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第18話 魔杖と鍛錬




 案内された場所は魔王城内にある、絶対に闘技場だと思えるほど広く観客席も備わったとこだ。砂や砂利ではなく、しっかりと大理石のように白くて硬い高級品感満載のフィールド。ここなら何も考えずに魔法を使えそうだ。


 フィールドに足を踏み入れれば、よりその大きさが分かる。何よりも、観客席に魔法が及ばないように防御結界が張られているのが肌で感じれる。微弱ではあるが、現無能である私にもフィールド内だけにその力が働いているのも分かった。


 魔王城全体にエルミラの結界は張り巡らされているらしく、場所を数えると3桁弱も張られているという。1つがこの闘技場だが、それらを同時に常に展開しているのだから魔力の消費量は計り知れない。


 それでもあれほどの余裕を見せるのがこの世界の魔王……恐るべし。


 「この中ではどんな魔法もエルミラの結界で外には出ない。だから好きなだけ練習出来るってことだな。ちなみに、エルミラを超える魔力を持つ生命体はこの世には居ないから、死ぬまで遊べるぞ」


 やはりこの世界では魔力が優劣を大きく左右するようだ。魔法をまだ習得不可能だった私が、同じ転移者の芽郁たちに殴る蹴るなどのイジメを受けていた際、薄々だが気づいていた。普段なら暴行を受けても痛い程度で済むのだが、あの日はめちゃくちゃ痛かった。アドレナリンが出ていなければきっと立てないほどに。


 煽りすぎた影響もないことは無い。だが、魔分を振りかけられた時から、薄っすら透明だが目で捉えられるオーラが自分はもちろんクラスメートや国王たちの体から放出されているのを確認した。


 きっとそれが魔力だ。


 「死ぬまではちょっと……ね?」


 私は完全に魔力の量を悟られないように体から消しているアリスの凄さに、少し動揺していた。良い意味で。


 「ははっ、心配するな、そこまで追い込みはしない。ただ、今日で魔力のコントロールが出来るようにはなってもらうがな」


 「コントロール?」


 「ああ。基礎中の基礎だ。それが出来なければコルデミル大迷宮で、本当に死ぬまで彷徨うことになる。まだ生きたいなら習得することだ」


 「分かった。やってみる」


 そうして意気込む私に、アリスはローブの内側から何やら棒状のものを取り出した。あー、きっとこれが言ってた棒遊びってやつだとすぐに理解した。


 にしても、ローブは黒を基調に背中に六天魔人(ヴァビリム)の紋章が刻まれているだけなのに、着る人がここまで映えさせてくれるんだな。めちゃくちゃカッコいいや。


 「これを持ってくれ」


 「これが例のやつ?」


 「ああ。魔杖(ディヴァル)と言って、魔力を流し込んで同時に呪文詠唱で魔力を魔法として変換し、具現化させるものだ。これが無ければ魔法は使えないし、攻撃も防げない重要な道具だ。それにこれは魔法でしか破壊不可能だ」


 ただの木の棒に見える魔杖(ディヴァル)と呼ばれる杖の端と端を両手で掴み、ある限りの力で2つに折ろうとする。しかし、言った通り多少曲がってもパキッとまではいかない。


 魔力で身体強化をしても結果は変わらなかった。


 「これは練習用だから1から始める練習にもってこいだが、本当なら己の魔法に合った魔杖(ディヴァル)を使わなければならない。まぁ、それも後でまた教える。今はこれを持ってくれ」


 アリスから手渡しで貰うと、その瞬間に私の手と馴染む感覚が起きる。まるで3本目の手になったかのように思い通りに動かせそうな、そんな普通なら違和感を覚える感覚。


 「まずまずだな。低魔力のサナにもしっかりと馴染む」


 「これが普通なの?」


 「いいや。低魔力に適したのでも普通は拒否拒否拒否の連続だ。しかしサナが特異な存在だからどの魔杖(ディヴァル)にも適応するってだけだ。これも無能力魔法使いの特権だな」


 「へぇー、そうなんだ」


 まだ17の私に特異存在って単語は気持ちのいいものだった。男子なら誰しもそういった気持ちになる時期はあるらしいけど、私は少しばかりそういうのに理解のあるタイプだったから大差なく似た気持ちにはなる。


 「それじゃ、無能力魔法の使い方を教える。普通の魔法には大体10の魔法の種類があるのに対して、無能力魔法には2つしかないと言われている。1つ目が相手の魔力を自由に操る魔力操作(ラ・フィルネ)、2つ目が自分の魔力で自分を守る魔力障壁(ラ・フューラ)だ。どれも低魔力に適した魔法になってるから使えないことはない」


 「それを詠唱するだけでいいの?」


 「そんな簡単じゃないさ。発動には魔力を見つけて流し込む感覚を身につける必要がある。そうすれば感覚に従って魔力を魔杖(ディヴァル)に流し込めるから、まずはそこからだ」


 「そっか。分かった」


 アリス曰く、感覚だけでいいとのこと。魔力を体の中に感じてそれを流し込むことは無駄が多く、非効率的。それに1回1回体で感じていると、無詠唱での魔法の発動が不可能になるらしく、いいことは何もないと言う。


 それを人間族は教え込むらしく、出来た人間を天才。出来ない人間を凡人として優劣をつけては罵っているという。本当にゴミ溜めの種族らしい。


 今頃選別が始まってるのかな。いや、まだ寝てる頃か。


 それから私は己の感覚に神経を張り巡らせ集中した。3本目の手に流し込む感覚でさえも違和感を覚えなかった。魔力の操作は意外と簡単と言っていたが、それはやはり六天魔人(ヴァビリム)だったから。普通の存在である私に高難易度なのはこの後すぐに感じた。

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