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2 愛弟子との再会(2)

『なんだあの乗り物は?』


魔法師が昔の魔女のように何かにまたがって飛ぶなら理解できるものの、飛んでくる男の服装は魔法師のものではなく、また乗っている物もセラフィーは見たことがない物だった。


男は猛スピードでセラフィーの前まで飛んでくると、セラフィーに手錠をかけ無理やり口の中にタオルを突っ込んだ。


「フッ…!ファニフォ…!!(何をする!)」


セラフィーは突然の出来事に抵抗できず、されるがまま男の肩に担ぎこまれてしまった。


「おーい!こっちだ!っておいこら!暴れるな!」


セラフィーは必死に足をバタつかせるものの、抵抗虚しく男と後からやってきた仲間によって拘束されてしまった。


「こいつ、東の森から出てきやがった」


セラフィーを担いだ男はチッと舌打ちをすると、再び何かに乗り込みふわっと宙に浮かぶと仲間と猛スピードで移動しはじめた。


「確か東の森に侵入するのは重罪扱いになるんだよな!?」


「ああ!まぁ侵入者はこれが初めてだが……っていうかそいつ…もしかして精霊師じゃないか!?」


「!?!?」


セラフィーを担いだ男は急ブレーキをかけ


「本当だ…虫だと思ってたんだが…精霊だったか」


「ファ!フフヘーファ!!(おい!失礼だぞ!)」


セラフィーの事を完全に無視したまま男は驚きの声を漏らした。


「精霊師ってことは一旦、魔法省行きか」


この国では魔法師に加え、精霊師と呼ばれる人達がいる。


精霊師も魔法師同じく誰しもがなれるものではなく、精霊に愛された存在でなければ精霊師になる事ができなかった。


そして精霊師は精霊を呼んで力を借りる事ができるが代わりに魔力を渡さなければならないので、膨大な魔力量を持つセラフィーのように常に精霊が側にいるというのは不可能に近かった。


「恐らく下級精霊だろうが…決まりは決まりだからな。行くぞ」


男たちは行き先を変更すると、再び目的地に向かって飛びはじめた。



◇◇◇



「魔族の密偵容疑がかかった精霊師だと〜〜!?」


魔法省の一室、そして目の前で頭を抱えながら大騒ぎをする男は、魔法省大臣のガンダス・ヴォルドロー公爵だ。


『大臣は確かケイガスだったはずだが….』


大臣や副大臣といった重要な役職は、公爵のような爵位が高い貴族が代々受け継いでいる。


平民でも魔法師になると男爵の地位が与えられ、セラフィーも功績を認められ侯爵となったがやはり生まれ育った環境が大きく異なる平民と貴族の間には大きな壁があった。


そんな中でも魔法省大臣のケイガス・ヴォルドロー公爵は平民出身の魔法師にも分け隔てなく接することから信頼も厚かった。


セラフィーも貴族は苦手だったが、ケイガスとは気が合い数少ない友人のような仲でもあった。


『しかし今目の前で騒いでいる、腹の肉で制服がはち切れそうな男はどう見てもケイガスとは異なる…』


理解できず痺れを切らしたセラフィーが「んー!んー!」と口の中のタオルを取るよう要求すると、ガンダスは近くにいた部下にタオルを取るよう指示を出した。


「プハッ…失礼だが魔法省大臣はケイガスだったはずだが。貴殿が大臣を名乗る理由をお聞かせ願おうか」


歳若い少女から発せられたとはとても思えない、熟年の男性騎士のような口調にその場にいた全員がポカンと口を開けた。


「おい、聞いているのか」


セラフィーが眉間にシワを寄せ睨みつけると、我に戻ったガンダスはパチパチと瞬きをし


「ケ…ケイガスは10年前に亡くなった私の父だが。そ、それがどうしたというのだ!」


と負けじと言い返した。


「…死んだ?10年前に死んだだと……?」


セラフィーは目を見開きクルッと後ろを振り返ると


「おい、今は帝国暦何年だ」


と後方に控えていた職員に問いかけた。


「は、はい!今は帝国暦350年でございます!」


セラフィーが魔法師として、そしてレオと暮らしていた年は帝国暦330年。


つまり


「あれから20年も経ってしまったというのか…」


セラフィーは誰も聞こえないような小声で呟いた。

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