第11話 裏切りの時
重力に逆らうことの出来ない私は徐々に地面との距離を縮めていく。叫ばず、ただ本気で殺そうとする人が居るとは、と思いながら人生終了の時間が来るのを待つ。
せっかくエルミラから希望を貰って、2日後に魔人族として生きることを約束したのに、私の方から破るなんてバカな話だ。愚行も甚だしいね。
どうすることも出来ない私は、本能では絶望を理解しているようで、地面まで残り半分の所で意識を失った。まったく、今日だけで2度も意識を失うってついてなかったな……。
下着姿でイジメの果てに自殺したって記録されるんだろうな。
最期に肌に強烈に吹き付ける風にそう思わされて、私は13秒後に体をぐちゃぐちゃにして命を落とした。
――「……起きてー起ーきーてー」
「……はっ!?」
「あっ、起きた」
ガッ!っと目を見開いて体を起こすことなく目を覚ました私。聞こえる声ではなく、自分の現状を理解することに意識を割かれる。目を覚ましたそこには、真っ暗な虚空が存在し、見覚えありありの場所に一瞬で自分が生きていると理解した。
「……えっ、私って……でも何で」
体には下着の上にしっかり制服が着用されている。死ぬ寸前の私ではないように思える。この不思議な感覚は一体……。
「やぁやぁ、12時間ほど前ぶりだね。マシロサキちゃん」
「ん?」
そこでやっと誰かに声を掛けられているのだと気づいた。
そしてやはり感覚通りだ。そこには魔王と言うには似合わないほど可愛げもクールさも兼ね備えたエルミラがいた。角の調子が悪いのか、両手で2本ともに撫でている。角に調子とかあるか知らないけど。
「エ、エルミラさん?何でここに居るんですか?」
「ちょっと、エルミラって呼んで親しい感じで話そうよ。敬語なんて私好きじゃない」
「わ、分かった」
魔王なら誰しも悪を連想するように、私も絶対に怒らせてもいけないし、敬う感じを出さなきゃと思って自然と敬語を使っていた。初対面ですら馴れ馴れしく話してくれたのだから、絶対服従なんてことはしないとは薄々思ってたけど。
「それで、私は死んだんじゃ?」
「うん。間違いなく死んじゃったね。流石にイジメと言ってもそこまででしょ、って思ってたら見に来た瞬間に飛び降りてたから、それはもうびっくりして焦ったよ」
ギリギリセーフのような雰囲気を出しているが、全くそんなことはない。エルミラだって私は死んだと確定して言ったのだ。本当に人生終了らしい。
私って前世で大量殺人鬼か何かだったのかな?はやすぎない?
「でもね、死んだけど君はまだ生きれるんだよね」
「……え?どういうこと?」
「私の力で君を蘇生させるんだよーん!」
死人の前とは思えないテンションで私に再び希望を見せる。いや、エルミラの言うことなんだから希望ではなく、実現させる確約事項と言うべきか。何にせよ、今の私の目は息を吹き返すようにキラキラとしている。
「君の体は完全にぐちゃぐちゃ。だからそれはそのままその場に置いておくとして、君の体は元の体のデータを少し借りて新しく作って顕現させる。そうすれば無事、マシロサキの第二の人生がスタートするってこと」
「……出来るの?」
「私は魔王だよ?出来ないことは何もなーい!はははは!」
確かに、出会って間もないが、エルミラに出来ないことはないと感じ取れる。時間に干渉したり、空間を作れたりするのは誰が考えても異次元の強さを持っていると証明しているようなもの。
現に、疲れる様子の一切ないのだから魔力もバケモノで魔王という名に相応しい力を持っているようだ。
「よし、時間もかからないからすぐにでも生き返って、私が従える魔人族へ仲間になりに行こうか」
「うん」
何故この状況を簡単に飲み込めているのか、それは、後から聞いたがエルミラがそうさせているかららしい。エルミラの魔法は唯一無二であり、世界最強クラスであるという。何という魔法か、今は知らないがいつか聞いてみようとは思った。
「あっ、その服で生き返る?それとも私たち魔人族の猛者たちが着るローブに着替えて生き返る?どっちでもいいけど」
ゲーム開始の設定のようなことを聞かれるが、制服は正直残しておきたい。が、人間族としての名残を残すのも嫌だ。なら……。
「制服って後で出せる?」
「まぁ一応はね。この空間は私のものだからこの空間に制服だけ残せば出来るよ」
「そう……なら制服脱ぐからローブで生き返るよ」
「了解!」
今度は自分から制服を脱ぐことになるとは。でもこれも全てはやり返し、復讐というやつのためだ。制服にいい思い出なんて何もないが、学生という思い出は残しておきたい。
そして再び下着姿になり、私はその場に直立する。お腹を触っては、少し痩せたかな?なんて思ったり。
「それじゃいくよーん」
転移の際の魔法陣のような禍々しい円形が私の足元に展開する。古代文字のような意味不明のマークに、魔人族らしい黒。どれもが私の気持ちを昂ぶらせてくれる。
「蘇生せよ」
エルミラが魔法を詠唱すると、その瞬間目の前に眩い光がピカッと広がる。咄嗟に腕で目を覆うが、それでも眩しさは変わらない。そんな中で生き返る前の最後のエルミラからの助言を耳にした。
「君はこの時点で人間族を裏切ったことになる。本当なら人間族として転移転生したのなら、死ぬまでその種族に属さないといけないけど、今回は特別だから。何も気にしないで存分に魔人族を楽しんでねー!」
私はその言葉にニヤッとして返す時間もなく生まれ変わった。
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