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第13話 猛者集結




 「心拍数凄いね」


 「え?それは今からお偉いさんを紹介されるんだから当たり前でしょ」


 「そうかな?」


 肘をついてニヤッと顔を向けるエルミラ。ここでは堂々と足を地面につけており、人間族の領地には意地でもつきたくないという意志が読み取れる。


 なんだかんだ人間族を嫌ってるようだ。


 「まぁ、そんなことより君が無事で良かったよ。2日後なんて、きっと死んでそのまま蘇生も出来なかっただろうし、運が良いね」


 「私も予想外だったから、もしかしたらそうなる運命だったりして」


 「ありえるね」


 いつの間にか敬語で話すことに違和感は消え、久しぶりの友人感覚なのに当然のように会話の出来るこの関係は、きっと相性抜群ということなのだろう。


 気さくに話しかけてすぐ笑うエルミラは私にとっては心の支えであり、余裕を作るための重要な鍵だ。失うわけにはいかないね。


 「おっ、1人目来たみたいだよ」


 何を話そうか、何を聞こうか考えてた時、1人目が来ることを壁を挟んで察知したようで、ウキウキ感を顕に扉が開かれるのを待つエルミラがいた。


 見たところ久しぶりの全員集合なのか、目のキラキラは収まることを知らない。私はその横で姿勢をこの上なく正して待ち続ける。


 そして――


 「よいしょー、俺何番目だ!ん?俺1番目か!」


 ドンッと力強く開けられた扉から入ってくるのは、見た目は完全に好青年と言えるほど清潔感のある容姿で、真っ黒の何色にも染まらない意思表示をしたような髪の毛は後ろでまとめられていた。


 元気な第一声とともにこちらへ歩いてくる男性は角はなく、人間のようだった。


 「おー、久しぶりだな、エルミラ。んで、そっちのめちゃくちゃクールそうな美少女ちゃんが今日の主役ってとこか。よろしくな」


 「は、はい!よ、よろしくお願いします!」


 グイグイコミュ強の男性は私と大差ない年頃の男性に見える。魔人族の平均寿命はどのくらいか知らないが、きっと近い年齢ではないだろう。


 ペースが崩されるな……。


 「相変わらず、君も元気だけは1番なんだから」


 「ははっ、そりゃどーも!」


 魔王であるエルミラにも変わらない態度で接する。この男性はそれほどの関係なのだろうか。そう思うことを知っていたと言わんばかりにエルミラは言う。


 「今から来るのは私と同等の力を持った猛者だけ。だから魔王と言っても関係性は仲間と同じなの。敬語なんて使わないし、上下関係とか存在すらしないから気にしないでいいよ。魔王ってのは種族で1番強い者が立つ地位だから、私がいるってことはそういうこと」


 「なるほど……」


 つまりはここに来るのは全員が魔王。何度か目にしたエルミラの魔法を、違う魔法とはいえ変わらぬ驚きを与えられるほど強力な力を持つなんて、この世界の人間族なんて簡単に凌駕するんじゃないだろうか。


 「おいおい、止めてくれよ。俺らがエルミラと同等?そんなわけ無いだろ。エルミラは俺らより圧倒的に強い。謙遜してるが、俺なんかが足元にも及ばないほどの実力だぞ」


 「ふふっ」


 男性の言う通りらしい。エルミラは否定することもなく、不敵な笑みでそれに応える。これでまた未知数となったが、流石にこの世の均衡が保たれてるだけあり、6人が全員エルミラでは無かったようで安心だ。


 「俺の名前はスタリス・ウェーカー。君は?」


 突然の自己紹介に戸惑いを見せるが、すぐにいつもの自分に戻る。冷や汗も出るほど緊張してる自分が恥ずかしい。


 「真白紗凪です」


 「マシロ・サナ……やっぱり転移者らしい名前だな。ここらへんでは全く聞かない。でもいい名前だ。響きが気に入った。今後はサナと呼ばせてもらうから俺のことも好きなように呼んでくれ」


 「は、はい。分かりました」


 絶対にいい人だ!


 喋り方や話の持ち寄り方、声の質感など何もかもが優しかった。話しやすいお兄さんのような人だ。人間関係に敏感だからそう思うだけかもしれないが、それでもラフな話し方は心地いい。


 私は男性をスタリスと呼ぶことにした。


 そして、そう決めた瞬間再び扉は開かれた。優しく丁寧に開けられると、そこからは魔王と同等の実力を持った者とは思えないほど子供の見た目をした男の子が現れた。


 「失礼しまーす」


 歳相応の幼い声。まだ小学生とも言える体躯をした男の子は微かに赤みがかった髪色に、エルミラと似た角を一本真ん中に生やしている。


 魔人族って角ある人とない人が居るのか。


 「あれ、やっぱり男は準備に時間かからないから早いんですかね。いつもと変わりなくて何よりです」


 「さっきぶりだなシュルク!」


 スタリスたちの仲は良さ気だ。嫌悪感は出さず、男の子も嬉しそうにスタリスと会話を始める。


 「彼はシュルク・ハーパー。今から来る魔人の中で見た目に騙される魔人だよ」


 「そうなんだ」


 ボソっと邪魔にならないように教えてくれる。見た目に騙されるというのに魔人族が未知な私は頷けるが、それ以外は信じ難い。何年生きてるか分からないが、地球で生きてきた私に見た目で納得するのは少し無理がある。


 「残り3人は全員女だから、ここからはちょっと暑苦しさは無くなるかな。個性的だから覚えやすいと思う」


 エルミラの対に座るスタリス。その左隣に座るシュルク。私の左隣は空いたまま、ここに誰が来るのか、それが女性であることに少なからず安心した。

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