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第10話 人間族としての果て




 それからどれだけの時間が経過したのか、私には曖昧にすら把握出来なかった。だって目を覚ました時には時計に目を向ける暇もなく、目の前に居るイカれた集団に意識を割かれたから。


 変わらずゲスな笑みを浮かべては異世界に来たことを笑い合っている。意識が覚醒した瞬間に気取られた私は、起きてないふりすらも出来ずにいた。


 「それで、これはどういうこと?」


 私はこいつらの会話を遮ってでも、状況確認をしたすぎて何されてもいい覚悟で聞いた。今自分で理解しているのは、何故か下着姿にされていることだけ。転移してきた時から制服を着用し、この部屋に足を踏み入れても着用していた。


 十中八九気絶中に脱がされたのだろうが、その制服は見る限りどこにも無い。テンプレってやつかな。


 「どういうこと?それはお前が1番分かってるだろ。お前は奴隷でありながら、主人に無礼を働いたんだ。だからそうなってるんだよ」


 1番分かるわけない。奴隷で納得してるのはこいつらだけ。私は決して奴隷とも思ってないし、こいつらより下の存在でもない。


 「下着姿にする意味は何?水樹の趣味?それともこうすることで快感を味わえたりするマゾなの?」


 「なぁ、そろそろ口の聞き方に気をつけないと、本当に怪我するぞ?」


 「もう顔も腕も傷だらけなんだけど。怪我ならもうしてるし」


 殴られた頬だけでなく、体全体がズキズキとした重い痛みが残っている。きっと意識を失う私にも多少暴力を働いたのだろう。二の腕やふくらはぎに残るアザがそう言っている。


 にしても、下着姿にされると改めて腹部や胸元の傷は一生消えないんだなと思わせられる。どちらも腕や足で作られたものではなく、ナイフやカッターなどの刃物で作られたもの。目に見えないとこはとことん痛めつけられた。


 「なら、怪我で済むように弁えた方が良いぞ。死ぬよりイジメられる方がマシだろ」


 「……どうだろうね」


 最悪死を選ぶ手段も無きにしもあらず。私はまだ希望があるから全くそんなことは考えてすらもなかったけど、現実ならこれほどの物理的精神的ダメージを過度に負うなら、死を考える人は少なくとも存在する。


 自己満でするイジメほど愚かなことはない。


 「私が主人に従わなかったから下着姿なのは分かった。でも下着姿にして何をしたいかは聞いてないんだけど」


 恐れることを知らない私はドンドン自分中心に話しを進めていく。誰が誰と話してようと、私にはどうでもいい。強いて言うなら舌噛んでくれれば良いなと思う程度。


 「そんなに下着姿の自分が気になるの?」


 「気にさせるために下着姿にしたんでしょ?気になる私が変だって言い方やめてよ」


 「はぁ?今日のあんたホントにムカつく!」


 芽郁は再び怒りを顕にし始める。芽郁は重い一撃を食らわせることはせず、じっくりと時間をかけて追い込む手法なので、自分の瞬間的な怒りにもしっかり対応出来る。


 もっと別のことに長所として使えればいいのに。


 「もういい。やっぱり、あんたは奴隷じゃなくて死んだほうが良いでしょ。元々殺される運命を私の優しさで助けたもんだし」


 自分の言ったことに責任を持たないタイプの芽郁らしい判断。誰の意見も聞かず、ただ自分の感情で良し悪しを決め、最終的には気に食わないから役目を放棄する。まさに女王様だ。5人のど真ん中に座ってるのも関係してるだろう。


 「殺すの?」


 どうせ出来ないだろう。そう思う私には恐怖感はない。人殺しを容易く出来る人はそうそういないし、何よりもその度胸も精神力も持ち合わせてないのだから去勢以外の何物でもない。


 「いいや、殺さないよ。死んでもらうんだから、自分で」


 「……そういうことね」


 つまりは自殺しろってこと。この場でどうやって自殺出来るのか、私には理解し難いが、1つ簡単な方法があることをこの場にいる誰もが知っていた。


 「ここってお城の中でも高いとこに位置する部屋じゃん。ならそこのベランダ使えば楽に逝けるよ」


 満面のゲス笑みで早くしろと催促をされる。にしても私も死ぬ気はないし、芽郁もホントに飛び降りるとは思ってないはず。ならこの場は飛び降りるふりをするのが正解だろう。怖さはあるが、足を滑らせなければ問題ない。


 「分かった」


 全く臆する様子を見せず堂々と私はベランダに向かう。芽郁をこういうことで信じるのはムカつくが、止めたときの言い訳を聞けるのなら構わない。


 気絶中に夜になった外はとても寒い。下着で覆われる部分ですら冷風にあてられる。なるべく早く終わらせたい一心で私はベランダへ到着した。


 振り向かずとも後ろには5人全員が見守ってるのが分かる。


 ベランダの手すりに足を載せる。強風ではないので押されて落ちることも心配ない。私は一切の躊躇いもなく体を動かした。本当に死ぬ気なんだと思わせるために。


 完全にあとは落ちるだけになると。止められる前に1言言ってやろうと、ゆっくり後ろを向きながら口を開く。


 「私が死ん――」


 ドンッ!


 気を失う時よりも後ろを向けてない状態で私の言葉は無理矢理止められた。何故かって?まさか――ホントに押すやつが居るとは思わなかったよ。そう、私の背中を力強く殺意を持って押したやつが居たのだ。


 「え?」


 まさか本気で殺そうとした人が居るとは思わず、計画が台無しになると同時に死ぬことが頭の中を過る。残りの4人は慌てた様子だったのがスローモーションとなり、私の目に映った。


 相当気に食わなかったのだろう。落ちながら最後に見たのは、七瀬のザマァみろという満足気の表情だった。

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