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第19話 魔王の力と重力魔法




 「はぁー!疲れる!」


 「なんだ、そんなに体力無いのか?」


 「アリスたちとは違って元いた世界では常に怠惰だったから、いきなり意味不明な体力削りなことをやらされて疲れないわけないじゃん」


 「ははっ、これは鍛え甲斐のありそうなことを言うな」


 「ドSじゃん……」


 ほんの少しだけだが感覚は馴染んできた。しかし少しでも、落とされたことや、私が特異存在であることを脳裏に過ぎらせたら集中が切れたことになり、また1からやり直しとなる。


 その度にアリスにはニヤニヤされるし、ウッ!と溢すほど疲れが一気に押し寄せてくる。イジメられる前の私ならなんとか乗り越えれるほどの体力は有していただろうが、今はもう無理。まったくどこに行ってもあいつらのイジメの結果が付いてくる。ウザすぎてしょうがないや。


 「ねぇ、魔法の覚醒って何をどうすれば条件が満たされるの?」


 心もとない休憩時間に、私は気になったことを聞いて少しでも伸ばそうとしていた。


 「条件なんてのは具体的には無い。だから私たちは己が持つ魔法を極めることで覚醒すると認識しているんだ。例えば無能力魔法では魔力操作(ラ・フィルネ)が相手の魔力を自由自在に操り、魔力爆発まで行えるようになると覚醒する人もいれば、生まれながらに覚醒状態の人もいる。まぁ、無能力魔法では生まれつきは無かったが。そんな感じで、それぞれ個人の潜在能力で左右されるんだ。だから一概にここ!っては言えないな」


 「なるほど。ならそれまで私は極め続けろってこと?」


 「そういうことだ。まぁ、エルミラは道のりは長いと言ったが、私は短い気がする。この場で目で見てそう思う」


 「ふふっ、ありがと」


 嘘であったとしても背中を押されることには変わりない。アリスは同じ特異魔法の使い手であり、魔人族の最強魔導師団の1人でもある。そんな人から褒められると一瞬だけでも跳ね上がるほどには喜ばしい。


 しかし、それでも私はこの休憩時間を短くされたくはなかった。


 「話は変わるけど気になったこと聞いていい?」


 「ああ」


 「人間族にも無能力魔法の使い手は存在したんでしょ?ならなんで人間族は無能力魔法使いとして転移した私を殺そうとしたの?理由はあったけど、特異すぎるって知ってたなら殺すよりも有効活用するべきだと思うんだけど」


 「あーそれか。それは全部エルミラの力だ。エルミラは1言で言うと、この世界そのもの。どんなことにだって干渉可能な異次元の存在。そんな存在に記憶の改竄は当たり前のように出来るだろう?だからエルミラは、エルミラ自身でも死を脅かされる可能性のある魔法――三神魔法(オリジン)を手に入れられるのは良くないと判断したんだ。そしてエルミラはこの世界の理に干渉して、人間族とエルフ族、未知族の無能力魔法に対する考えを変えた。それ以降どの種族でも無能力魔法を持って生まれる生命体は、魔人族に魔力爆発を引き起こされるものとして扱われるようになったってわけだ」


 「……魔王じゃなくて神じゃんそれ……」


 「違いはないな」


 めちゃくちゃエルミラが恐ろしく思えるんですけど!


 あれだけ美少女として整った容姿にいい性格をしているのに、人間族をはじめとした他種族のこととなると形相を変えて殲滅しようと雰囲気や空気感ごと変化させる。


 今思えば何かそれほどの気を持つ理由があるのだろうが、実行出来てないことにもさらなる理由があるはず。まだまだ分からないことだらけ。まるで海のようだ。


 そんなこんなで、体力もだいたいは回復し終えた。こんな短時間で全快に近い恐ろしいほど早い回復速度。きっとなにかの魔法が関係しているはずだ。


 「よし、始める前に最後に1ついい?」


 「それはいいが、自分から始めるなんて、このまま先延ばしにし続けても良かったんだぞ?」


 「……バレてたか」


 「ふんっ」と鼻を鳴らしながらも、付き合ってくれたことにお姉さんとしての優しさを感じる。ツンデレでもないだろうが、こうして甘やかしてくれるのは怠惰の私には得であり毒でもある。


 私は立ちながら質問をする。


 「アリスは魔法の覚醒はしてるの?」


 「それは当たり前だろう。同じ重力魔法使いで私の右に出る者は存在しない。それほどまでに極め終えてはいるつもりだ」


 「なら、参考にどんな魔法なのか見てみたいんだけど」


 「ああ、いいぞ」


 そう言って自分専用の魔杖(ディヴァル)を取り出す。私の持つ練習用とは違い、白く細く短い。そこから陽炎のように魔力による空間の歪みが見える。まだ詠唱をしていないのに溢れるということは、持った瞬間から感覚と魔力が同調している証拠だ。


 「サナに魔法をかけよう」


 「えっ?」


 私の、何するの?という「えっ?」に対して返ってくるのはアリスの魔法だった。


 「重力操作(ナ・テリト)


 「うわっ!」


 詠唱後すぐに体が宙に浮く。抵抗は不可能であり、出来るのはただ驚くために声を発するだけ。体の自由も利かない。


 「重力魔法の基礎だ。どんなものでも魔力の量だけ対象を動かせる」


 「これが魔法……」


 初めて体感する魔法に感動を覚える。恐怖なんて全く無く、興味だけが湧いてくる。これから自分もこのようなことが出来るかもしれないと、ワクワクした。


 そして、感動途中にアリスは魔法を解いた。1分ほど浮いていたのはアリスの優しさがあったから。感動し続ける時間が長すぎたので一瞬に感じた。


 「なんだかやる気湧いてきた」


 「そうか。それならどんどん先へ進もうか」


 「だね!」


 いつの間にか元気を取り戻し、人間族に転移したクラスメートを忘れ去っていた私はその後も難はあれど、順調に魔力を操作しその日だけでアリスに上出来と言われるほどには上達をした。

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