉しているのかもしれないが。
「なんだか退屈だねー」
「あいつがいないと気も晴れないよ」
「ほら、華が突き落とすから」
「ごめんって、ウザすぎて仕方なかったの」
日本のゴミクズを集めたようなクラスのカーストトップにいる彼女たちは、自分のことしか考えない最大級の自己中だ。
「はぁ、とりあえず今日は寝ようかな。眠くなってきたし」
「だね、また明日からは意味不明なことばっかだろうし、魔法とかの指導もあるんだろ?なら余計に疲れ取らないと」
若干パニックが抜けない優太を隣に、4人全員が抜けきったいつも通りの空気感。なんだかこの世界の人間族に適応するために存在するかのような不気味な感じだ。元々転移するということが決まっていたり。
「それじゃ、優太行こう」
「あ、ああ」
女王が優太とともに自分自身の部屋に戻ることで解散となる。絶対王政にも関わらず芽郁に不満を持つ友達は居ない。結もキララも華も全員が。理由を上げるなら自分にデメリットが無いから不満がないというだけの単純明快なものだ。
こうして初日からバケモノじみた行為を堂々とやってのけた芽郁たちは、だんだんとこの世界に適応し始めていた。
翌日から始まった魔法を使いこなすための鍛錬も転移者の中ではいい方、紗凪と比べれば足元にも及ばない才能で乗り越え始めていた。
少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです




