24Days until Christmas!
ハロウィンが終わると、街中クリスマス一色に様変わりする。この季節は、みんなが幸せの準備に追われるような気がするのは私だけだろうか?
そんな私と言えば、ここ数年はクリスマスなんて他人ごと。それは今年も変わらず仕事に明け暮れる年末年始の予定…。
「メリークリスマース! あと4週でクリスマスがやって来ますよー。というわけで、じゃーん!」
朝から騒々しいのは、後輩の小暮海斗。手には何やら数字の書いてある山盛りの紙袋が…。
「海斗さん! もしかしてそれって、アドベントカレンダーですか?」
すかさず小暮の同期、林麻里亜が会話に飛び込んできた。はたから見ても、この女子力高めの世渡り上手は小暮を狙っているのが見え見えだった。
「今日は12月1日なので、これを皆さんに!」
そう言って、小暮は「1」と書いてある紙袋を開けると中に入っていたクッキーを配っていく。すかさず林麻里亜は手伝いを申し出て、2人で共同作業を始める。
「はい、田宮さんもどうぞー!」
手際よく林麻里亜が私のデスクにも例のクッキーを持ってきた。お礼を言って、もらったクッキーを引き出しにしまった。
みんながクリスマスで人盛り上がりすると、始業の時間になり各自仕事を始めた。仕事も人間関係もそつなくこなす小暮が秋からうちに移動してきて仕事場は明るくなったように感じる。
「これ田宮さんに」
そう言って通りすがりに小暮が私のデスクに可愛らしいサンタのアイシングクッキーを置いた。
「あ、私もうもらって…」
小暮はみんなにバレないように人差し指を口に当て、口パクで「と、く、べ、つ」と言って、自分のデスクに戻って行った。
職場で何言ってんだか(笑)こうゆうノリが女子社員に人気の理由の一つなんだと思う。しかし、私は先日30歳になり年下イケメンだのアイドルだのにうつつを抜かしている余裕は1ミリたりともないのである。
それにしても可愛いサンタ。透明の袋に赤とゴールドのリボンがかけてある。何か紙が落ちた…拾って中を見てみると。
「僕と結婚して下さい」
ガタタ!! 立ち上がった瞬間に思いっきり頭をデスクにぶつけて、立ち上がれなくなった。
「だ、大丈夫ですか!? 田宮さん!」
向かいのデスクから鈴木さんが驚いて声をかけてきた。他の人も何ごとかと私の方へ目を向けている。まだ痛む後頭部を押さえながら立ち上がり平静を装う。
「す、すみません…大丈夫です」
いやいや、後頭部も心も全然! 大丈夫じゃないですけど! 元はと言えば、小暮海斗のせいだし! 小暮のデスクに目をやると、お腹を抱えて涙目で笑をこらえている最中だった。後で覚えておけー!!
就業時刻をゆうにこえオフィスには私1人だけだった。あれからいつもはしない凡ミスばかりで今に至る。久々に終電かなー。
「はぁ!」
誰もいないオフィスで盛大にため息をついた。
「幸せが逃げますよ」
後ろから声をかけられ振り向くと、早々に退社したはずの小暮の姿があった。私の横に椅子を持ってくると、距離を詰めてきた。私を挟み込むように隣に座ると、私が逃げられないように椅子に手をかける。
「少しは意識してくれました?」
「ち、近いんですけど!」
知らないふりをして私はPCに向き直る。キーボードを打つ手に小暮の手が重なる。咄嗟に手を払おうとしたが、見事にホールドされてしまった。
「わ、私のことからかって何が楽しいわけ? 小暮くんみたいに遊んでる暇ないから!」
キッと睨みつけると、小暮は柔らかい笑顔で私を見つめる。
「これくらいしたら意識してくれますか?」
小暮は私をデスクに押し倒すと唇を塞いだ。抵抗も虚しくキスは激しくなるばかり。次の瞬間、シャツの下に小暮の指が這うのを感じた。
私は思いっきり小暮を突き飛ばすと、荷物を掴んでオフィスを飛び出した。